見出し画像

緑の脈と曖昧な朝

眠れなかった夜を過ごした朝、たいていは闇の中でも部屋の中の様子はよく見える。しかし、本当に稀だけど、闇に埋もれた部屋の中なのか、もしかしたらまぶたを閉じたままなのかわからない闇が目の中に沈み込んでいるときがある。やはり陽の登る前の朝に限られたことで、試しにまぶたをしっかり閉じてみるとその方が明るく、脈打つ何かが見えるほどだ。その脈には色がある。緑色の脈だ。そして僕は一線のこちら側に来ていることに気づく。「今はいつだろう?」と闇と緑の脈はそう思わせる。そしてどこかもわからない。でもこんなことは何度か経験していることに気づくのだ。もしかしたら記憶に埋め込まれたのか。幼い朝かつい最近の朝かは思い出せないけれど、そんなときに外に出れば遠くの広葉樹林が若葉の繊毛で銀色に輝いていたり、紫、黄、赤と胸に刺さる朝焼けを見せてくれた。僕は手探りで上着の袖に腕を通し、カメラを持って外に出た。森の向こうが光の透過を許し始めていた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?