見出し画像

「泣き女」第三話


第三話
毎日、LINEでおはようと、おやすみから始めた。時には、、正田さんと寝落ち通話したり。そして、僕も時々佐和と、呼べる感じの間柄になった、佐和の久しぶりのリアル校舎。
「哲学の政元は、絶対カツラ」とか、やけにメイクの濃いオバチャン先生が居るとか、保健室にたまたま行ったら居心地よくて、よく、ふて寝してるとか。佐和も、ある程度はこの大学について知ってるけど。
ミニのスエード素材のスカートと、黄色の柔らかなカーディガンから、でる手はすこし、白くなるくらい、固く握られていた
「あ、多朗くん!」
と、僕を呼ぶ声がする。
で、佐和かと思ったら須崎星螺だった。
バス停の端のほうで、なにやら、泣いている



ん?
今日はしゃっくりが激しい。肩もとても落ちて、一身に何かを触っている。
(あ、猫だ)
黒く、血が固まったものだろう。元は茶色とか、そんな色合いだった猫と、子猫が3匹、ミャーミャー泣いている。
「せーらさん、どうしたの?」と、あの、1ヶ月のLINEの間に。須崎星螺とも、星螺さん、多朗くん、と、呼び合う仲になっている。なんたって、三人とも誕生日近いしね
えっ、えぐっ、うっ、と、泣く、泣き女、正田佐和子の手の中には、固くなった猫だったものと、周りをミャーミャー泣く、黒のハチワレ、真っ黒、ぐれーの3匹。

「どうしたの?」と、小さい声を出すと、
「猫がね、道を渡ってたの」「うん、、」
「それで、運転手さんも気をつけてたみたいなんだけど、子猫には目が行ってなくて」うん
「それで、ハチワレ轢きそうになったら、」うん、「お母さん猫だと思う。ハチワレ庇ってこんな事に」うん、

佐和子、前の席好きで。よく、乗ってて。私も佐和の前の席、に立ってて。
あー、
「モロに見てしまってさ」
「うん、、」
「運転手さんも、いつものイケおじで」
「あー、佐々木のじいさん」
「すごく、申し訳なさそうにしてたよ」
うん、、
「それで、ついね」
「うん、」
「正田さん、」久しぶりに正田さん呼びすると。「へ?多朗くん」
「うん、多朗です。」うん、
「お墓と、ミルク?その前に動物病院かな。うちにも、猫いてさ」うん、
「で、亡くなるのってかなしいよな」ズビズビ、くしゅん。うん、
「で、何時までもそのままじゃ、安心して虹の橋渡れないよ」ズビズビ。
「用務員さんに埋めていいかと、スコップのありかと、」うん、こくんと子首をふると、
「墓、立ててあげないと」「え?」「勇敢な母猫、ここに眠る、」へ?どう思う?
「いいと思うよーさすか!」
「さすか?」「へ!もう!」良かった、少し、笑ってくれた。あ、猫たちはせーらさん、見ててくれるかなあ?と、声に出すと。
「いいよ、チビたちの相手は好きだし」と。
じゃ、僕スコップとゆーと。
がっと、佐和が僕の手を掴んできた。え?と思い、握り返すと。もっと、強く握られる
「用務員さんだよね。この時間東花壇の世話してるよー」と、泣き女はすこし、鼻をひくひくさせながら、笑う
(ヨッシャ!)
「行こうか」と、手を前に出すと、
「ゆっくりね!」と、東花壇に向かって歩く。その後も、僕らはずっと手を繋いでた。墓を立て、あの、僕が考えた勇敢な母猫ここに眠るは、せーらの発案で、ギリシャ語になり、
日付とかも書かれ、用務員さんのくれた、かまぼこ板に彫刻刀で、刻まれた。彫刻刀も用務員さんが貸してくれた。
猫は、動物病院に連れていき、
ハチワレは佐和、真っ黒はせーら、ぐれーの、やつはうちで、ってことに。動物病院って、飼い主のいない猫の世話って出来ないから、それは、子猫が3匹って聞いて、かなり、最初に覚悟してた。幸い、うちのミーコは中年と言っていい歳だったけど。ぐれーのメス猫、tearが来てからはみーこは、おっぱいを何故か出してくれて。3匹の公認の乳母みたいな感じに。
そして、そして。
僕は頭を掻きむしる
あの、手繋ぎは何だったんだ?!
そりゃー、かなり、いい感じまで、進めたとは思ってたけど。もう!こうなりゃ。当たって砕けろ。僕はLINE通話で、佐和に動画通話を掛けていた。

