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指しゃぶりもオムツ外れも

 寝る前やテレビを見ている時、未だに指しゃぶりをする次女5歳。元来、怠け者で面倒なことが嫌いな私は、特に次女の指しゃぶりを注意をするわけではなく、好きにさせていた。歯科医には歯並びのことを相談したこともあったが、歯科医も「無理に止めさせてストレスを与えるくらいなら、このままでよいと思う。何かしらの安心材料としてやっているのだから」という意見だったので、そのままにしておいた。

 そんな次女が突然、指しゃぶりを止めるために、自ら絆創膏を指に巻きたいと言い出した。2日前のことだった。「指を口に入れたとき、指が絆創膏でガザガザしているとチュコチュコしなくなるからね。同じクラスのKも指チュコチュコ止めたって言ってたしね」と言う。私は「そうだねぇ~。自分で止めるって思って、絆創膏をつけようと思ったのすごいね」と言いながら、指に絆創膏を巻くのを手伝った。

次の日、「お指チュコチュコしなかったよ~」と言いながら、嬉しそうに起きてきた次女。心なしか誇らしげな顔をしていた。その晩、また自ら指に絆創膏を巻いた。母は絆創膏のことを完全に忘れていたのに、今日も自らせっせと絆創膏を巻いて寝た。

                                                  レディネス

ふと、これってレディネスなんじゃないか、と思った。学生時代、心理学を勉強していた頃に学んだ言葉だ。

簡単に言うと、レディネスとは、心身の機能がある行動や知識を習得できる段階まで発達し、学ぶ準備が整っている状態のことである。

次女の例でいえば、指しゃぶりをやめるという行動を習得するには、十分に発達し、彼女の中で止めるための何かが整って初めて止められるということなのだ。母親の私が「指しゃぶりをすると、歯並びが悪くなる」「指しゃぶりは、赤ちゃんのすることだ」などと指摘しても、辞める準備が次女の方に整っていなければ、何の意味もないということ。

そういえば、オムツ外れだって同じだった。長女が割とあっさりオムツを外せたので、すぐに外せると思っていたのに、なかなか外せない。それではと、トイレに座ることができたらシールをあげたり、キティちゃんのパンツを買ってあげたり、しまじろうの動画を見せたり、手を変え品を変え、よく使われている方法を試しながら、オムツを外すモチベーションをあげようとした。その結果、惨敗…。

やっていくうちに、「小学生になってもオムツ履いているって子は聞いたことないし、いつかはずれる(と思うことにする)」と大きく構えていたら、ある日突然パンツをはけるようなった。

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わが子が指しゃぶりを止めたり、オムツを外せる準備が整っているかどうかなんてわからない。

「○才だから」「お友達の○○ちゃんはもうできるから」「〇ちゃんはこの方法を試したら上手くいったから」といった外からの影響を受けて、焦ってしまう。自分が何か働きかければ、こどもが良い方向へ変えてあげられると信じて行動する。その気持ちはすごくよくわかる。今の自分だってそうだ。

でも、次女の指しゃぶりとオムツ外れのことを考えると、たんにそれはレディネスが整っただけとも思えた。

もしかしたら、「心身の準備が整えさえすれば、いつか絶対出来るようになる」と信じることが一番大切なのかもしれない。

やってもやらなくても結果は変わらないとしたら、こどもに費やしていた労力と時間を自分のために使えばよかったと思う。これから先、同じような壁にぶつかったとき、すぐに躍起にならずに、お茶でも飲んで一息つく、ぼーっとする、好きな音楽を聴く、本を読む、走る、なんでもいいので、自分を労わるMe timeに使っていくことにしよう。

レディネスという言葉が生まれた背景
レディネスとは、Arnold Lucius Gesell(ゲゼル)が成熟優位説の中で提唱した概念。
双生児統制法と呼ばれる実験で、一卵性の双子の片方(A群)には階段を上る訓練を十分に実施し、もう片方(B群)には何の訓練をさせない状態にした。一卵性の双子なので、能力的な差はないという前提だ。
訓練を受けた双子の片方(A群)がある程度階段上りが出来るようになった後、訓練を受けなかった双子の片方(B群)も階段上りの訓練を始めた。 すると、訓練を受けなかった双子の片方(B群)の方が練習が少ないにも関わらず、2週目には階段を登りきる時間が訓練を受けた双子の片方(A群)よりも早くなった。この結果を受けて、ゲセルは行動や知識を十分に習得できるには、その準備が整っていることが不可欠であると結論付け、成熟優位説を提唱した。   


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