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干支の話

突然だが小さい頃自分の干支が少し嫌いだった。
ちなみに申年である。きっかけは小学生の頃にあった十二支の授業。同級生の早生まれの子達が酉年と知った時に「トリの方が可愛いじゃん」と思ってしまったからだ。
当時小学生の私からすればサルとトリは勝負にもならなかった。文鳥やヒヨコ、インコやフラミンゴなどカラフルで見た目もバラエティにとんだポテンシャル満点のトリは、ウサギやハムスターに並ぶ人気キャラクターとしてファンシー文具に堂々とプリントされていた。それに比べ基本茶色ワントーンのサルは残念ながらその枠組にお呼びではなかったのだ。小学生からするとパッとしない動物。もちろん大人になった今ではサルにだってカラフルなマンドリルや可愛い顔したリスザルなどトリには及ばぬが見た目のレパートリーが多少あることはちゃんとわかっている。ただ良くも悪くも小学生の世界はとても単純で狭かった。
そんな中、巷で動物占いというものが流行る。
これは生年月日で動物が割り当てられその日の運勢を占うものであった。私はコアラだった。同級生同士で干支の話などあまりしなかったし如何せん勝負にすらならないサルとトリの二択。たった1回きりの授業で取り上げられた干支という話題は流行のビッグウェーブによって記憶の片隅に流されてしまったのである。いや実際はそこまでの勢いはなかったのかもしれないが都合よく"コアラの女"になった小学生の私にはもう関係のないことであった。

「五黄の寅年の子やん。ジュニア。」
昨年行った温泉街の土産屋にある干支の置物の商品ポップを見た夫が言った。どうやら息子の生まれる年は36年ぶりの縁起の良い寅年らしい。私は適当な相槌を返しながら上記の話を思い出した。男の子で寅年。オマケにスーパー凄いやつ。もしかすると私も寅年だったならコアラの女にならずにすんだのかもしれない。ちなみにその置物は今うちのリビングに立派に鎮座している。


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