夜11時。夜だよと、一言あってもいいかもとは思ったけど、めちゃくちゃ気がせく
「あ、あの、佐和」
「ん?」と、黒がちな目でそっと覗き込んで来る。「や。あのさ。佐和って彼氏いた事あるの?」「え、唐突だなー」
「いや、ちと。教えて」
「んー、多朗くんと私の仲だからな」
「居たよー。半年前まで」へー。胸がギュッと、締め付けられる
「5人か6人ってとこかなー」へー。経験多いのな。おれは、三人だよ
「あ、じゃあ、初カレとかは」
「小5かなー」進んでるのねー
「多朗くんは?」「僕は中二の頃、1ヶ月付き合って、なんか。違うって、振られた」ひどーい、おい。それ、ほんとに酷いと思ってない。くさ。
「で、それを聞くとは?」
「や、あのさ。僕のことどう思う?」
「え、めちゃくちゃ優しいし。」うん、
「性格いいなーと思うし」
「じゃあ、付き合ってって言ったら付き合える?」「あ、それは勿論!多朗く」「や、ごめん。卑怯だ」はー、と大きなため息をつくと「正田佐和子さん、僕の彼女になってください!僕は君のことがとにかく好きです」「うん」「で、君には不名誉なあだ名がある。」「うん」「で、僕はその泣き女ごと、君を愛したい。なんなら、泣いてるとこずっと傍に居たいし。」「へ!」「いや。あの。もし、願うなら僕のために泣いて欲しいし。君が泣くようなことが、ひとつでも少ないように環境整備も余年がない」「え、難しい」えっと、「とにかく。君を苦しませるものからは守りたいし。君が泣くなら、頭ぽんぽんして、僕がなぐさめたい」「とにかく、僕はそんな人だけど。君のことが大好きで、この何ヶ月、ずっと君だけを見てきました」「うん」かー、っと
ここで二人真っ赤になって、次の言葉が中々出ない。みーこが、やってきて。tearもやってきて。あ、tearってもしかして「そ、涙」ふふっ!

あ、小悪魔だ。この子は泣き女だけど。きっと感受性が豊かなだけで、女の子の優しいとこも、かわいいとこも、そして、ずるいとこも持ち合わせてる普通の女の子なんだよなーと、僕はこの瞬間悟り、、
「君は普通の女の子です」うーん、と子首を傾げる。「きっと、正田さんの苗字のように。泣くことは佐和にとって正しいことなんだよ」「そうなのかなー」「それゆーなら多朗くんだって」「僕が?」「朗らかに多くだよね」「あ、それ、父方のじいちゃんが人生は朗らかに多く幸あれで」「へー」「話戻すよ。ちょっと、いや、かなり、君は涙脆いけど。でも、現代人は泣かない。それは、不健康なことだと思う。だから、君は頗る健康だよ。ずっと見てきた僕が保証する」「うん、で?」「正田佐和子さん、付き合ってください」「はい、宜しくお願いします」と、佐和の手は白くなっている。あ、と思うと。ハンカチをギュッと、握しめ。泣かないよ、「私は泣かないよ。嬉しいもん」と、へへっと笑った

よかったらサポートお願いいたします。サポートして頂いたお金を励みにこれからも創作頑張っていきますので宜しくお願い致します。拝読感謝しています。