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『わたしは思い出す』の6つのアプローチ

大地震後の11年を生きた、ひとりの女性の育児日記。その再読から始まる30万字超の回想録『わたしは思い出す』。アーカイブ・プロジェクト「AHA!」の自主出版レーベルより刊行。
https://aha.ne.jp/iremember/

人は、経験していないことを、 どのように経験できるのか──。回想録『わたしは思い出す』の6つのアプローチ。

1. 〈わたし〉の視点から震災を捉え直す

本書の編者(AHA!)は、仙台に暮らすひとりの女性、かおりさん(仮名)と出会います。かおりさんは、2010年6月11日に初めての出産を経験。以来、育児日記を書き続けてきました。彼女は日記に何を綴ったのか。そして、再読して何を思い出し、忘れてしまったのか。11年の歳月を〈震災〉という大きな主語ではなく、ひとりの女性の語りから捉え直します。

2. 読者一人ひとりの11年を振り返る起点

かおりさんの育児の11年間が刻まれた日記の「再読」作業は、のべ31回(うち26回がオンライン)、編者がまとめたことばは30万字以上におよびました。ひとりの育児者の「口述の生活史」は、一人ひとりの過ごした11年をも振り返る起点となるでしょう。本書は、読者それぞれの〈わたし〉とその月日を分かち合うための試みです。

3. リフレインする“わたしは思い出す”

出産日、地震の日、新しい家を建てた日、子どもを怒った日。かおりさんが語ったエピソードのうち、毎月11日のエピソードにフォーカスし、“わたしは思い出す”という短いフレーズから始まる断片的な回想として掲載します。

“わたしは思い出す”というフレーズは、個人的で断片的な回想を羅列した、ジョー・ブレイナード『ぼくは覚えている』(白水社、2012年)や、ジョルジュ・ペレック『ぼくは思い出す』(水声社、2015年)が用いた詩的表現に想を得ています。

4. 巻末に148点の保管物目録、883語の索引

日記帳、哺乳瓶、14時7分が打刻されたトイザらスのレシート、初めて子どもと観た映画の入場券、サンタクロースへのメッセージ、母の日にくれた絵。巻末にはかおりさんが所持する物品の写真を解説とともに収録。回想に登場する言葉の索引や地図も掲載しています。〈辞書〉のような、ある一人の11年間の回想のアーカイブです。

5. 『はな子のいる風景』に続く、編集×デザインの試み

編集は松本篤(AHA!)、デザインは尾中俊介(Calamari Inc.)が担当。尾中と松本が2017年に制作した『はな子のいる風景』(武蔵野市立吉祥寺美術館)は、第52回造本装幀コンクールで東京都知事賞を受賞し、ドイツで開催された「世界で最も美しい本コンクール」などのブックフェアに出品されました。『わたしは思い出す』は、書籍の編集とデザインによる「記憶の再-記録化」の試みです。

6. 読者から〈あなたの「わたしは思い出す」〉を募集

本書は“小さな記録と記憶”の価値に着目するアーカイブ・プロジェクトAHA!による自主出版レーベルとして刊行します。読者カードやウェブサイト、各地の読書会を通じて、かおりさんの回想をきっかけに読者自身が思い出した日付とエピソードを募集。〈あなたの「わたしは思い出す」〉として、ウェブサイトやSNSで紹介します。

『わたしは思い出す』の詳細は特設サイトへ

本書は私(わたくし)の記録と記憶のアーカイブ・プロジェクトAHA! による、自主出版レーベルとして刊行します。この本をメディア(媒介)となって届けてくださる方は、こちらの案内(PDF)をご覧ください。