7月17日(金) 世界が晴れて

速攻速帰制度希望の日。3回目。
定時を逸脱した速攻速帰のための早起きは全くもって苦でないのが不思議だ。

早い電車はなんとなく趣が変わって良い。電子書籍を聴いていたら眠くなりMaison book girl『Fiction』を読む。逆。ではないとも言える。
外は曇天。きっと小雨。言葉の雨の中眠る。

街へ降りて小雨に傘を差しながら聴く『言選り』がとても良かった。AIが作詞した歌。

音が開く音 夢の鍵 切れた街、終わらない景色
朝の夜は消えてゆくの 通り雨は君の終わり
♪Maison book girl『言選り』

人もまばらな朝の夜(会社の隠語)に着き業務を始めるフリをした。来たは良いがやることはない。
いやあった。昨日の業務中に書いた『電脳コイル』の感想文を校正し、『電脳コイル』をおススメしてくだすった社員氏に送り付けた。割とすぐ返事がありお互い感動し合った。

空間に人の音や気配が少ないだけでどうしてこんなに心が凪ぐのだろう。小さな島国では人口密度ばかりが人を苦しめる。
監視の目もなければ電話も掛かって来ない。大して何もしなくても時間が金に変わっていく。素晴らしい。

やがて定時の鐘が鳴りまどろみから覚める。急いで有象無象の検温をして回る。いつまでこの苦しみが続くのか。

引き続き大してやることもなく昼。弁当。街。
香りものの店を新しく発掘した。全く接客をして来ないからテスター嗅ぎ放題で嬉しすぎた。
商品も良くて価格も比較的安く、まさに探し求めていた運命の店だった。私がこの街を去る日までずっと頼りにしてしまうだろう。
今日はルームスプレーを購入。

凄く良い気持ちで午後に突入。
やることがないというか偉い人へ依頼したことが滞っているからやることを進められないのだった。

仕方なくサボり場(トイレ)でサボっているとだるい仲間氏が登場しお互い草が生えたように笑う。愚痴を聞く。楽しい。
彼女とのサボり場談合が唯一の癒しすぎて「唯一の癒しです」と言ってしまう。ウケていた。

自席に戻る。自席で暇な時はブラウザのトップページに出てくるどうでもいいニュースを読むに限る。
藤井棋聖の粋な写真を見ながら将棋をやってみるかと考えていたところ新入社員氏に話しかけられ動揺する。すんでのところで藤井棋聖を閉じた。

それからうろうろ歩き回っていると朝『電脳コイル』の感想を送った社員氏がおり話しかける。今日からDVDを見直すそう。アニメオタクではない人が真剣に一つの作品を愛好する様は悔しいほど眩しい。

その後もひたすら定時へのカウントダウンをしていると推している○○さんが!登場!動揺!なんと!私に用だった!喋った!最高!
推しの光で定時までイキイキと暮らした!

最速の電車に乗って本当の世界へ還る始まりの刻。車窓を眺めながら日記をしたためる。
朝のことを書いていたら再び『言選り』を聴きたくなり聴くと再び良かった。しばし日記から目を外して外の緑を眺める。
なんだこの幸福は。PMSが晴れて生理痛も和らいだ日、これが本調子の私なのか、これは無敵モードでしかないのか。とにかく私は今幸せだ。

引き続きブクガの『Fiction』を聴きながら図書館へ。単語をブクガ的かそうでないかに分けるとしたら「図書館」はブクガ的だ。「曇り空」はもちろんブクガ的。「本」は言わずもがな。
川崎昌平『無意味のススメ』と和田文緒『アロマテラピーの教科書』を引き取る。
いつものように土曜日へ向かって意気揚々とスキップで帰ることはしかし出来なかった。明日は土曜日ではなくて。

夕飯はカレー。まさに海軍。ズッキーニ美味い。
テレビのニュースが明日は7月18日だと告げる。胸が詰まる。
どう、していいか分からなくなる。いつまでも分からない。悲しみと一口に名指せる感情ではなくて、分からない何かがずっと渦巻いている。
明日が来るのが無性に怖い。

ひとまず今夜はルームスプレーを撒いて粛々と読書をして寝る。

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