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リスクマネジメント枠組みの設計:その2

JIS Q31000では、リスクマネジメント枠組みの設計の第一段階として、組織及び組織の状況の理解を挙げています。これはいわゆる「環境分析」といわれるもので、組織を取り巻く外部環境と、組織の内部の内部環境に分類されます。外部環境を「企業がコントロールできない経営環境」、内部環境を「企業自身がコントロールできる環境」ということもできます。

JIS Q31000では、組織と組織の状況の理解について、次のように定めています。少々長いですが引用いたします。

リスクの運用管理のための枠組みの設計及び実践の前に、組織の外部及び内部の状況の双方を評価し、理解することが重要である。なぜなら、これらが枠組みの設計に重大な影響を及ぼすことがあるからである。組織の外部状況の評価は、次の事項を含むことがある。ただし、これらに限らない。
a) 国際、国内、地方又は近隣地域を問わず、社会及び文化、政治、法律、規制、金融、技術、経済、自然並びに競争の環境
b) 組織の目的に影響を与える主要な原動力及び傾向
c) 外部ステークホルダとの関係並びに外部ステークホルダの認知及び価値観

組織の内部状況の評価は、次の事項を含むことがある。ただし、これらに限らない。
− 統治、組織体制、役割及びアカウンタビリティ
− 方針、目的及びこれらを達成するために策定された戦略
− 資源及び知識として理解される能力(例えば、資本、時間、人員、プロセス、システム、技術)
− 情報システム、情報の流れ及び意思決定プロセス(公式及び非公式の双方を含む。)
− 内部ステークホルダとの関係並びに内部ステークホルダの認知及び価値観
− 組織の文化
− 組織が採択した規格、指針及びモデル
− 契約関係の形態及び範囲

外部環境の分析では、経営分析で用いられる「PEST分析」「3C分析」などが利用できるでしょう。また、内部分析のフレームワークも含む「SWOT分析」も使えます。競争分析であれば「ファイブフォース分析」も適用できるでしょう。これらの分析フレームワークについては、ネットや専門書籍をご参考ください。

外部分析で見落とされがちなのが、文化的環境の分析です。一つの行為が違う文化で異なる解釈がされることはよくあります。海外展開するビジネスでは、文化的環境が人事や労務におけるリスク源になることがあります。宗教的慣習は、ストやデモ、暴動といったクライシスに一気に発展することがありますので、特に注意が必要です。

また、組織を取り巻くステークホルダ同士の相関関係も、重要な外部環境です。リスクマネジメントでは、往々にしてマネジメント主体とステークホルダとの一対一の関係に注目されがちですが、ステークホルダ間の関係がリスク環境を決めることがあります。ビジネスの世界では、「昨日の友が今日の敵」「敵の敵は友」となることも留意してください。

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