今でも忘れられない瞬間

それは、今から遡る事5年前の事だった。中学生活ラストの体育祭のクラス競技「縦ムカデ」で優勝した時だった。あの時ちょうど佐藤琢磨選手がアジア人ドライバー史上初のインディアナポリス500マイルを制覇した後だったので、俺は、琢磨選手のあの「雄叫び」を再現していた。ここまで来るのにかなりの時間がかかった。でも昨年の「悔し涙」を「嬉し涙」に変えれた事には変わり無かった。練習の時も皆の意見を徹底的にフィードバックしまくった。どうすれば上手くコーナリング出来るのか、どうすれば上手く加速出来るのかもだ。でも昨年の「苦い記憶」も蘇りかけていた。それは、確か横ムカデの練習中に転倒。そしてその時に右手の甲に砂利が入り、両腕はズタボロ。腰も強打。挙句の果てにはメガネは壊れるという有り様だった。そして俺は転倒時にすぐ様首を守る様に丸くなったのが功を奏したのか、大ケガを負わずに済んだのが不幸中の幸いだった。そんな状況でもなお続行しようとした為、担任からストップがかかった。でも縦ムカデでは、そんなリスクは皆無に等しかった。むしろ「モジュール化作戦」が上手くいった賜物である。そして俺自身も色々家とかで考えたりもしていた。そして迎えた当日。俺は「昨年の借りはここで返す!」と決めていた。そして、スタートラインに着いて、スタート。みんなの想いを背負って戦った。そして最後。皆とひとつに。あの瞬間は今でも忘れられない瞬間だ。肩の痛みに耐えながらラストコーナーを駆け抜けて、トップでフィニッシュ。この瞬間、皆の叫び声が聞こえた。「やったァァァァ!!!、よっしゃァァァァ!!」という声が。俺も気付いたら叫んでいた。そして、最後は、赤チームを皆でゴールまでエスコートした。最後まで頑張ったんだ。讃えないで何が勝者だ。そして赤チームがフィニッシュした時には皆して拍手喝采。でも俺らチームの勝利は単なる奇跡では無い。いくつもの偶然が重なっている。実はスタート直前まで優勝なんてほぼ絶望的状況に置かれていた。完走出来ればそれでいいという感じだった。だけど違った。スタートしてからまさかの事態が起きていた。それは優勝最有力候補として見られていた緑チームがまさかのゴタゴタで優勝戦線から呆気なく離脱。そして、その間隙を縫って俺らチームが躍り出ると戦況は大きく一転した。これぞまさに「棚からぼたもち」である。そしてゴールまで他を寄せつけなかった。俺は当日エントリーはしていたものの出場出来なかった親友の分まで背負っていた。だから余計勝ってやらんと合わせる顔が無かった。そして最後の集合写真の時には靴紐が「最後まで全力で戦った」という事を証明してくれた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?