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幸せ

だあれもいなくて、あるのはあたり一面の桜だけ。

まっぴんくに染まった景色にただただ感動している。

小雨の桜並木。
時折、風が 花びらを振り落とす。

その美しいことといったら。

この世のものではないくらいの儚さである。

白とピンクの嵐にくらくらするほどの甘い香り。

雨に濡れた足はだんだん冷えてきたが、そんなことはどうでもよくて、

可憐でひたすらに美しい桜の木々に溜め息がでる。

生きていてよかった。
この季節、この景色をみるたびにそう想う。

感謝しかない。
桜を今年も観られて幸せだ。

大切な友にもみせてあげたかったなあ。

この桜は明日には散るだろう。

来年は一緒に観られるといいな。

大切なひとにみせたい景色があるのは幸せなことだ。

大切なひととみたい景色があるのは、とびきりしあわせなこと。

雨の日の誰もいない公園の桜並木の幽玄なことといったら、まるで異世界のみてはいけない景色を観てしまったかのような畏れを感じるくらいだ。

この美しい景色をたったひとりで堪能した私は、なにか罪を犯してしまったかのような怖れを感じてしまう位に感動しおののいている。

桜の美しさとは善意であり、罪である。

人知れずみることのできる桜並木に、ひとりでくるたびに、身を震わせる感動を味わいながら、毎年おなじことを想うのだ。

桜は散るから美しいのだ。

ならば、私もいつかは潔く散り果てよう。

その時が来たら、迷いなく、いま友がいるあちらの世界に行こう。

あちらで友とこの美しい景色を見よう。

友はきっと待っていてくれる。

あちらにも美しい景色はあるだろうから。

じゅね。

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