星飼い-04

星使いの話

「明日の天気はどうなるの?」
「たぶん雨じゃないかな?」
「そうか。あ、その星はそっちで」

素っ気なく頷いたあいまは、王冠のモチーフをした空のランタンを手に、自分の飼っている星"秋の星"に指示を出した。あてもなく旅をする二人は毎日違う場所でありながら、同じ空に星空を作る。毎日の習慣、いつもと同じ。ふと秋の星が尋ねた。

「あいまってさ」
「ん?」
「なんでいつも天気のことを聞くの?」
「なんでって?」
「もう、質問に質問しないでよね。あいまは僕の星の力知ってるでしょ?」
「ああ、人の未来が"少し"見える、だね」
「少しを強調しないでほしいな」
「ふふ。ごめんごめん。で、なんで天気の事を聞くの、だっけ?」
「そうそう、なんでさ? 僕、専門外だよ。明日のあいまの事見たほうがよくないの?」
「んー、そうでもないさ」
「え?」
「秋の星と話すなら"確定した少し先の未来"より、"曖昧な明日"の話の方が楽しいよ」
「楽しい?」
「うん。あ、明日雨が降らなかったら、星の数増やすからね」
「えーー、いつも多いのに」

不貞腐れた声を上げる秋の星に、あいまはまたひとつ笑う。

「それにさ、秋の星。君は勝手に"観る"じゃないか」
「あいまがそんなだからさ。ふらふら旅なんか、本当は危ないのに」
「心配性だなぁ。僕達が僕達であり続ければ、案外なんとかなるもんさ」
「そんなものなの?」
「そんなものだよ。さて、星空を仕上げるよ」
「はぁい」

両の手を器のように広げたあいまの手に、秋の星が降り立つ。二人は目を瞑り、綺麗な星空の誕生を願う。星言葉は"装飾された魅力"。
唱えて、目を開けると、あいまの両の手に立つ秋の星が煌めいていた。色味のないあいまの錫色の瞳に色が入るのはこの時だけ。その煌めきが秋の星から離れて空へ向かうと、暁に染まっていた空があいま達の星空に塗り変わっていく。

「完成したね」
「うん、今日もキレイだ。さすがだね、秋の星」
「まぁね」

秋の星は誇らしげに言った。そして言葉を続ける。

「あ、あいま。明日は新しい街に着きそうだよ」
「そうか、それはよかった」

あいまは星空を眺めながら微笑んだ。

end

Twitter診断 #星飼いの街  の診断結果にて作成してみました。
https://shindanmaker.com/817224

星使いは、星を操り星空を作る人とのこと。
今回は世界に星飼いの街が点在していて、その街街へ旅をする設定で書きました。
操る星と仲良くしている少し変わり者な主人公をイメージしました。
星読みと仲がいいとか設定が比較的細かいのですぐ書けるのが素敵ですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?