7月18日(土) 無意味を愛す

昨夜は眠れなかった、一時期大変お世話になっていたアイドルグループの一人が新しい道を選んでいたと知った、大好きだった四人はとうとう二人になった、一番愛したアルバムを聴いた、あの頃私を救ってくれた歌たちはあの頃の色んな情景をそのまま保存していて、今の私にもまた新しい響き方で寄り添ってくれた、その一つ一つの言葉を紡いできたリーダーと、私に勇気をくれた向日葵のような推しは二人でまた歩み始めた、彼らはどうか表現を手放さないで欲しい、また良いメンバーに巡り合ってアイドルを楽しんで欲しい、幸せだと思える朝を、昼を、夜を、出来るだけ沢山過ごして欲しい、そしていつか会える日が来たら会いに行きたい、私が黙って彼らから離れてしまった後ろめたさや進捗のない人生への恥なんてどうでもいいから会って、一言でもあの日々に貰った光へのお返しを贈りたい。

それで今日は寝不足で目覚めた。二度寝も諦めた。昨日途中まで読んでいた川崎昌平『無意味のススメ』を読み切る。

誰もが意味を追求してあくせく行動し(勉強し、労働し、家庭を維持し、貯蓄をし、社会に貢献し)た結果が、今の日本である
川崎昌平『無意味のススメ <意味>に疲れたら<無意味>で休もう』p.42

最近の自分がどれだけ意味の洪水に心身を晒し続けてきたか自覚した。
それでも私は適当な駅で散歩したり、ダラダラ休学してから中退したり、現代美術ばかり観に行ったり、詩歌を作って遊んだり、大量に借りた図書館の本を読まずに返したり、ルービックキューブを崩して揃えてを延々と繰り返したり、そういう無意味の蓄積を過去にちゃんとしてきたから割と健康に生きていられるのだと思う。今改めて無意味を愛し無意味に愛されよう。人間自体無意味の塊なんだから。

無意味に蜂蜜をかけたカレーを食し、無意味に朝の時間を貪る。
以前読んだ新井ワタルさんのデジタル写真集を突然見返してとても良いなと思う。意味を抽出しようとして撮っていない感じが今の気分にそぐう。
リビングで無意味な写真を撮って遊んだ。

そして意味を込めてアニメ『響け!ユーフォニアム』1話を観た。昔3話くらいまで一旦観てキャラの感じがなんか合わず止めてしまった記憶があるが多少は成長した今の自分なら観られるだろうと踏んだ。ここ二ヶ月ほど楽器演奏にも興味が湧いているし。
開始一秒、やっぱり凄い。
世界に息吹く美しさを濃縮して映像に閉じ込める、その一瞬一瞬の密度の高さよ。桜の花びら一枚一枚に掻き立てられる鮮やかな情動よ。
奇跡のような領域に到達した集団職人芸に畏怖を覚える。そしてやり切れなかった。
観終わると10時半だった。しばらく黙祷。

昼はピザトーストとカレー。また無意味に時間を貪る。
閉塞を破るため無意味に外へ出ることにした。手元の意味マシンは置き去りにして行く。

今図書館で借りている『アロマテラピーの教科書』を本屋で立ち読みするという無意味をやった。他のアロマ本もしっかり読んでいく。
そしてとりあえず図書館で借りた『アロマテラピーの教科書』を家で読もうという結論を出す。まさに無意味な時間だった。

色々な店を無意味にハシゴしていく。
街も店も意味の洪水だからうんざりしてきて自然エリアへ移動。本物の散歩を始める。
花を無意味に撮り続ける人として通行人に眺められる。アロマブームの影響か植物ばかりに目が行く。

飲み物を持たずに歩いて来たからそろそろ足取りが危うくなってくるがどうにかコンビニを目指して歩む。しかしいざ辿り着いたコンビニの飲み物がどれも気分にそぐわず店を出てしまう。
あそこにある自販機まで歩こう、あそこには必ずそぐう飲み物がある、と無意味にガッツを発揮した結果実際にそぐうレモンウォーターがあってグイグイ飲んだ。無意味の勝利だ。

スーパーに寄りそのうち使えるであろう製菓材料を無意味に買い込んで帰宅。
『アロマテラピーの教科書』を面白く読むうちに眠っていた。無意味の象徴・昼寝。

私がすっかり意味と無縁に過ごしていた午後のうちに衝撃的な訃報があったことを夕飯時親に知らされた。
報道から何時間か経ったためか殆ど動揺せず食事を進める親と、堪え切れない動揺を抑えてなんとか食べていく自分との間に深い断絶を感じてしまった。

もうどうしていいか分からない。
ただ人の死に意味を付与することだけは絶対にしたくない。それは本人だけの権利だ。生もしかり。
ただただ私は彼に貰った私の思い出や、私がこれから回避していく死について、いや、もう何も分からん。

日記を書く気も起きず呆然と過ごす。
TBS「音楽の日」にSixTONESとSnow Manが登場した音がしたからリビングへ行ってそれは観る。
SixTONES、青いスーツのめちゃくちゃ格好良いスタイリングで各人最高の色気を放っていた。新曲『NAVIGATOR』を自分達のものにしてきている印象。撮り方も素晴らしい。
9人のSnow Man、おかえり。久々のパフォーマンスは物凄く進化していた。やはり岩本くんがいると格が上がる。佐久間大介さんが衣装の後ろにつけたヒラヒラを舞わせて踊る姿がとても妖艶でハッとした。明らかに、元気が出た。

人間の存在は本当に無意味だろうか。
生きる時間は本当に無意味だろうか。

人が歌うことは無意味だろうか。
人を推すことは無意味だろうか。

無意味だ。無意味だから美しい。
その美を見つめて初めて意味が見えてくる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?