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人工知能学会炎上事件:議論と教訓の検討

人工知能学会全国大会で発表された立命館大学の研究者による論文が議論を巻き起こしています。その論文は、SNS・pixivに投稿された一般ユーザーの小説10作を分析材料として扱い、その結果が多くのユーザーの反発を買いました。論文は「猥褻表現」のフィルタリングを目的とした研究で、研究対象は性表現が多く含まれる小説でした。これらの小説は作者が「R-18」(18歳未満閲覧禁止)にカテゴリーしていました。

pixivユーザーの反論は多岐にわたりますが、主な問題点は作品が無断で研究対象にされ、論文内で投稿作品のURLと作者名が明示されたことです。これは「晒し上げ」と見なされ、ネットメディアもそれに追従する報道を行いました。この一件は、オタクコミュニティ(SNS)と人工知能の研究者(理工系)という、異なるコミュニティ(領域)の衝突と言えます。この一件の結末が両者にとって“前例”となり、将来的に参照し続けられる可能性があるため、この衝突自体はけっして瑣末なものとは言えません。

現在はなかば「炎上状態」になっており、人工知能学会および研究者側は論文PDFを非公開としましたが、その判断が今後も妥当なのかどうかを考えていく必要があります。著作権法的には、この論文上で「無断転載」はされておらず、著作権法の規定範囲内で引用が行われています。よって、著作権法上の問題はないと言えます。

しかし、「法律に反さなければ何をやってもいい」ということではありません。法律は社会の指針であるのと同時に最終的な解決方法ではあるが、法律の手前にも倫理や道徳といったルールも存在します。今回の一件においても、研究者側の研究姿勢に対しての批判は生じています。たとえば、研究対象が「私人のプライベートな趣味」であることには留意が必要でしょう。

この一件は、研究者が研究対象に影響を与えたのは明らかで、論文で分析対象となっていた10作のうち、現在も公開されたままとなっているのは3作のみであり、残りの7作はユーザー自身によって非公開あるいは削除されました。今後とても懸念されることがある。それは、「炎上」の幕引きとして立命館大学の研究者や人工知能学会が、さしたる議論もなく全面謝罪して終わることです。それは将来の研究においてひとつの“前例”となり、大きな禍根を残すことに繋がりかねません。

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