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生きていく、ということ

父の願いどおり自宅で看取ることができたのは、私たちにとっても本当に幸せなことでした。
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病院、訪問医、訪問看護師、ヘルパー、薬剤師、ケアマネ…と、たくさんの方の力が、それを叶えてくれました。
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仕事で福祉と医療にかかわったことがあっても、当たり前ながら利用する側になってみると見え方が異なり…
自分ができていなかったことに気が付いたり、当たり前のようにしていたことが、こんなにもうれしいんだなぁとじーんとしたり。
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みなさん、患者(利用者)である父だけでなく、家族である私たちへの気遣いが本当に細やかであたたかく、お忙しい中、通夜や葬儀にもわざわざお参りくださった。
父が最後に、感謝に包まれて逝ったのは、ケアにかかわってくださった方たちの、業務を超えた「愛」のおかげだと心から感謝しています。
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そして父も、身体はさぞしんどかったと思うのですが、自分の意志で医療用麻薬を使わず、にもかかわらずケアしてくださる方たちに最後まで礼節をもって、ユーモアで接していました。
父の暴力が大人になっても怖かった私からすると、とても信じがたい姿でしたが、きっと彼の中に暴力をふるわざるをえなかった恐れがあったのだろうと思います。
肉体にとって限界の痛みや苦しみがある中で出てきたあのやさしい姿が、本当の父だったのだろうと。
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最後にそんな父に出会えたことが本当に愛しく、うれしいのです。
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時間がすこしづつたって、父を想い、予想もしなかった心の動きに気が付きます。
それが生きていくことなんだな、と。

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