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「泣き女」第一話

第一話
大学のカフェテラスで呑気に皆で雑談している時に、大学のツレである笑い男こと、一寸木悠太(ますき ゆうた)が「なあ、泣き女って知ってる?」と、奴特有のハニカミながら馬鹿にする態度に。皆の雰囲気がピシッと固まる音がした。ほんと、氷点下?ここは、冷凍庫ですかと

その話題に「それより、須崎(すざき)さんミスコンでるってよー」と、上手く切り返した僕グッジョブ。一寸木は須崎さんのストーカーと言っていいくらい須崎さんの話題には目がない
「え?まーじー!」
「おれ、応援団長しよっかな?
それより、親衛隊かなー」には、苦笑が漏れる。(ま、いいんじゃないかな。一寸木はすこし、ヤンチャだが)

泣き女こと、正田佐和子のことに、みんな、敏感なんだ。
あれは、春のすこし、小雨降る入学式だった。僕は予備校時代の知り合いと入学式の立て看板の前でアイドル発祥の動脈ピースとか、ダブルピースして写真を撮ってて、あ、わたしもー!俺もーと、同じ新入生達と初めて話す。TwitterやInstagramで、既に友達や知り合いになってた子も居て。和気あいあいと、してた。
その時、正田佐和子。泣き女は大きな桜の木の下ではなく。すこし、小ぶりでド派手などピンクの陽光桜の前で、、滂沱と涙を流していた。
あ、あれは、インパクト強かった
しかも、泣き女の隣には173cmの奇跡こと、色々な人気雑誌でモデルもこなす才色兼備の須崎星螺(すざき せいら)が、ハンカチを持って立っているし。須崎さんに話しかけたい男子は泣き女に、余計ヤキモキするし。女の子も須崎さんと、話したそうにしてるのに。泣き女、正田佐和子は、須崎さんに目向きもせず。その割に、ティッシュとか、ハンカチで須崎さんはツレの世話を事細かに妬いていて、僕はそれを入学式が始まる瞬間までずっと見ていた。あー、あれが、僕の初恋なのかも。もちろん一寸木とは違って、泣き女、正田佐和子への長いような短いような、片思いの。え?そこは須崎星螺だって?僕だって、顔面偏差値普通のレベルなんだよ。あんなモデル美女、一寸木ぐらいアホなやつしか、狙わんて。
はー、正田佐和子、僕のために泣いてくんないかな。あとは、その泣き顔、ずっと拝ませてくれないかな。
須崎さんと、泣き女が泣き止んだあと。メイクの直し終わっわた二人に。「大丈夫だった?」と、メントスあげたら。
二人はありがとうーと言いつつ、姫と騎士よろしく。須崎さんには、すこし、睨まれた
「あ、泣いてたこと?」
「うん、まあ」
「あーね、やんなっちゃう」
ん?「あのね、ただ、桜が綺麗で」
「うん」
「それで、ソメイヨシノや、ほかの桜もあるここ受けたんだけど」
ん?
「あのね、私が見上げてた。あの派手な桜」
「だね、派手な桜」
「あれ、たしか。寒緋桜(カンヒザクラ)だったかな」
「うん」
「それと、天城吉野(アマギヨシノ)って、桜の木あるのね」
「あ、ごめん、退屈?」(やべぇ、見蕩れてた)
「いや、そんな事ない。さくら、すきっわす」
「すきっわす?」
「えーと」二人、ここで笑い出す。すこし、ハンカチを握る手が僕の肩に触れる。あ、すこし、手が冷たい。でも、やわらけーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!

「えっと、何処まで話したっけ?寒緋桜と天城吉野かな」
「その2つが、最終的に交配されたんだけど」
あと、ね
「寒緋桜は台湾とも日本とも言われてて」
「わかってないの?もしかして」
「うん、そうなの」
「あとね、この桜は戦争中に教員だった愛媛の先生が25年かけて作った陽光って品種なの」
「え、なんで?学校の先生が?」
「うん、沢山の教え子を亡くしてて。」
「あー、教え子を弔うためかー」
「そう!よくわかるね!!さすが!」
「え、そんなこともありますが?」と、僕がスネ夫の真似すると、正田さんは「もう!」と、軽く手をはたく真似をする。なんか、今日距離近い?

