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火葬のお話

8月5日、ついに火葬の日がやってきた。
3日に亡くなって行きつけの動物病院から教えて貰った深大寺動物霊園さん。その日の夕方には立ち合いにしよう等色々決めて電話してみたところ、4日は送迎無しであれば可能との事。
5日はまだ夫の仕事があるかどうか確定出来なかったものの、火葬の後に仕事もつらいだろうし動物病院から2日は一緒にいた方が気持ちの整理にも良いと聞いていたし、飼い主も心身共に弱っているので送迎の出来る5日にお願いした。
(ふと、祖父が亡くなった時に父が葬儀屋さんに霊柩車運転したいと言ってちょっと怒られてたのを思い出した)

お耳がピンクになったのと関係があるのか、朝になったらほんの少し鼻血が出てしまっていたので改めてお顔をきれいにして、タオルも新しく敷いて、保冷剤も全部タオルと共に取り替えて気持ちよくした。

霊園さんから燃やす時のバスタオルとあれば写真と、一緒に送ってあげたいものを準備と聞いたのでまずは写真。夫と2人でそれぞれのお気に入りを出し、飾る用1枚と送る用3枚を決めた。夫とわたしと蓮マンと小十郎が入るようにした。裏には感謝の言葉を書いた。

一緒に送ってあげたいのはまずはちゅーる焼き鰹。多分一番の大好物で、12日の誕生日にあげようと買ってあった。
そして麩菓子の中身。基本的に人間の食べ物に興味なかったのに、我々が麩菓子を食べていたら手を出してくるほど欲しがった。他のものにそんな事はなかった。その時中身をちぎって少しあげたらガツガツ食べたので多分すっごく好き。しかしハイカロリーなのでその日以降我が家で麩菓子を食べる事はなかった。
あとはおやつによく食べていたモンプチのカリカリと、少しだけ華やかにしたくて夏生まれのニッケルくんに似合うと準備した一輪のひまわり。
食べ物は少しずつなので紙のかわいい封筒に。焼き鰹は霊園さんで紙皿を用意してくれていたのでそこにいつものように細かくちぎってあげられた。

お花や棺も色々準備出来るらしいのだけど…お花は肉食動物の猫にとって猛毒なものもあるし、人間の自己満だよなぁ、と思ったり(それが悪い事ではないと思う)猫飼いならご理解頂けると思うんだけど、猫って張り切って買ったベッドやハウスはそっちのけでそれが入ってたダンボールに夢中になる生き物。
なので棺も特にお願いせずギリギリまでダンボールに寝て貰い、バスタオルの代わりに夫やわたしが共有で部屋着として着ていたビッグサイズTシャツを用意した。

予定時間の数分前に送迎車到着の連絡。我が家は宅配の人達が結構迷う住所なのに部屋に近い裏口の方まで来てくれていた。…プロ…。

ニッケルくんを連れて外に出てみたら、ニッケルくんの目の色をした薄い水色の空。

ニッケルくんを膝の上にのせても行けますよ、との事だったけどあまりにもダンボールが大きくすごく不安定になりそうだったので後のスペースにのせてもらった。ちゃんときれいに霊柩車のミニチュアみたいにされてるスペースで安心してのせてもらえた。

運転も会話もプロで、心地の良い移動時間。和やかに霊園へ到着。運転手の方はわたしたちより少し上の男性で、火葬場には若い女性が待機してくれていた。女性もきれいな日本語で丁寧に、それでいてテンポも良く我々がやる事を教えてくれた。ちなみにニッケルくんが大きくて重たいのもあるかもしれないが、一切ダンボールの中で乱れはなかった。

まずは綺麗な白い台に持参したTシャツを敷く。背中に「指折れてます」と書いてあるけどサイズが完璧ジャストだし、夫とわたしの匂いが結構ついてるはずだから勘弁してね。

そこにダンボールからニッケルくんを移動する。2人でやると変な角度になったりして痛めるのもイヤだったからここは夫に最期の抱っこをして貰った。この時少し鼻水?が出てかわいかった。
あげたいものや写真の配置を手伝って貰いつつ、すっかりかわいい寝床に。
担当の女性もお腹がかわいいですね、とニッケルくんの魅力的ラインを褒めてくれた。筋肉質で他の猫にはない楕円ライン。

ここでお別れの時間を貰えた。20〜30分くらいだろうか。夫とニッケルと3人で最後の時間。多分今が一番つらくて悲しいだろうと思ってた。

でも夫もわたしも、泣きながら寂しい悲しいよりも、涙は我慢出来なかったけどありがとうを言って過ごした。せっかく敷いたのがTシャツなので袖を折ってニッケルくんにかけたら抱っこしてるみたいになってよりかわいかった。
ニッケルくんがどれだけかわいい猫だったかはゆっくりたっぷり書いていきたいけど、これを書きながらまた号泣してしまった。まだ時間はかかりそうだ。

程よい時間で女性から声がかかり、ついにフワフワとはお別れ。どちらかが一緒の写真はたくさんあるけど、3人一緒の写真は殆どないのでみんなでカメラを向いてる写真が欲しくて撮影をお願いした。これはお願いして本当に良かったと思う。人間達は泣き腫らした顔をしてるけど愛に溢れていて(自分で言える程)、何度も言うけどニッケルくんはただ寝ているようなきれいさで、ひまわりや持って行った写真も含めてかわいいに溢れていた。

火葬炉の前ではもう殆ど声にならないけれど、良かったらまたうちに来て欲しいと何回も伝えた。普段無宗教なのに都合が良いかもしれないけど、我が家がそう悪くないと思って貰えたなら、我々にとってニッケルくんは特別な猫だからどうかどうかお願いしたい。

