9月1日(火) 涼しい孤独

眠気の残る朝。一昨日の疲れがまだ抜けていないようだ。
あれだけ毎日一緒にいた○○さんがもういない場所(会社の隠語)へ。○○さんに合わせる必要はもうないし、一人でやっていく初日の区切りとして久々に早い電車で行くことにした。

家を出ると少し肌寒いくらいの涼しい世界だった。9月になった瞬間こんなにも上手く温度が変わるものか。
いつもとは違う、少し前までは日常だった早い電車で『立華高校マーチングバンドへようこそ 後編』を読む。

『響け!ユーフォニアム』のアニメにも何度か登場した主人公・梓だったけれどあの登場シーンにはこんな想いが隠されていたのか!と驚かされる。
梓のどうしようもなく捻れてしまった人間味が段々愛おしくなってきた。

最寄駅に着いて久々に遠回りルートで往く。坂の上にある建物を坂の下に設定し直す通勤、これこそが私らしかった。○○さんと登る坂はもうどこにもない。

久々に歩く街は新鮮で楽しい。
毎日のように通っていた薬局は相変わらず良い品揃えだ。
緑の繁るバス停では少し葉の元気がなくなっているようだった。
公園はセミがうるさくて怖かったけれど無理矢理横断。

世界の涼しさが今の感情に合っていた。孤独は涼しい、とふと思う。一人で好きなように歩ける自由は涼やかなものだ。
○○さんを失ったことは寂しいけれどこの街を取り戻したことにほっとする気持ちが確かにあった。

○○さんがもういない場所に着いて○○さんがもういないサボり場(トイレ)で一人手を洗う。いつもなら左側で彼女が手を洗っていたのに。定刻ギリギリまで喋っていたのに。朝から「帰りたい」を連呼していたのに。
本当にいないんだ、と濃い実感が湧いてくる。想像以上に寂しい。
○○さんがもういない席の方を見ると泣いてしまいそうだったから前だけを見て進む。虚しさが込み上げてくる。

もう誰とも「帰りたさ」を分かち合えない事実に打ちのめされながら粛々と行動する。
やがて○○さんのいない昼休みが来る。数週間ぶりに自席で一人お弁当を食べるといつもより味がしない。
喋り相手がいないとかなり速く食べ終わる。何故か以前よりも速くなっていた。以前はそうしていたように残りの昼休みで街へ繰り出す。

○○さんといた間出来ずにいたことをやろうと思いまずは写真屋へ。少し前に撮り終わっていたフィルムのプリントを頼む。
それから銀行Aに行ってお金を下ろし銀行Bに輸送しようとしたが銀行Bのカードがない。置いてきただけだろうかと不安に苛まれつつ大量の現金を所持して散歩を続ける。
鉄分の入ったグミをいつも買っていたコンビニでストックを買い足す。美味しそうなドリンクも買った。

これだけ新鮮に街を味わえるのなら少しの間街と距離を置けて良かったのかもしれない。
昼間だから汗ばんできたもののやはり涼しい。この街も私をきちんと記憶していた、ゆえに私は孤独ではなかった。

午後はかなり忙しく行動した。色々と上手くいかなくて面倒だった。いつもながら全部辞めてやりたくなる。
○○さんは今頃暇を持て余しているだろうかとふとした瞬間に思う。彼女は毎日のように暇だとぼやいていた。出向先だったこの場所が暇だっただけか。

たまにサボり場でサボってみても彼女は来ない。昨日までは私がいるのを察して来てくれて、何度この場所で談合したか分からない。そもそも彼女が手を洗いながら「まだ木曜日ですね」と話しかけてくれたのが彼女への親しみの始まりだった。
これからは一人でサボるしかない。

そんな今日でも定刻の鐘は変わらず私を迎えに来た。○○さんの席へ迎えに行くこともなく数週間ぶりに一人で帰る。泣きそうだった。
とはいえ写真屋にダッシュするのは一人だからこそ出来る芸当だった。プリントしてもらった自分の写真はきっと今夜の自分を励ます。

もう○○さんに合わせず今まで通りの位置から電車に乗れるし日記を書ける時間も増えた。それは私にとって良いことだからまだ気が救われる。あの場所での彼女の不在は本当に堪えたけれど。
彼女も今日の私と大体同じことを思ってくれていたら良いしきっと思っているだろう。

帰宅、手洗い、即銀行Bのカードを確認。
持って帰ったお金は銀行Bに預けるより部屋の各所に散らしてみようかと思う。
夕飯は『戦国炒飯TV』を観ながらシチュー。もう第五回なのに新コーナーがどんどん始まるから凄い。

北宇治高校の合奏を聴きながら皿洗い。
『立華』では北宇治高校に対する他校の声を読めるから面白い。立華もいつの日かアニメ化したら嬉しいとは思うがマーチング演技をアニメで描く難易度は座奏の比ではないだろうしどうか。実写にはかなり向いている気がする・・・。

ゆっくり温泉(風呂の隠語)に入って写真をゆっくり見て寝たい。

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