星飼い-04

星使いと星読みの話

旅の途中。あいまと秋の星は、星飼いの街の不思議な店を訪れていた。

「いらっしゃい。あら、こんにちは。変わり者の星使い」

鳥をモチーフにしたランタンから声が聞こえる。あいまはランタンにいる星に微笑んだ。

「こんにちは。冬の星」
「あいも変わらず、失礼ないいようだね」
「あら、変わり者の秋の星もいるのね」
「いるさ。僕はあいまの星だから」

あいまの肩に立つ秋の星がフンッとそっぽを向いた。店の奥から人影が覗く。

「冬の星。なんだか機嫌が良さそうだけど、だれか来たの?」

そこにいたのは、1人の女性。彼女はあいまの存在を認めると、冬の星の気持ちを理解した。

「なんだ、星使いか」
「なんだとはひどいな、星読み」
「来るなんて思ってなかったからね」
「まぁ、そうだね。僕も秋の星に言われなかったら、来なかったかも」
「でしょうね。お茶でも飲む?」
「いただこうかな」

星読みは店の看板を"close"に変えると、冬の星がいるランタンを手に奥の部屋に向かう。あいまはそれについて歩いた。ドアをくぐった奥の部屋は、陽が優しく入り柔らかな印象を与える。部屋の中央にある丸いテーブルには卵型の水晶。あいまは尋ねた。

「商売はうまくいっているのかい?」
「ほどほどにね」
「へぇ。みんな、未来を知りたいんだね」
「あなたが興味なさすぎるのよ」

あいまをテーブルに招き、紅茶を出した星読みがため息まじりに言う。そして向かいの席に座ると、彼女は卵型の水晶を撫でた。

「あなたの秋の星。星読み向きの力なのにもったいないわ」
「仕方ないさ、僕は星使い。それに君みたいに星の心は読むことはできないしね」
「はぁ…そうでなくとも有益な使い方ってのがあるでしょ。ねぇ、秋の星。こんな甲斐性なしじゃなくて、うちに来る気はない? 冬の星もその方が嬉しいでしょうし」

星読みは、己の星がいるランタンを目の端に捉えながら秋の星に声をかける。ランタンの中にいる冬の星はかすかに明るくなった。

「その発言、理解に苦しむわ。ルージュ」
「ふふ、照れちゃって」
「僕は、あいまの星なの! 甲斐性なしでも、あいまを一人になんかできないよ」

あいまの肩にいた星が机に降りると春の星のようにかすかに明るくなった。星読みは、そんな秋の星をまじまじと見て驚いた声を上げる。

「あらあら。とても好かれているわね、星使い」
「どーも」
「あ! 僕の心読まないでよね」
「あら、ごめんなさい。職業病みたいなものだから。でも読まなくてもわかるわ。だって、外に出していても逃げない星なんて珍しいもの。星使い、あなた秋の星が逃げたらどうするの?」

紅茶に口をつけていたあいまに星読みは尋ねる。
この星飼いの街では、星をそれぞれのモチーフのランタンの中で飼うのは当たり前のこと。また飼われる星もランタンの外へえてして出ようなんて思想はない。
なのに星読みの目の前にいる星使いは、空のランタンを提げ、肩に自分の星を乗せている。星使いと彼女の星が、星読みの冬の星に"変わり者"と呼ばれるのはその所以だ。
少しの思考の後、あいまは口を開く。

「んー、秋の星が僕から離れたいのなら仕方ないかな」
「離れないよ! 何度も言わせないでくれないかなー。もー」
「だそうだよ」
「まぁ、予知できることよね。もし秋の星がいなくなったらあなたダメになりそうだし」
「そうだね。秋の星がいないと僕は何もできないから」
「ほんとだよ、僕がいないとあいまは何もできないんだ」
「だそうだよ」

そういうとあいまはまた一口紅茶を口に運ぶ。秋の星はまたあいまの肩に立った。
星読みはそのいつもと変わらぬ友人の姿に自然に頬を緩ませた。そんな彼女に彼女の星が釘をさす。

「ルージュ、あきらめてくださいね」
「あら、心を読まれたかしら。まぁ、仕方ないわね」

そういうと星読みは、少し熱の取れた紅茶を口にする。そしてお菓子に手を伸ばしているあいまに尋ねた。

「あなた達、次はどこに行くの?」
「そうだね。南にでもいこうかな」
「なら、少し観てあげるわ」
「おや、珍しい」
「面白いものが見れたから、興が乗ったの」
「でも、何を差し出せばいいのかな? 僕は渡せるものがあまりないから」
「そうね…。じゃあ時間をもらうわ。今日はうちに泊まって話し相手になってもらう」
「わー大変そう」
「あなたも女の子なのだから。たまには、きちんとお風呂に入って布団で寝ないと。いいわね」

星読みは有無を言わさな物言いで、あいまを頷かせるのだった。

end


Twitter診断 #星飼いの街  の診断結果にて作成してみました。
https://shindanmaker.com/817224

星読みさんは色んな名前で診断した結果、導き出しました。これが一番時間かかったかも。


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