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 ネタを書きあげて、パソコンのディスプレイに穴が開くまで目を通して、なんなら音読までしてから「でけたでー」とウィーンガッシャン、プリントアウト。それなのに稽古場で読み合わせしたときに必ず、100パーセントの確率で誤字脱字が見つかる。共演者には「あははーごめーんね」などと愛嬌を振りまいて修正してはいるけど、心の中では(クソ! 死ね!)と詰めの甘い仕事をしてしまった自分を呪っている。
 たかがケアレスミスと言うなかれ。ほかの人はどうかは知らないが、腹の底から悔しいのだ。本番で台詞を噛むより悔しい。何と言うか、印刷台本には「完成された美しさ」があり、そこにインクを一滴こぼしてしまった……! そんな後悔を毎回毎回積んでいる。

 そして、はたと気づいた。これはおそらく自分のせいではない。精霊の仕業だ。作劇の世界に住みつく「ごっちゃん」と「だっつん」のせいである、と。そうでないと納得がいかない。
 やつらはライターが書いた台本が印刷される段階でデータにこっそりと忍び込み、しょうもない改ざんを行う。「パチンコ」の「パ」を消すとかそういうレベルではない。「行きます」の「ま」を消すような、誰ひとり損も得もしない改ざんだ。「行きす」で我々は一体どこへ向かえばいいのか。本当に困ったやつらだ。いつか絶対に倒す。

 ところで、自分にはもう一つ同じような事例があって、公演のアンケートなどのコピーの際に必ず縦と横を間違えて複製してしまう。「公演の感想など、ご自由にどうぞ」の文字が切れて、はんぶんこで出力されたときの虚しさったらない。これはおそらく、「ぴーこ」のせい。