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25歳最後の日

22歳最後の日、大好きだった人と付き合った。
私のこれまでの人生で、こんなに追い求めた人はいなかったし、確実に結婚すると思ってた。
25歳最後の日、私はシンガポールで1人でこれを書いてる。自分でもちょっとキモいなと思うけど、せめて思い出に残させて。

彼のすべてが好きだった。
顔、スタイル、私の話を聞いていないようで聞いているところ、仕事のことを心配してくれること、いつも応援してくれてたこと。私を喜ばせようと色んなところに連れて行ってくれたこと。しょうもない話を永遠できたこと。女友達と一緒にいるぐらい楽だったこと。重い荷物を持ってくれたこと。

全部「してくれた」ことであって、「してくれなかったこと」もたくさんあった。
好きとは滅多に言ってくれなかったし、LINEは1日1,2回だし、愛情表現が乏しいし、将来の絵が見えないし、真剣な話し合いができないし、喧嘩にもならない。
心が広いと言うこともできるけど、裏を返せば、誰にも心の奥底にある感情は伝えない。言ってどうなる?といつも諦めている人だった。

3年間、いつも私は悩んでたし苦しんでた。絶対に離れないという強い気持ちが邪魔をして、冷静な判断が何一つできなかった。
セックスレスにはじまり、住んでくれないこと、将来の話が進まないこと、マイルばっか貯めたり、エピソードは尽きない。
でも、私は彼のことを嫌いになれなかった。

嫌いになれたら、浮気でもされて大嫌いになれたら、楽なのにと、いつのまにか数年前と同じことを考えてた。
彼はどうだっただろうか。私が価値観合わないからもう無理だねと言い出すのを、待っていたんじゃないだろうか。

一年ぐらい前だって、きっと彼は別れようとしてた。私はそれでも一緒に生きられる道を探してたけど、彼は違った。あの時に別れられていたら、こんなことにはなっていなかったかな?

不思議と、涙は出ない。
日本に帰って誰かに会ったらきっと号泣してしまうけど、また私の人生に最強おもしろエピソードが追加されただけの話だなあ、と思ったりもする。
誕生日旅行でシンガポールまで来て、フラれて、あと1日半一緒にいなきゃいけなくて、地獄絵図。
でも、これはこれでドラマみたいでいいかな。どんな本を読んでも、20代のうちに大失恋しておくのが大事だってみんな口を揃えて言ってるし。

涙が出ないのはきっと、悲しみより安堵が強いからだと思う。これでやっと彼から離れられる。私がフられるという、一番後悔しない形で。
彼に依存していたことは自分が一番わかっていたし、たくさん無理して我慢してることも気付いてた。
それでも自分を大切にせずに、彼と一緒にいることだけを優先してきた自分の責任。

自分らしくいられない、自分のことが嫌いになるような恋愛はもうしないと誓ったはずだったけど、なかなか難しいもので。

どうしてシンガポールを選んだのか、ずっとわからなかった。確かに私たちのシステムとして自分が行きたいところで良かったはずだけど、彼の思考回路が知りたかった。
彼にそう伝えたら、別に意味はないとはっきり答えた。なぜとか、どういう理由でとか、そんなのなぜ聞くの?連れてってくれて嬉しい、それでいいじゃんと。
私が海外旅行に行きたいと思っていないことは、彼が一番わかっていたはずだった。それでも彼がわざわざここを選んだってことは、それなりに理由や、イベントがあるんじゃないかって多少なりとも期待した。

思いやりがない、なんて簡単な言葉を使ってしまうと安易だけれど、ずっと彼に対して感じていたことだった。
そして彼も私にたくさんの不満を持ってた。それを発散できる場を用意したつもりだったけど、伝わっていなかった。

私たちは楽しい上部だけの会話をし続けて、話し合わなくてはいけない肝心なことに踏み込まずにいた。お互い、この一線を越えたら終わるってわかってたから。

今こうしていても、彼が迎えに来てくれるんじゃないかって思ってしまう。そんなわけ、ないのに。

結局、価値観の違いというよくある理由で別れを決められて、最後まで彼は謝らなかった。謝らなかったし、本当に好きだったとも伝えてくれなかった。

それがすべてなんだろうな、と思う。

本当に好きだったら、どんな手を使ってでも私を説得したはずだし、話し合おうとしたと思う。それをしなかったなら、それまでの関係性だったというだけ。

価値観が合う人なんて、この世に存在しないのに、なんで私たちはこうやって傷つけ合うのか。

あれから3年。
長かった。
絶望と希望を繰り返して、対話することを恐れて、自分を大切にせずに生きてきた。

でも、出会って良かったし、付き合ってよかった。たくさん笑った。彼のことを嫌いになっても、これまでの思い出は大切にしたい。

今こそ、大好きな「花束みたいな恋をした」を観て爆泣きしたいのに、なぜかシンガポールにいるとNetflixに出てこなくて詰み。早く日本帰りてえ。

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