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華やかなる場所

イモリん、こんにちは。今日は曇っていて雨が降ったり止んだり。僕は相変わらずの鬱野郎で、さっき数日ぶりになんとかシャワーを浴び、髪の毛も乾かないままベッドに横たわってます。iPhoneを握りしめて。満足に体を洗えなかったけど、できるだけ熱いお湯で汚れを洗い流したつもり。

もう数ヶ月経ちますね。干からびたあなたを玄関で見つけてから。
水槽からあなたの姿を失ってから二日間くらい満足に眠りもせずに、キャリーのついたラックを動かし、必要か不必要かなんて関係なく部屋に散らばるものをダンボールに押し込み、ベッドを引きずり、僕はあなたを探したけれど見つけることができなかった。探せるところは全部探したつもりだったんだけど、あなたはどこかに潜んでいたんですね。もう水槽なんかに押し込められていたくなかったのか、ただの気まぐれの脱走だったのかはわからないけれど、1ヶ月ほど過ぎた頃、玄関のバケツの陰で干からびたあなたを見つけた。僕は泣き崩れることもなく、あなたの遺骸を拾って河原に埋めてきました。
水槽の中の休憩場所として備え付けた流木はそのままにしてあります。もう誰も這い上がるものはいませんが。あなたの遺影のようなものです。流木の下では今、グッピーさんたちとコリドラスさんと、それから以前からいた巨大ドゼッ子さん(ドジョウ)がいつも騒いでいます。でも、あなたのような僕を見つめてくれる子はもういません。

あなたを河原に埋めてからしばらくして、舗装道路の傍に干からびかけたゼニゴケを見つけてその一部を拾ってきました。洗面器にぬるま湯を張って入れておいたら、みるみる元気になり、あなたの遺影の上にのせてみました。
這い上がるものはいないので、ただ、ぽんとのせただけでしたが、少しずつ育ち始め、そのうち水槽に入れた覚えのないヘンテコな植物も腕を広げ始め、種族も形状も全く違うのに、あなたを偲ばせてくれます。これで僕はあなたを忘れない? それはわかりません。でもたまには思い出すでしょう。ベッドに横たわり、相変わらず希望の持ち方も知らない肉塊のまま。

でもとにかく、今、あなたのいた場所は、華やかです。

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