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企業が直面するリスク:その他のビジネスリスク

中小機構のページでは、「新製品開発や海外進出などの営業戦略上のリスク、および株式投資・商品取引・為替相場・他社への融資などの資産運用上のリスクのこと」としていますが、より広義には、これまで取り上げたリスク以外の全てのリスクです細部を追求するときりがありませんので、 最近注目されているリスクを2つ取り上げたいと思います。

一つ目のリスクは「レピュテーションリスク」です。レピュテーションとは「評判」のことで、企業の評判が広がることにより、企業の価値や信用、ブランド価値が影響を受けるリスクです。レピュテーションリスクという言葉は、主に「悪い」評判について使われます。ある企業で発生した不祥事に起因する評判が、否定的なイメージをもって社会に拡散され、その企業の製品やサービスの購入ボイコット、従業員に対する誹謗中傷、取引の停止といった事態が発生することがあります。
特に気をつけなければいけないのが、SNSの発達により爆発的に評判が拡散することです。一時期、コンビニや飲食店で働く従業員が、店内の設備を使ってふざけている写真をSNSに投稿し、大きな批判を招く事件が続発しました。多くのケースで実行者が特定され、刑事処分を受けたと聞いております。こうした事件は、有名になりたい、世間をあっと言わせてみたいという個人のアピール欲求や承認欲求に基づくものと考えられますが、SNSの発達によって可能になった事件であるともいえます。被害にあった店では、店内の清掃、機器や商品の入れ替えなど、多大なコストを負わされることになりました。一部には、そうした従業員の発生を防止できなかったとする労務管理面の過失を問う声も上がりました。

もう一つのリスクは、地政学リスクです。地政学とは、地理的視点から内政、外交、国際関係を研究する学問です。クリミア問題を巡るアメリカとロシアの対立、核開発を巡るアメリカとイランの対立、米中貿易戦争など、近年さまざまな地政学的アジェンダがマスコミで取り上げられるようになりました。
地政学はこれまで政治や国際関係の領域でしたが、グローバル経済の発展により、一国の事件が世界の市場を揺るがすようなインパクトを与えることもしばしばです。ビジネスにおける地政学的リスクは、主に株式市場、為替市場、商品市場、国際貿易の分野に影響を及ぼします。
最近では、貿易赤字を削減するために、米国が海外から輸入される鉄鋼製品や自動車製品への関税を大幅に引き上げると発表しました。この背景には経済覇権を巡る米中の対立があるといわれています。また、北朝鮮による核開発と弾道ミサイルの発射は、朝鮮半島の軍事的緊張を高めてきました。現在は史上初の米朝首脳会談の開催に向けた調整が進んでいますが、一時期は北朝鮮の韓国に対する武力行使の危険が取りざたされました。万が一武力行使の事態が発生すれば、韓国でビジネスを展開している企業には、資産の保全や従業員の安全が脅かされるリスクが現実化します。
多くの地政学的トピックは「床屋談義」の域を超えることはないですが、海外に事業を展開している企業は、少なくとも展開先の政治や外交の動向に注意を払う必要があります。

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