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【バアル信仰】ユダヤ人とフェニキア人の神【古代都市ウガリット】【ダゴン・エル・アシェラ】

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こんにちは、今回はバアル信仰についてお話しさせていただきます。宜しくお願い致します。

バアルという神は古代オリエントの主要だった神で、偉大なオリエントの神として[ウガリット文書]に登場しています。

バアル神の基本は人間や動植物の繁栄、豊穣、雨や嵐の神、そして戦闘を象徴する神なので、[ウガリット文書]ではこれらが不毛な年はバアルは生きていないとされ、繁栄・豊穣の年はバアルは再生している、と解釈されていました。

バアルは[旧約聖書]にも登場していますが、ヤハウェからは度々批判の的になっています。

例えば「崇高なるバアル」を表す「バアル・ゼブル」の名称を「ハエのバアル」を意味する「バアル・ゼブブ」と改名されたり、イスラエル王国の初代王とされるサウルにはエシュバアルという子供がいましたが、「バアルの人」を意味するエシュバアルの名称を「恥の人」を意味するイシュ・ボシェテという名に変えられいます。


バアル信仰では、流された牛の血から新しい生命が誕生すると考えられ、この信仰はキリスト教にも影響を与えています。



[ウガリット]
現在のシリア・アラブ共和国にあった古代都市国家、ウガリットという国ではバアル神が信仰されていました。


ウガリットという国家は、ヒッタイトと古代エジプトの勢力圏に挟まれる場所に位置したため貿易国家として栄え、紀元前2000年頃のエジプトの刻文やテル・エル・アマルナ書簡などにウガリットの名が現れています。

最盛期は紀元前1400年頃と云われていますが、紀元前1300年代の中頃に起こった地震によって壊滅的な被害を被り、再び繁栄するも最期は北方や地中海から侵入してくる民族に悩まされて紀元前1100年以後滅んでいます。

ウガリットは陸路と海路が共に優れた土地だったため、古代オリエントの交差点ともいわれ、金属、食料、木材、馬など主要貿易品が盛んにウガリットを行き交っていました。

さらに商業の中心として栄えただけでなく、染色技術、金属加工技術、建築技術などにも優れ、アルファベットの原型も生み出されています。

アルファベットの原型が残された記録のひとつに[ウガリット文書]があり、これは1928年に発見されたものです。

この[ウガリット文書]には偉大なオリエントの神バアルが登場し、バアルは雨や嵐、豊穣、多産、繁栄の神であり頭に牛の角をもっている牛頭神です。

アルファベットのAは牛頭をかたどった文字で、[ウガリット文書]にはバアルの他にもアナトやエルなどの主要な神々も登場しています。

また、ラス・シャムラの石碑には右手で矛を打ち振り、左手には稲妻の光の穂を握る姿が描かれています。

[ウガリット文書]の中でのバアルの構造は、父がエルであり、エルは「牡牛エル」ともいわれています。
エルの妻は女神アシェラという神で、数十人の神々を生んだと記されています。女神アシェラは神々の母であり、海の母とも言われています。

そしてバアルの妹であり妻でもあるのがアナトという女神でアナトは若くて美しいと記されています。

ウガリットは海洋民族やヒッタイトによって滅んでいますが、ウガリット滅亡後もこれらの神々は移動をつづけて、ギリシャ神話の中にも姿をとどめています。

文明はつねに神々とともに移動するとも云われ、日本ではスサノオノミコトも別名、牛頭天王といわれており、頭に角のあるバアル神ときわめて似ています。


紀元前3000年前後の牛を表す絵文字は


このような文字でしたが、

後世になるとこの絵文字を90度回転させた

このような文字になり、そして楔形文字化したのが

こちらの文字で、シュメール、アッカド、バビロンでもこの楔形文字が牡牛や耕牛を表していました。

一方、シナイ半島の銅山で働いていた西セム人はエジプト象形文字の「牛頭」を省略してシナイ文字の牛を作っています。


このシナイ文字はシュメールのAに相等し、
エジプト象形文字の「牛頭」が、へブライ文字の「A」になり、さらにギリシャ文字の「A」、ついでローマ字の「A」「a」にまで変化しました。

ローマ人は、その「A」をアルファー、アラビア人はアリフ、かつてのセム人はアルプと呼び、最古のシュメール人はアルアヅとよんでいました。

[史記]の三皇本紀には人身牛首であった炎帝神農(姜姓)が登場しますが、火徳の王 炎帝は、鋤や鍬の使用法を万人にしめして、はじめて耕作を教えたため号を神農氏という、と記されています。

人身牛首の炎帝神農は高句麗時代の朝鮮半島では「スサ」と呼ばれていたため、

炎帝神農(中国)、スサ(高句麗)、須佐之男命(日本)

人身牛首(中国)、牛首山(韓国)、牛頭天王(日本)
であることがわかります。

※ イラン西南部に位置した古代都市スサの語源も関係あります


現在もスペインやメキシコでさかんな闘牛は、バアル信仰を受け継いだものといわれています。


[フェニキア人と檀君朝鮮]
古代オリエントのもっともすぐれた海洋民族といわれているフェニキアの人たちも、バアル神を主神としていました。

フェニキア人は海洋民族ですが、ヒッタイトやウガリットを滅ぼした海洋民族とは元々は別の民族で、フェニキア人の方の海洋民族はアルファベットを初めて実用化し、ウガリットの文化や神々を受け継いで広めています。

