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考察 アラーニェの虫籠 アムリタの饗宴

前置き

小説・および映画『アムリタの饗宴』、『アラーニェの虫籠』の読了、鑑賞を前提としているため、細かい説明を省きます。ネタバレ等注意してください。

カラビ・ヤゥの隙間

↑巨大集合住宅
↑カラビヤウ多様体

ゼリコ・フィルムの公式YouTubeチャンネルに、アラーニェの虫籠のメイキング映像がアップロードされている。
巨大集合住宅の3DCGの俯瞰図がカラビヤウ多様体に類似している。
これは、映画『アムリタの饗宴』で言及があったため間違いないだろう。
では、カラビ・ヤゥの隙間とはどんな空間なのか。
超弦理論は難しいので簡単に。

人の本当の願いが叶う場所”と仮定する。

蝶の伝説と背中の翅

海外では蝶は人間の生と死、復活のシンボル死者の魂が宿るとされる。

ギリシャ語で蝶はプシュケ(psyche)。
これは、ギリシャ神話に登場する少女の名が由来。
『霊魂(プシュケー)』を人格化したもの。魂、不死を意味する。
神話に於いてプシュケは、苦難を乗り越え、結婚を認められ、永遠の命を得て女神となった、とあり、背中に蝶の翅を生やした姿で表される。

つまり、カラビ・ヤゥの隙間とは苦難を乗り越えた者の願いを叶える場所なのだ。
映画でも、死魄兵に襲われながらも諦めず抗い進み続けた二人の主人公それぞれの背中に大きな蝶の翅が生えた描写がある。
つまり、この時点で二人は何かを叶える資格がある、と認められたのだろう。

一体二人は何を叶えたのか。

物語の結末

アラーニェの虫籠

昏睡状態の椎田りんに”貴女になりたかった”と謝罪して蟲のいる暗闇に沈んだ主人公・住原りん。
蟲が世界に溢れる中、病室で目を覚ました金髪のりんは結局どっちなのか。
これは恐らく、主人公の住原りんの方だったのではないだろうか?
住原りんは、椎田りんになりたかったと思いを吐露している。
これがつまり、彼女の本当の願いだった。
そして、目を覚ます金髪のりん。
元の世界には蟲が溢れていなかったことから、最後の荒廃した世界は別の次元に存在する世界だろう。
そしてその世界こそ、住原りんが望んだ世界。
生まれた瞬間から自分が椎田りんだった世界

このシーンは、髪型から見て奈澄葉ではなく住原りん。
突き落とされた主人公は、見た目は椎田りん。
過去に自分が椎田りんを突き落として成り代わったように、住原りんが自分(現・椎田りん)を突き落として成り代わろうとした描写ととれる。
だからこそ、ラストシーンでは病室で目を覚ましたのではないだろうか。


世界には自分と同じ顔の人間が自分を含めて三人存在していて、出会うと死んでしまう、という話がある。ドッペルゲンガー現象だ。
主人公のりん(黒→金髪・住原りん)、もう一人のりん(金髪・椎田りん)、そして奈澄葉。
主人公のりんが奈澄葉を通して過去を思い出していった事を考えれば、この三人は設定として瓜二つ…三つ?と言えるだろう。
元の世界では本物の椎田りんが目を覚ましている筈なので、この現象の結末とも矛盾はない。

アムリタの饗宴

無数に降ってくる謎のたまひ達に助言を受けながら、未来を変え、願いを叶えるために奔走する主人公・たまひ。
背中に赤黒い翅を生やし、異界と化した巨大集合住宅を異界と隔離
たまひは陽と由宇と、電車に乗って何処かへ向かう。
三人が消えた線路の先には三体の異形が…

たまひが降ってくるシーンはつまり、別の次元別の世界が存在することの証明?
所謂死に戻りをしているのか。正確には別の次元の同じタイミングへ移動しているだけかも。

たまひの背中にも翅が生えていた。彼女は何を望んだのか。
何度も世界を移動して、自分と陽と由宇の三人が一緒に居られる世界を探した。
だからこそたまひは、異形になってまで三人一緒に居られる世界を選んだ
小説読了後、最も印象の変わるシーンだろう。
アムリタの饗宴は、ストーリーに関わるキャラクターとたまひの間に描かれるが重要な意味を持った物語、と言えるのかもしれない。


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