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夫、子どもは私の人生の余興でしか過ぎない。

私はお堅い医療機器メーカーに努める会社員、営業職8年目。
仕事が終わって急いで保育園に子どもを迎えに行く。




「こんばんは~」




ハナさんだ。

もう夜なのに。今日も姿勢が良いな、ハナさん。




彼女は顔出しをしていて、Instagramをやっているから、バレるのが恥ずかしくて実はこっそり鍵垢の方でフォローして覗いている。


毎日発信していて、たまにzoom会などもやっているようだ。
見ていると、ママだけど女性としての人生も楽しんでいるようにも見えて、実はちょっと羨ましい。

私は毎日決まったようなブラウスを着て保育園に行くが、ハナさんはピンクのスカートや軽やかなワンピースを着こなしていて、おそらく同い年くらいだと思うのだけど、



なんというか・・・




私、枯れてる。





よく、接客業や営業職の人は
毎日人の目に触れるから若々しい、なんて聞いたことはあるが、あれは違うと思う。



だって、同僚のママ達。




全員枯れてる。




仕事で疲れ切って、
なのに急いで保育園に行き、
なんとかお風呂後には高めのパックを付けてみて、
SK2のクリームも染み込ませてみてはいるが、
帰ったら寝るまで一瞬だ。


たまに飲める晩酌くらいしか楽しみが無くて、
今晩もきっとハナさんのような軽やかで自由なママたちをこっそり覗いて1日が終わるんだろう。




でも、それでいいと思っている。




だって、着実に口座にお金は貯まってきているし、
会社が潰れる訳が無いし、
夫は浮気もしていないから。




子ども達だってすくすく育っていて、
最近学校に行きたくないとは言うけれど、まだ不登校のうちにも入っていない。



このままいけばきっと大丈夫だから。


だけど、なんだろうか。






枯れている気がした。




違いは何だろうか。

ハナさんと私の違い。

ハナさんは自営業だから?
私は会社員だから?



そこではない気がする。
そこだと思ってはいけない気がした。




・・・・・・・・



「おはようございまーす」

ハナさんだ。

朝、偶然にも同じ時間に登園した。



「あ、あの!」
「はい!」



「あ、いえ・・・」
「どうしたんですか~(笑)」


「実は、Instagram見てます!」
「そうなんですね!!ありがとうございます!」


「あの・・」
「はい」



「なぜ、楽しそうなんですか?」
「え?(笑)」


「なんか、楽しそうなのは、なぜなのかなぁと。昨日ふと思ったんです」
「え~なんでだろう。楽しい日もあるし、楽しくない日もありますよ(笑)」


「え?そうなんですか?」
「はい、普通にありますよ。昨日も、やるべきことがたくさんあり過ぎて、タスク過多。あーもう何もできないって不貞腐れてましたよ」


「そうなんですか・・・昨日お見かけした時も楽しそうに見えました」
「夕方の送迎の時ですよね?あれは多分、相撲のこと考えてました」


「す、相撲?!」
「はい。相撲、です」


「相撲って・・・え?!」
「いや、今度、栃木県総合運動公園で相撲大会開くんです。10/25、水曜日なんですが、良かったら来ませんか?参加費は100円です♪」


「ちょっと頭がついていってない・・です」
「あぁ(笑)ごめんなさい。ママ達って毎日忙しいじゃないですか?自分の時間もちゃんと取れない。1日があっという間に過ぎていく。そして体力も気力も明日に残しておかないといけないっていう気持ちもある。だからこそ、時間は一瞬だけ、その一瞬で本気で遊びませんか?っていう提案が相撲なんです」


「はぁ」
「お仕事されている方も1分の相撲ならお昼休みにでも来れるかなあって思ってますよ」


「そうですね、時間は大丈夫そう」
「でしょ?知らない人といきなり相撲?!って思う方もいるかもしれないけど、名刺交換から入る出会いだけの人生ってつまらなくないですか?」


「確かに・・・最近の出会いは全部仕事のお客様だけですね」
「ですよね。しかもそのお客様と本気でぶつかったことってありますか?体力も気力も全部ぶつけた【本気の】出会いです。」


「いや、、無いですね。ぶつかること自体を避けようとしています。なるべくコスパ良く、コミュニケーションも少なく済まそうとしてる。」
「ですよね。だから、一瞬だけの本気の遊びを、敢えてママ達がやることに大きな意味があるかなぁ、なんて思っています」


「い、行きます!」
「来てくれるんですか!」


「はい!!行きます!!」
「だって、さっき”相撲?!”って言ってませんでした?(笑)」


「はい・・(笑)言いました。けど、行かせてください。なんか、これを逃したら私一生変われない気がしました。変わらなくても支障はないんですけど、でも、なんだか私の為に行ってあげたい気がしたんです」
「嬉しいです。変な人ばかり来ますよ(笑)」


「緊張する…」
「もし、緊張するなら観覧だけでも受け付けています。今、インスタDMからフォームを送っても良いですか?ご案内しますよ」


「優しいですね、ハナさん」
「いえいえ~。私は私の為にやっています。でも女性はそれでいいと思うんです。変な女性が多く来てもらえたら私たちも嬉しいんです」







・・・・・






申し込んでしまった。

ハナさんのトークに巻き込まれたのか。
いや、自分で決断した。確かに。




たかが「一瞬」のためにこんなに勇気を出して、飛び込むような気持になったのはいつ頃だろう。




ちょっと高いコスメを使うこと、
あれこれ情報をとって学ぶこと、




会社に勤め続けて昇進すること、
口座にお金を貯め続けること、

夫が浮気をしないこと、
子どもが学校に行ってくれること、





全部、そんなことは、私の人生の余興でしかないのではないか。




私が本気で人生を遊ぶ場所はどこにあるんだろうか。


余興はもう終わりにしよう。
これから、本番を楽しみたい。




ここからが私の人生の本番。




まずは、「一瞬」を本気で生きてみる。
何かが変わる。それだけは分かる。


_________

10/25(水)宇都宮相撲大会
相撲エントリー、観覧希望、どちらか迷っている方もお申し込みください。
施設利用料100円のみかかります。



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