炉台にニッケルくんを移動してくれたのは運転してくれた男性と色々説明してくれた女性だったのだけど、のせかえた時に抱っこ型にのせていたTシャツの袖が少し崩れたのをちゃんと抱っこ型に戻してくれた事に改めて感動した。

火葬炉の扉が閉まる瞬間は何度だって慣れる事はないだろう。

火葬が終わる予定の時間を聞き、待合室で書類とお会計。とてもスムーズ。深大寺動物霊園さんは植物園や深大寺の敷地と隣り合わせなので土曜だったのもありとても活気があった。わたしが以前遊びに来た鬼太郎茶屋もある。
担当男性が気を利かせてお蕎麦屋さんやお土産屋さんを教えてくれたけど、情け無い事に寝てない食べてないのフラフラだったので余分に歩かず、喫煙所で夫と話しながら時間を過ごした。

時間もぴったりに火葬が終わったと呼びに来てくれた。まずは炉台そのままで女性からお骨の説明。経験上この時に、より呆然としてしまう方と軽くなったようになる方といるように思うのだが、わたしは後者。火葬の経験はニッケルくんが初になってしまった夫も後者だったようだ。

サウナのような熱気の中、大まかなお骨の説明をうけ、ニッケルくんは骨になってもかわいいなぁと思った。

隣のスペースで座って待つように言われた。炉は見える位置だけど少し涼しい。ニッケルくんのお骨をちゃんと拾ってトレイに並べ替えて、更に細かく説明してくれるそうだ。大きさはそこまでじゃないとは言え、骨の数は人間より更に多いのに。
お箸でひとつひとつ、すごく丁寧に作業をしてくれている。あの出てきたての炉の側で。何とありがたい仕事なのだろう。

そしてトレイふたつに、きれいに並べて貰ったニッケルくんのお骨がやってきた。
頭蓋骨や喉仏のトレイと、少し大きめのトレイに全身がほぼそのまま。

やはりニッケルくん大きすぎて、本来首から背骨は全部並べられるはずが出来なかったようで…「中型犬の大きさです」と言われた。
素人目に見ても色々大きい。「すごく足も長いです」と紹介された大腿骨なんかは夫と「でっか!」と驚いてしまい、つられて女性も「本当にでか…、大きいです!」と言い直しててそれが何だか嬉しかった。

足の骨は一本分、指先まで並べてくれたんだけど、これがまた大きくて女性もしみじみ大きいと言っていた。人間にしたら馬場みたいになりそうだった。

そしてニッケルくん最大の特徴ピギーテイル。ぱっと見ボブテイルのようだけど、実は普通の長さの尻尾が3周くらい渦巻いているのだ。
稀にいるようだけどGoogleでピギーテイルを検索すると割と上の方にニッケルくんのインスタが出てくる。
お骨になってわかったのは、ピギーテイルでも更に尻尾の先の骨に関節がなく、細長い骨が渦巻いていた。とてもかわいい骨だった。恐らく毎日のように猫の骨を見ているであろう女性も、とても珍しいと驚いていた。

変な言い方だけど和やかで楽しく愛しい時間。説明を受けていよいよ夫とかわるがわる壺に骨を納めていく。ここでも、猫用の骨壷にニッケルくんのサイズはかなりギリギリなので、少しつめて入れてくださいと言われて夫とあーでもないこーでもないとパズルのようにきれいに入れた。

無事ギリギリ納まって、箱に入れて貰いきれいなカバーをかけてもらう。随分小さくなってしまったけど、フワフワはなくなってしまったけど、これからのニッケルくんだ。

ここからは霊園に納骨なども出来るのだが、すぐにお別れする気にはなれず持ち帰る事にした。納骨するとしても深大寺動物霊園さんの環境はすごく良い。自然が美しく、水木しげるさん縁の地でもあり、人間の活気以外に少しイタズラな気配もする。
我々夫婦がもっと年を取った時、そうでなくてもどちらか片方になった時は猫たちの永代供養をお願いしたいなと思う。

骨壷を頂き、帰りの車では夫と交代で膝の上に抱いて帰宅した。運転手の男性は我々が家に入るまで車の外で見送ってくれた。

そして骨壷と部屋に帰った瞬間に、noteを書くきっかけになった絶望的な寂しさと相対する。

救いようのない寂しさを感じていると、小十郎がやたら何もないところを目で追うようになり、そのうちニッケルくんがたまに寛ぎポイントにしていた床の隣に座った。小十郎が普段そこに座る事は知っている限りでは無かった。

一緒に帰ってきて、まだいてくれるのかもしれない。身体からの解放をニッケルくんなりに楽しんでいるのかもしれない。生きてる間に不自由もなかったけど、漫画的表現で言えば浮いたり出来るようだし…確かに自分だったら満喫したい。

何をする気にもなれなかったけどシャンプーがすっからかんなのもあり、このまま部屋でしんみりしていると蓮マンや小十郎にも悪かろうと、夫と2人で散歩がてら買い物に出た。
ついでに何か食べないとね、と無い食欲なりに考えて、人間のお通夜ではよくお寿司が出るね、とふたりで寿司を食べた。
すしざんまいにしたのだが、社長の笑顔がポジティブでいい。それに食べたいものを食べられる量だけ頼めるのがこんな時にはとても良い。
お通夜に寿司が定番なのはこんな事も理由なのかもしれないと思った。

帰宅して、友人がくれたちゅーるで献ちゅーるを。いつものように一本を蓮マンと小十郎とで3等分した。

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