日本三大秘境・椎葉村ではじまった、村民が作る「100年後に必要な図書館」
日本三大秘境・椎葉村
椎葉村開発センターで開催された「生涯学習フェスティバル」、人口2400人の村でこれほど人が集まることは驚きです。
図書館と地域をむすぶ協議会・代表 太田剛さんの「椎葉村の未来を拓く図書館づくりとは」の講演と、村民や行政担当者を対象にしたワークショップ「10年、100年後の椎葉村にむけて」でした。
太田さんは高知県の「雲の上の図書館」、栃木県の「ふみの森もてぎ」、北海道の「幕別町図書館」など、市民と作る図書館のコーディネートをされています。
全国の図書館で老朽化や統合がすすみ建て替えのタイミングがきている。とはいえ建物をつくって、引越業者に丸投げして、相見積とって段ボール代値切って…それで予算は助かるかもしれない、でも図書館は誰のものだろう?
本当にそれが市民のためになっているのだろうか?
「少しやり方を変えるだけで、すごくおもしろいことができるはず」
太田さんいわく、たとえば現状のシステムでは、図書館が本を発注するのは専門の業者しか使われてないため、自治体の数千万、数百万のお金が東京の業者に吸い取られている。また貸し出すために書籍にカバーをかける、それも業者に発注とセットでなくてはならない。地元の本屋をはじめとする、地元との関係は切れている。
太田さんがはじめて手掛けられた幕別町図書館は、既存のシステムを変え(勇気のいること!)地元の本屋さんから本を購入し、カバーをかける作業をB型福祉施設に発注をして、雇用とお金の循環を生み出し、さらにこれを学校の図書室にもひろげました。図書館のような公共の社会の役に立っていることは、働く人たちにとっても誇りをもてること。だんだんと働くひとたちが変わっていき、事業は拡大し、また経験をもとに一般就労をされる利用者も出てきた。
図書館が小さな地域の経済循環を起こしながら、人材育成もできるソーシャルビジネスであり、イノベーションの場になるのだと。
また太田さんが手がけられる図書館は、ワークショップを実施して選書に市民がかかわったり、バケツリレー形式で自分たちで本の引っ越しをしたり、つまり「私たちの図書館」のためのサポーター組織を育てておられます。
たとえば幕別町図書館では、サポーターが予防医療や医療負担の削減といった自治体の抱える問題に図書館が積極的に関わっていっているのです。
図書館にストレス測定器(血圧測定など)を置き来館者に測定してもらい、数値が高かった場合にはストレスケアのために用意している500 冊ほどの本の中から、医療系、癒しなどの本を司書がレファレンスする。本を 2 週間後に返しにくるため、そこでまた測定すれば,定期的に継続して測れる。
大切なのは測定時のサポーターとの会話のなかで、健康以外の貧困やいじめ、DVといった多様な課題が浮き上がってくること。それらを察知して行政の窓口につなげるソーシャルワーカー的な役割をになう、図書館がまちづくりの中心になるすばらしい取り組み。
椎葉村で2020年7月に完成する図書館「カテリエ」は、地元の言葉で「助け合い」を意味するかてーり、という言葉から名付けられれたそうです。同じ敷地の中に保育園があり、キッズスペースやキッチンスタジオ、会議室など、多様な世代の居場所となれる種がたくさん埋められています。
小さな自治体だからできる持続可能なまちづくり。かかわるすべての方を心より尊敬し、そして自分たちの図書館を持てることをうらやましく思っています!
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