7月9日(木) 異世界へ

スッキリと起床。昨夜アロマを嗅ぎながら寝たらよく入眠できた。目覚まし用に柑橘系の香りもあると良いかもしれない。
昨夜始まったアニメ『Re:ゼロから始まる異世界生活 2nd season』を早速観る。最初からハードモードで辛い。

今日出かけたら大地震か大鬱で帰って来られなくなるのではないかと予感しつつも仕方なく身体を引きずり出し駅で定期券を継続。
迷ったけれど現金があるうちに、と3ヶ月定期を買うと10月16日までと表示された。9月で労働を辞退したいという願いが閉ざされた気がして苦しくなる。
リゼロの余韻もあり重い気持ちで電車に乗る。Syrup16gのアルバム『delayed』を聴きながら寝落ちていた。

寝過ごしそうになったがどうにか電車を乗り換え、Syrup16gの歌を聴きながらぼんやり車窓を見ていると今日はこのまま遠くまで行ってしまうべきだと強く思われた。
決意を後押しするように車両間のドアを開けてどんどん前へ進んでいく。前へ前へ。そして先頭車両の空席に座る。
間も無く電車は労働の最寄駅に着く。自分が降りてしまわないように勇気を言葉にする。体調不良のため様子を見てどうの。送信。

電車がいつもの駅を発つ。
私はまだちゃんと私だったのだ。自分の意志で自分を動かすことが出来るのだ。それだけのことに涙が出そうだった。
ちょうどSyrup16gのアルバムが終わったため『ルパンレンジャーVSパトレンジャー』を大音量で耳に流す。最高の幕開けだ。

興奮を日記に打ち込みながら車窓風景を目に焼き付ける。忙しい!
見たことのない街、緑、ビル、川、街灯の鳥。知らない世界がどこまでも続いていく。
冷風が寒いけれどそれも許せた。ずっと夢見ていたことの只中にいるのだから。私は運命を乗り換えたのだ。
いつかこんなシチュエーションで聴いてみたかったラストアイドルの『青春トレイン』を聴くと完全に今の私のテーマソングとして響いた。

終点まで行ってみたい気持ちもあったが綺麗な名前の駅で途中下車してみる。いや最初に駅名案内を見てからここを目指していたのだ。とても良い名前だった。
降り立つと典型的な日本の何もない系の駅前だったけれど、初めて来た遠い場所は異世界のように新鮮で心が躍る。
異世界の民たちの暮らしを見るべく異世界スーパーに寄ると異世界の品物が並んでいた。そこに溢れるのが日本語であろうと、静かに営まれる知らない人達の知らない生活には異国情緒が漂う。

たったこれだけの移動でここまで世界が変わるのだと思い知って少し気が晴れる。
続いて異世界薬局を物色すると購入候補だったシャンプーが半額で売られており思わず購入。貴重な異世界レシートを貰う。元の世界に持ち帰ったら消えてしまったりしないだろうか。

しかしそれ以上見どころがなかった。ここでアドリブ散歩を敢行する気合はなく駅へ引き返す。
これからどうするか。終点まで進むか、午後だけ労働するか。
なんだかどちらも気が乗らない。自分の本当の望みが分からない。線路を見下ろせる窓辺のベンチで持参したフレンチトースト弁当を食べながらモヤモヤと悩み続ける。学生時代のような心許なさを感じた。

労働スケジュール的には今日行かないと明日が非常に苦しくなりそうだった。私の代わりに今日の雑事をさせているのも気まずい。
どうして気まずさに囚われてしまうのだろう。期待を裏切って好感度を下げ続けた方が辞めやすくなるのに。

悩みに悩んだ末今日は戻ることを選んだ。ここに来られただけでかなり気持ちは充填された。
一日中ではなく午前中だけ休むサボタージュ2.0を採り入れることで今後のサボりの幅も広がるだろう。
電車を待ちながらカフェイン入りのミルクティーを買ってしまう。どうにでもなれ。

来た道を引き返す。今度は逆側の車窓を見る。同じ川を過ぎる。PassCodeを聴く。
往路はもっと長旅のようだったのに復路はあっという間だった。ロマンがないからか。

旧世界(会社の隠語)の駅に着きまずはアロマの店を見に行く。
柑橘系も欲しかったが今日はラベンダー系のマッサージオイルを購入。商品を手渡される際「早速今夜からこれで癒されてくださいね」的なナイスなことを言われナイスな気分になる。

ショッピングを終えようやく旧世界へ潜り込む。異世界からの旧世界は別世界のようで良い。
来ると思われていなかったのか少し明るい驚き方で迎えられる。サボタージュ2.0の実力を舐めるな。

あの世界は確実にあった。私は確実にあそこにいた。今となっては非現実のようだけれど確かに経た出来事だ。買ったシャンプーとレシートも多分まだ鞄の中にある。
そう思うといつもとは全然心持ちが違った。午前中の自分とあの街が遠くで励ましてくれているようだ。

そして旧世界の夜が訪れる。一日が二日間に拡張されたような妙な満足感が残りこれはこれで面白い。流石サボタージュ2.0。
大地震も大鬱も回避して家へ帰るとエビシューマイが待っていた。
異世界土産のシャンプーで髪を清め、アロマオイルの香りで新世界の眠りを味わおう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?