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企業経営とGRIC(3)企業経営とインテリジェンス

今回は、GRICのIであるインテリジェンスについて解説します。

企業経営における守りの要素として、ガバナンス、リスクマネジメント、コンプライアンスについて解説しました。これらはまとめてGRCと呼ばれていますが、その枠組みを準備するだけではGRCの実現は達成できません。その理由は、GRC実現にはさらに2つの要素が必要だからです。

一つは「戦略」です。戦略とは何かと聞かれて、明確に答えることができますでしょうか?実際、学術界でも戦略の定義は研究者によりさまざまに定義されています。ここではその詳細を述べませんが、私は戦略を「経営目的達成のための資源の獲得、配置、運用に関する基本的考え方」と定義しています。異論があるかと思いますが、組織管理やマーケティングなどの経営分野は、この戦略のサブ概念として戦略実行を支えるものだと言えるでしょう。

もう一つは、本題である「インテリジェンス」です。インテリジェンスも戦略同様、研究者がさまざまな定義を示しています。私は軍事インテリジェンスの観点から、インテリジェンスを「行動に必要な意思決定に資する情報活動」と定義しています。「データ、インフォメーション、インテリジェンス」の違いが話題となることがありますが、別の喩えをすると、データは「食材」、インフォメーションは「レシピ」、インテリジェンスは「メニュー」で区分するとわかりやすいと思います。レシピはたくさん作れますが、当日何を提供するかは、お客様に合わせた判断が必要であり、それが形になったのがメニューと考えるとわかりやすいと思います。

経済安全保障の重要性が高まっている昨今、企業もインテリジェンス力を高める必要があるという議論がありますが、インテリジェンスの意義を踏まえなければ百家争鳴になってしまう恐れがあります。しかし、インテリジェンスの意義について明確に解説している資料はほとんどありません。

そこで、ここでも私なりのインテリジェンスの意義を提示したいと思います。インテリジェンスの意義は

  1. 敵や脅威の特定(Enemy/Threat Identification)

  2. 敵や脅威の弱点の特定(Identification of Enemy/Threat Weakness)

  3. 敵や脅威の能力の評価(Enemy/Threat Capability Assessment)

  4. 敵や脅威の行動プロセス分析(Enemy/Threat Course-Of-Action Analysis)

  5. 敵や組織がもたらすリスクの評価(Enemy/Threat Risk Assessment)

  6. 敵や脅威の存在の早期警戒(Early Warning)

  7. 戦機の特定(Moment of Engagement)

  8. 戦果の評価(Combat/Battle Assessment)

です。この中でも特に重要なのは、1の「敵や脅威の特定」です。なぜなら、敵や脅威を正しく特定できなければ、2以下の成果が的外れのものになるからです。経営が行き詰まる企業では、本来戦うべき「敵や脅威」が正しく認識されていなかったケースがほとんどです。そしてその背景にあるのが、冒頭で述べた一つ目の要素である「戦略」の不在です。

次回は、戦略とインテリジェンスの関係について述べたいと思います。

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