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綺麗事抜きの公営競技指南 競輪編その3

 強烈な見出しを付けてしまいましたが、綺麗事抜きとはこういう事です。競馬と他の公営競技の根本的な違いはここです。

 引退した競走馬がどうなるか?優秀な成績を残した馬なら繁殖です。その他の第二の馬生を見出す幸運な馬も居ます。

 そうでない多くの馬は乗馬になります。しかし、本当に乗馬になる馬など殆ど居ないわけです。本当の行き先は乗馬クラブではなく肉屋です。

 そういう意味では競走馬に生活は無いのです。金を稼ぐアテがあるから生産され、面倒を見てもらい、その見込みが無くなれば肉になる。馬はどこまで行っても人に飼われる家畜なのです。

 しかし、馬と違って選手は自分の事を自分で決める事が出来ます。選手である事は生活の手段であり、常に一着を目指すなどという綺麗事など言っていられないのです。敢えて勝とうとしないレースがあるわけです。

 そこで、競輪選手の心理、特にどうして勝とうとしないのか?そこに視点を当てつつ、競輪の開催の流れを説明します。これが分かってくると競輪は面白くなります。


競輪はトーナメント

 競走馬は1回走れば当分お役御免ですが、他の公営競技は違います。何日かの開催を連日走って優勝者を決めるのです。

 競輪は3日が基本で、大きなレースになると4日から6日に及びます。そしてトーナメント形式で優勝者を決めます。

 3日制の場合、初日に予選が行われ、ここで成績の良い選手が2日目は準決勝に臨み、残りの選手は俗に負け戦と呼ばれる一般戦に回されます。

 そして最終日に決勝が行われ、ここで勝てば優勝となります。特殊な形式の開催もありますが、基本的にはこの認識で大丈夫です。


レースの格

 競馬のレースにもグレードがあるように、他の公営競技も開催ごとにグレードが決まっています。

 ヒラ開催と呼ばれる普通のレースがFIとFII。単に記念と呼ばれる各競輪場で原則年1回行われる開設記念がGIII。各競輪場が持ち回りで開催するGIIとGIは特別と呼ばれ、暮れに行われる賞金王決定戦がGPです。

 選手は基本的に月2回どこかしらの開催に斡旋されます。GIIIから上のグレードレースはS級だけが斡旋されますが、ヒラ開催はFIはS級とA級、FIIはA級とA級3班(チャレンジ)がそれぞれ斡旋され、二つのトーナメントが前半後半に分かれて進行します。

 レース数はまちまちです。従って微妙に勝ち上がりの基準は異なります。この勝ち上がりに競輪選手の生き方が顕著に顕れます。


競輪選手は旅をする

 競輪場は今の所全国に43場あります。今の所というのは地方競馬同様廃止されることがあるからです。

 競輪場のバンク(コース)の長さは400mが主流ですが、500mや333m(サンサン)の場もあります。

 そして、同じ距離でもそれぞれ直線の長さやバンク(傾斜)に違いがあり、それぞれ特徴があります。

 一般に直線の短い方が先行が有利で、逆に長い方が追い込みが有利です。公式サイトや予想紙には決まり手の統計が載っているので、最初はこれを見て加味するだけで十分です。

 そして番組屋と呼ばれる担当者が斡旋した選手をそれなりに考えて各レースに振り分けます。多くの場合地元の選手が有利になるように番組は組まれます。

 地元三割り増しという言葉があり、普段練習している競輪場でしかも有利に番組を組んでもらえる地元選手は実力以上の力を出すというわけです。

 しかし、もともと強い選手が優遇されるならいいですが、番組屋は弱い選手もどうにか勝たせようと優遇します。ここに危険があり、チャンスがあります。この辺の見極めが出来れば高配当に辿り着けるわけです。

初日の心理~ヒラ開催編~

 一番ポピュラーな3日開催の9車立て5レース制を想定して競輪選手の心理を考えて見ましょう。

 最初の4レースが予選で、5レース目は特選。27人が2日目の準決勝3レースに進みます。この特選というのが曲者です。

 特選には強い選手が集められ、このレースの選手は結果を問わず準決勝に出場できます。言うなればシード枠です。

 競輪選手は開催を通じて疲れていきます。従って、決勝に進出するために特選は手を抜く選手というのがかなり居ます。ここで消耗を抑えておけば明日から有利に勝負ができるわけです。

