7月15日(水) 簡易化

アラームの50分後にようやく起き上がった。尋常でない眠気が続く。熱はなかった。
家を出るリミット10分前までベッドにすがり付く。しかし驚くことに10分後、駅へ向かっていた。

Kindleで衝動買いした山下泰平『簡易生活のすすめ』を読む。明治時代に西欧の新文化を取り入れようと試行錯誤した結果の一つとして「簡易生活」が流行ったらしい。
要は最小の労力で生活を回すために色々やってみる精神だ。

序盤はとりあえず明治時代の様々なお話だった。今とは質の違う生きづらさがあったのだと伝わってくる。
朝食の支度を簡易化しようにもまともな味のパンが手に入らない時代。上京してアルバイトを、といっても新聞配達か牛乳配達しか選択肢のない時代。

社会保障がない代わりに困った人を助ける気概が皆にあり、新聞のコーナーを通して個人への寄付が成立していたという話が良かった。
貧困の質という意味では現代より根源的な迫力を感じるが現代の方が断然「暗い」だろう。

今日は簡易生活の実践として日記を簡易化してみよう。例えばフォーマットを作って穴埋めするだけというのはどうだろう。
朝は した。
昼は した。
夜は した。

朝は電車を降りて簡易化されない組織(日本企業の隠語)へ行き、簡易化されない仕事に追われて泣きそうになった。

昼はお弁当を食べながら実際に少し泣いてしまったが、これを食べ終わったら外へ出てもう二度と帰って来なくても良いと不意に気付いた。簡易的辞職だ。
かなり本気でそうするつもりになり、心の中で先輩に別れを告げて出て行った。
街を歩きながらずっと泣きたかった。雨が降ってきた。傘を差さなかった。眼鏡を外した。コンビニに行った。何も買わなかった。裏路地を進んだ。駅へ行こうと思った。
自分がそれを実行すると本気で予感したのは初めてのことだった。それを実行した場合今日の日記をどう書くか迷った。気が狂いそうだった。PMSとか鬱とかそういう次元ではなくもう精神が資本主義に侵されて狂っていた。
それでも最後の最後に鞄の中のアロマスティックを取り出した。歩きながら手首に塗り付けマスクに擦り付けた。その香りを嗅いだ瞬間、嘘のように脳がスーーーーーッっと鎮まった。何なんだ。どういう仕組みなのだろう。
またコンビニへ行って鉄分ジュースとGABAチョコレートを買い、昼休み時間内に元のサヤへ戻った。

夜は少し落ち着いて帰り、ご飯を食べて日記を書いた。日記を書くのもままならないほどイライラしていた。お風呂で泣いたら脳がスーーーーーッと鎮まった。何なんだ。どういう仕組みなのだろう。
アロマスプレーを大量に撒いてアロマオイルでマッサージして寝よう。アロマによる脳の簡易化だ。

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