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神様の暇つぶし

衝撃だった。ひとのこころの内側をこうまでも赤裸々に残酷なまでにさらけ出すなんて。
何度も唾を飲み込んだ。

場面のひとつひとつが鮮やか過ぎて、激しくて目の前で見ているようなリアルさ。

飲み込まれてしまうように読みふけった。

物語の展開もさながら、濡れ場の細やかな書き込み。

度肝を抜いた!

焔のような恋だと思った。

男の望んでしまったからこその逃亡。

女の男への渇望。

ひとなつの熱い思い出がたったの一週間だ。
女の描写、一瞬の命のすざましさ。 愛を越えたものがそこらを満たしていた。

茜氏は計り知れない。

血なまぐさく、脂ぎって生臭い。
汗とそのたの体液で汚れきった欲望。

反対に日常の食べ物の描写の丁寧で美しいことといったら。

艶やかに光るこめ粒から始まって、野菜の切るおと。

和食の細やかな作り方。
湯気のたつ玉ねぎの味噌汁。豆ざらのお浸しなど。

好きだった優しいひとはもう亡くしたけれど、好きだったひとの好きな食べ物が 丁寧に書かれていたり。

いつも思うけど茜氏は本当に食べ物を愛しているんだなって。

自分でつくる場面もお店で食べる場面も彼女がかく食べ物は本当に美味しそうで喉がごくりとなる。

美味しいものも美しいものも汚いものまでも、細やかに丁寧にひきたつように、奥底まで珠玉の言葉たちを操りかきつむいでゆく。

どれだけのエネルギーがいることか。

一行書くのにきっとあめ玉一袋ではすまないかも知れない。

いちぺ~えじ書き上げるのにチョコレート数枚と紅茶数杯ではすまないだろう。

一冊書き上げるためにホ~ルケ~キとお握りが幾ついることか!

これほどまでに熱量の高い作品を読み返すとしたら、1年ぐらい間を空けないと私の体力がもたない。 (・・;)

一冊が10冊分だ!

図書館での里見とのシ~ン、好きだ。 嵐のばんの柏木宅でのシ~ン はすごすぎてここには書けない。

ひたすらに愛した彼女の好きだったひとたちはみな。。。 ~未読の方のために~

はじめと最後。 うんと傷付いて彼女は大人になった。

自分に向き合えてよかったと安心した。

気がついたら手のひらの汗が、ラストシ~ンではさらっと乾いていた。
もう、本当に抗えない位、
ぐいぐいと強烈な物語にひっぱりこまれてしまったのだ。

ガツンと強く頭を叩かれた衝撃があった。

~神様の暇つぶし~

作者が何故このタイトルにしたのか、あとからじんわり理解できた。
もうひとつ、他の作品もそうだが、音がよく響く。

音をリアルに本当に聞こえているように書かれている。

巧みすぎる。

私はすっかり騙されてしまっていた。

本の中にずっぽりと溶け込み、あわあわととろけた文字の中を溺れながら泳いでいたのだ。
現実か妄想か。
いったん本の海に溺れてずぶずぶと溺れてしまったら、なかなか這い上がれない。

今も頭がキーンとして溺れたままいるのかも知れないと思っている。

神様の暇つぶしを千早茜氏は まじまじと見せ付けてくれたのだ。

m(__)m

じゅね

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