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リスクとは何か その1

リスクマネジメントについてお話しする前に、そもそもリスクとは何かについて考えてみましょう。よく、「その事業への投資はリスクだ」とか、「お酒の飲み過ぎは病気のリスクを高める」といったように、リスクという言葉はすでに私たちの生活になじみのある言葉になっています。しかし、リスクの意味が常に正しく理解されているかといえば、必ずしもそうとはいえません。

リスクという言葉から連想されるのは、何か不確実な状態でしょう。そして、リスクというと、何か私たちに損失をもたらすものというイメージがあります。いずれも間違いではありませんが、リスクマネジメントの観点からは注意が必要です。リスクと不確実性は同じではありません。リスクとはその発生確率が計算できるものです。一方の不確実性は、発生確率の計算が不可能なものを指します。

明日雨が降る確率は、降水確率として毎日天気予報で発表されています。降水確率30%といえば、過去同じような気象条件で雨になった確率が30%ということであり、10回外出すれば3回雨にあたる確率です。これは過去のデータから発生確率が計算できる「リスク」です。そのため、リスクに対してはある程度対応手段を講じることができます。万が一雨に打たれても、折り畳み傘を持っていれば雨を避けることができますし、雨が降らなければ傘を鞄に入れておけばいいのです。

一方、降水確率30%で外出した際に雷に打たれる確率は計算できません。降水確率と同じように、よく似た気象条件で雷が発生する確率は過去データから計算できますが、人が雷に打たれる例は極めて少ないので、意味のある確率計算ができません。雷に打たれるのは「不確実性」です。不確実な状況においては、それを受け入れるか避けるかの二者択一になります。雷に打たれないかもしれませんが、万が一打たれたら結果は悲惨です。雷神様の気まぐれに身を任せるのみです。

私たちは、リスクと不確実性を混同することがよくあります。そのため、本来不確実性にあたるものをリスクと勘違いして損失を被ったり、あるいはリスクを不確実性と勘違いして利益を得るチャンスを逃したりすることがあります。リスクの本質を知る第一歩は、リスクと不確実性をきちんと区別することです。

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