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企業が直面するリスク:賠償責任リスク

中小機構のページでは、企業が株主、従業員、消費者から賠償責任を問われるリスクのこととしています。もう少し詳しく説明すると、企業やその社員が、不法行為により他者に与えた損害に対する賠償責任リスクです。賠償につながる不法行為には、故意によるもの、過失によるもののほか、無過失であっても責任が問われるものがあります。委任契約における受任者の委任者に対する賠償請求や、製造物責任などがこれにあたります。

賠償責任のリスクのほとんどはリーガル(法的)リスクですので、その解決を弁護士などの法律専門家に委ねることが多いです。弁護士資格のない者が弁護士業務を行うことは法律により禁じられています(非弁行為)ので、賠償リスクについては早期に法律専門家に相談しましょう。中小企業診断士も、人的ネットワークを通じて弁護士などの専門家を紹介することができます。

賠償責任リスクへのもう一つの対応は、事前の保険加入です。現在では賠償責任の種類に応じてさまざまな保険商品が販売されていますので、予想される賠償責任の種類と賠償額に応じた保険を選びましょう。注意点は、契約約款を十分理解し、どのようなケースで補償が受けられるかを明確にすること、不必要に多くの保険に入りすぎないこと、それと保険金支払いまでの最低限のキャッシュを準備しておくことです。損害保険のほとんどが、保険会社による調査等を通じ損害額の確定後に保険金支払いとなりますので、賠償の相手方への見舞金や訴訟対応費用など、保険金受領までに必要となるキャッシュに注意が必要です。

賠償責任リスクを極限するためには、普段から社内に遵法精神やコンプライアンス意識を高める施策を実施し、賠償責任につながる不法行為を未然に防ぐ努力が必要です。また、不法行為につながる要因はできるだけ速やかに潰さなくてはなりません。製造物賠償責任のような無過失責任による賠償リスクを低下させるためには、日常的な業務・製造プロセスの監視と見直しも必要でしょう。不法行為につながる要因を放置しておくと、組織内の規律が緩み、リスクが自己増殖していく環境が作られていきます。社内に「これぐらいいいや」という雰囲気が充満することを防ぎましょう。

過失に属するものも含め、不法行為のほとんどが、人間の欲や感情に起因するものです。日本の文化にそぐわないところもありますが、不法行為を防ぐ対策は「性悪説」を基本とするべきです。企業を法的リスクから守るためには、時には一罰百戒の処置も必要です。

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