「うん、それでね。その陽光を作った高岡正明さんのこととか。わたし、最後まで第一志望狙って猛勉強したこととか。」
うん、わかるわかる。ここは、第一志望じゃないよねー。僕も
「色々ごっちゃになってさ」「うん」
「それで、つい泣いちゃったの」へー。棒
ここら辺の思考回路が泣き女の、泣き女足る所以だし。正田さんは、多くを語らない
僕なら感極まってとか、沸き立つ英霊への慰撫とか、そんな太宰や芥川の、かび臭い文体が浮かぶのに

「ねー?」と、気がつくと教室で2人きりで。ドキドキ。須崎星螺は?あの、騎士席を外したの?ま?

「もう、坂東くん、聞いてる?」と、彼女は僕の顔を覗きこんでいた。150cmの正田さんが、場所的に後ろの高い席からとは言え、上から覗きこむ。やば。キュン死に。。さらさらした髪の毛が揺れる。シャンプーのフローラル系の香りだろうか。とても泣き女に似合の香りが僕の鼻腔にふわふわと香り。とてもいい気持ちとドキドキする。辛い。しんどっ!

「そろそろ星螺来るかなー?」
「どしたの?」
「今日、星螺の従弟が星螺に会いにきてて」
「めっちゃイケメンでビビるよ。なんせ、オーストリアとの、クォーター」
「へ?」
「あれ、知らなかったっけ?」
「星螺、おじいちゃんがオーストリアの人なの」何それ初耳~!一寸木がザワつくな。笑笑「で、星螺は黒髪すこし、緑目で。」
へー
「従兄弟くん達は隔世遺伝で、薄い茶髪に金色の眼なの」ほぼ、それ外国人
「英語と中国語と、ドイツ語とか、色々堪能だよ。星螺も従兄弟も」へー。それが、なぜ。泣き女の騎士なんて、須崎星螺はやってるんやろ。「あ、私はね。生まれた産院からの付き合いで。札幌の諸田産婦人科」それも、初耳~キタ━(゚∀゚)━!
「で、私と星螺は誕生日1日違いなの。」
「それは、長い付き合いで。」
「誕生日聞いてもいい?」ヨッシャ、グッジョブ僕!「うん、いいよー私が12月25日のクリスマス。星螺が12月24日のクリスマスイブ」すっごい偶然!と笑い出したくなる。「僕の誕生日も聞いてくれる?」「いいよー。坂東くんは誕生日いつなの?」「なんと、平成天皇と同じ日!」えー!!
えー!!は、俺だよ。
「そう、12月23日」毎年休みの日になるのが嬉しくもあり、寂しかったあの頃に今日でサヨナラだ。「えー!」うそうそうそ!
と、顔を赤くして。ついでに、右目から涙がボロボロ。左目からも涙ボロボロ。
「え、うそ、ごめーぇええええん」ひっく。ひっく。うぇっく。くしゅん。えぐっ。
泣き女は泣き出してしまった。
そこに「あんた、何やってるの?」と、怖い顔の須崎星螺と、須崎星螺を軽く超える190cm越えの線の細いイケメンが。あ、たしかに。段違い
「え、せーらー。ち、ちがうの、」
「こら、お前。佐和に、なにした!」と、髪の毛をイライラとかきあげると須崎星螺は怖い顔で睨め付ける。168cmの僕では、、
と思って、外国人。従弟?に、目をやると。ティッシュや、ハンカチをバッグから取り出し。え、お前もか?俺もこれ、やるのかな。
と、思う間に。従弟は頭をぽんぽんとすると、正田さんを泣き止ませた。
従兄弟、何者やねん

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