 競輪はライン走ります。ウマがこういう考えに至れば勿論、番手の選手でも無視はできません。従って、初日特選は荒れやすく、初心者は手を出さないほうが無難です。

 一方予選は4着までに入れば確実、5着に入った選手のうち競走得点の高い二人が準決勝へ進出できます。

 予選でも手を抜く選手が居るのです。準決勝へ行っても勝ち目が薄いので適当に走っておいて、明日以降の強敵不在の負け戦で稼ごうというわけです。

 また、思惑の外れる選手も当然います。思い切り不利を受けたり、調子が悪かったりして勝つつもりが負けてしまう選手、逆に展開に恵まれてしたくもない勝ち上がりをしてしまう選手もいます。

 選手の思惑と能力の兼ね合いを知り、何故勝ち上がったのか、勝ち上がれなかったのかを見抜けるようになれば上級者です。しかし、それが簡単にできるならこんなnoteを書いて人に教えたりはしないのも事実です。


2日目の心理~ヒラ開催編~

 二日目は負け戦である一般戦から始まります。3レースある準決勝で3着までに入れば決勝進出です。

 ここで注目すべきは、3日目の負け戦は2レースずつの特選と一般に分かれるという事です。特選の方が賞金も得点も高いのです。

 準決勝で4着から8着になった15人、2日目一般で勝った選手と2着選手一人が特選に進みます。

 初心者に一番お勧めなのは準決勝です。初日に勝ち上れるだけの実力とコンディションを持った選手が集まり、本命に推されるような選手は当然優勝を狙って走ります。

 一方、初日同様に決勝で勝ち目のない選手は負け戦で稼ごうとします。強い選手がやる気を出し、弱い選手が怠ける。結果として固く収まることが多いのです。


最終日の心理~ヒラ開催編~

 最終日は一般、特選、決勝と進みます。最終日は概ね全選手がパワー全開です。負け戦の選手も最後に少しでも稼いで帰ろうとします。

 特に決勝は大変です。というのも、競輪は優勝賞金だけが飛び抜けて高いのです。FIのS級の場合準決勝は1着211,000円、2着175,000円ですが、決勝は1着1,604,000円、2着625,000円と露骨な格差があります。

 むしろヒラだからこの程度で済んでいるのです。グレードが高くなるほどこの格差は広がり、暮れのグランプリでは1着98,400,000円+副賞500万円で2着20,900,000円ととんでもない差になります。

 競艇のグランプリは6艇なのに1着100,000,000円で2着45,000,000円なので、競輪の1着優遇は顕著です。

 なので競輪の世界には理想の着順を指して1・1・9(ピン・ピン・パー)より9・3・1(チュー・サン・ピン)という言葉があります。これが綺麗事抜きの競輪選手の真理です。

 予選、準決勝と勝って決勝で9着に沈むより、初日特選で目一杯手を抜き、ぎりぎりで決勝に滑り込み、優勝はしっかり取る方が賞金も競走得点も稼げるのです。計算したら本当にその通りになります。

 従って、決勝は荒れ模様になります。どうにか自分のラインから優勝者を出そう、あわよくば自分が、そういう心理で仁義なき戦いを展開します。ラインからというのがポイントです。ここから真っ黒な部分に踏み込みます。


競輪にノーサイドはない

 ここからはブラックボックスです。選手達は表向き否定しますが、これがあると信じられています。

 例えば予選で優勝する見込みのないウマが優勝を狙えるマーク屋とラインを組んだとしましょう。ここでウマはどうするか?

 勿論諦めず勝負をかける向こう見ずもいますが、時として自分の着は度外視で番手を勝ち上がらせにいくのです。潰れるのを覚悟で逃げを打ち、これで番手が勝ち上ればウマは任務完了です。

 こういう献身は選手の信用を勝ち取ることに繋がり、後々自分に帰ってきます。目先の勝ち負けだけの為に選手は走るのではないのです。

 準決勝でもこれは同様です。そうして間接的に自分の地区から優勝者を出すお膳立てをする事が競輪選手の裏の目的なのです。

 そして、ここからが本題です。選手や関係者は立場上絶対に認めませんが、特に大きなレースでは優勝者はラインの仲間や勝ち上がりに貢献した選手に賞金を分けると言われています。

 この説を信じるなら、競輪とは開催を通じての地区同士の戦いでもあるのです。自分は負けても地区の誰かが優勝すればおこぼれが貰えるというわけです。

 これを聞いて八百長だと怒るのは簡単ですが、あなたの勤め先はそんなにクリーンなんでしょうか?怒るよりも見抜くことです。

 自分をマーク屋を勝たせるために身を捧げるウマにダブらせて怒るよりも、それを見抜いて乗っかって儲けることを考える方が利口で建設的です。競輪は大人のギャンブルなのです。

 現実を見据えたところで、次回はいよいよ実践編、予想の仕方車券の買い方に入ります。

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