フェニキアでは、バアルの父エルの別名としてダゴンという神が登場しています。

ダゴンの音写は檀君であり朝鮮半島の歴史書[三国遺事]では檀君は帝釈天桓因のことだとしていますが、帝釈天というのはヒッタイトやヒンドゥー教のインドラなので、檀君桓因の檀はフェニキア人の神ダゴンで、桓因の因はインドラのインで同じ神を重複させた名称であることがわかります。


インドラは古代インド固有の神ではなく、ルーツを辿ると元来カッシュ(カッシート)人やミタンニ人などが崇拝していた神であり紀元前1500年以降にミタンニ・アーリア人がシュメールから主神のインドラ神をガンガ流域に持ち込んだのですが、その持ち込んだ民族の一派にナーガ族がいたことが推測できます。


檀君朝鮮といっても、現在の朝鮮半島や満州に自生した民族ではなく、檀君朝鮮の初期の時代はバビロンやインドにあり、末期には中国大陸内部にあったことが[桓檀古記]や[契丹古伝]などを合わせて読むとわかります。


檀君神話が古代朝鮮の建国神話になっているということは、ナーガ族を含むミタンニ・アーリア人とフェニキア人の神ダゴンを古代インドに持ち込んだであろう民族の混血部族が檀君桓因の神話を最終的に古代朝鮮に持ち込んだことを示唆しているのかもしれません。


当時のフェニキア人の民族構成はフルリ人やアムル人(旧約聖書のアモリ人)を中心に後からエーゲ海から渡来したとされるアカイア人などが混血したのが紀元前12世紀頃のフェニキア人です。



[バアルの名称]
バアルの別名はとても多く、ハモン、モレク、アドン、アドニ、メルカルト、エシュミン、ギリシャ神話ではアドニス、エジプト神話ではオシリスなど複数の別称を持っています。

また、[ウガリット文書]ではバアル神の母にあたる女神アシェラの別名も多く、アシェラト、アシェラトゥ・ヤンミ、アスタルテ、アシタロテ、バーラト、アナト、アラメア、インニン、イシュタル、ギリシャ神話のイシスなどがあります。


ギリシャ神話にもバアルなどの神々が登場するということは、ギリシャもまたウガリットやフェニキアなどの古代オリエント文化の影響のもとにあったからで、造船技術や航海術にたけたフェニキア人は、地中海を頻繁に往来していたと考えられます。

そうすると、フェニキア人の文字アルファベットが今日の欧米の文字になったと共にバアル信仰も当然広まっていきます。


バアル、アシェラ、エルのうち、フェニキア人にとって親しい神はアシェラとバアルで、アシェラは海の女神であり、海洋民族のフェニキア人にとってはなくてはならない神でした。



またフェニキア人は、戦争に勝てば勝ったで生贄を捧げ、負け戦になったらなったで勝利を願って生贄を捧げており、バアル信仰では人間の生贄がしばしば求められていました。

フェニキアの植民地であったカルタゴという国は、本国フェニキアと一線を画すため最高神をバアル(バアル・ハモン)から、女神タニトに変えていてタニトはアシェラの別名です。

カルタゴの名将であったハンニバルは「バアルの恵み」や「慈悲深きバアル」、「バアルは我が主」を意味すると考えられています。



バアル、エル、アシェラの三神には、別名が多いと言いましたが、これは古代オリエントの各地で祀られたため、その地方独特な呼び名がつけられて残ったものです。

これはまた、三神一体の人気の高さを物語るもので、神々の働きはその土地の特徴や統治者、神官たちの都合などによって、その都度役目が変わったり合成されたり、性転換されたことも多いようです。

後半に続きます🙇‍♀️

📖参考書籍📖
鹿島曻著書「日本神道の謎」「史記解」「桓檀古記」「倭人興亡史」「倭と日本建国史」
大林太良編集「民族の世界史6東南アジアの民族と歴史」
鳥越憲三郎著書「古代中国と倭族」
小谷部全一郎著書「日本及日本國民之起原」
三笠宮崇仁・赤司道雄著書「フィネガン古代文化の光」
三森定男著書「印度未開民族 」
石井米雄著書「世界の歴史14インドシナ文明の世界」
長浜浩明著書「韓国人は何処から来たか」
中村啓信著書「古事記 現代語訳付き」
一然著 金思燁訳「三国遺事 完訳」
東洋文庫「三国史記1新羅本紀」
石原道博著書「新訂 魏志倭人伝・後漢書倭伝・宋書倭国伝・隋書倭国伝」「新訂 旧唐書倭国日本伝・ 宋史日本伝・元史日本伝」
E・ドーフルホーファー著書/矢島文夫・佐藤牧夫翻訳「失われた文字の解読 Ⅰ」
ミスペディア編集部「面白いほどよくわかる朝鮮神話」

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