ミリアニは"バランス"が凄かった話

初めまして。ミリアニ、本当に良かったですね。

先行上映中はゆっくり全体を振り返る余裕もなかったのですが、BDも発売され始め、だいぶ整理がついてきたため、感想を言語化して残しておこうと思います。
(基本ベタ褒めです、またネタバレ全開です)

一応自己紹介として、自分は次のような来歴の人間です。

・2016年末にデレアニを視聴しアイマスを知る
・2017年初頭に無印アイマスのアニメを視聴、感動してASにのめり込む
・ASがいるという理由でグリマスを開始、その後程なくしてミリシタがリリースされたためそちらに移行
・その後、現在までミリシタプレイ中(途中ログイン勢の期間ちまちまあり)
・リアルライブはチケットが取れる限りは参加

以上です。よろしくお願いします。
(ちなみに、他アニメと比較する内容・意図はありません)


前提~ミリアニに求められていたもの


はじめに、前提としてミリアニ公開前の状況を整理しておこうと思います。

感想は書かないので飛ばして頂いても構いません。
もしミリオンライブファン以外の方が読んで下さっており、我々がなぜこんなに飽きもせずミリアニの話ばかりしているのか、興味があれば読んでみて下さい。

恐らくミリオンを応援する多くの人にとって、このアニメ化は大きな大きな「賭け」でした。
というのも(これは書いていても非常に悲しいのですが)、ミリオンはアイマス5ブランドの中で最も「知られていない」作品であったからです。原因は色々あるかと思いますが、一番はパッと言える特徴に乏しいことかと思います。

例えば他ブランドだと、
・AS(開祖のやつ、最初のやつ)
・シンデレラ(人数めっちゃ多いやつ)
・シャニ(ネットでよくミームになってるやつ)
・SideM(男のアイマスのやつ)

のように、何も知らない人にとりあえずパッと説明できることがあります。
その点ミリオンは、○○のやつ、という最初に目を引くような取っ掛かりがありません。
例に出してすみませんがデレの夢見りあむのような、
「アイマスしらんけどこいつ見たことあるわ」
みたいなキャラがいるわけでもありません。

アイマスシリーズで一番曲数が多くてソロだけでほぼ全キャラ4曲以上あるとか、ミリシタの衣装数が1人あたり100種類以上あるとか、精力的にコミュ実装していてすごい数の掘り下げがあるとか、劇中劇が多くて1時間近いドラマが20本以上あるとか、自治体や企業とコラボして観光やら防災やらに一役買っているとか、毎周年には全52キャラの個別ソロ歌唱を欠かさず実装しているとか、

誰も知りません。なんでですか?悲しい…

ともかく何が言いたいかというと、アニメ公開以前の状況下では、今までアイマスシリーズと無縁だった人が初めて触れる作品がミリオンになる可能性はとても低かったということです。
自分自身もそうでしたが、ミリオンはアイマスシリーズを知って初めて「へぇ、こういうのもあるんだ」的に知るコンテンツであり、故に新規獲得は長年にわたって非常に大きな課題でした。

だからこそ、アニメ化は喉から手が出るほど欲しかった「外部」から「ミリオン」への直通トンネルであり、多くの人たちの悲願でした。

別に「我々がミリオンを広めなければ!」みたいな、お前誰だよって感じの使命感を抱いているわけではありませんが、やはり誰しも大好きなコンテンツは人気であってほしいですし、少しでも盛り上がっていてほしいものだと思います。

目新しさと「お約束」のバランス

さて、本題の感想ですが、上記のとおりミリアニの最優先命題は「新規獲得」であったと思っています。

しかし一方で、既存のファンもある程度以上に満足できる出来栄えでなくてはいけませんでした。
それは当然で、ファンが
「俺らは微妙だったけど知らない人なら楽しめるかもね」
みたいなスカしたこと抜かしてるアニメは誰も見たくありません。

ミリアニはこの板挟みを、非常に優れたバランス感覚で鮮やかに乗り越えてくれました。

37+2の「Thank You!」

この展開と歴史の融合が、最も上手く織り交ぜられていたと感じるのが5話の「Thank You!」です。
この楽曲は言わずもがな最初期からのミリオンの代表曲であり、デレで言うところの「お願い!シンデレラ」のようなコンテンツを体現する一曲です。従って、アニメでこの曲を披露することは制作側においても「お約束」としてある種のノルマのようなものだったと想像しています。

10年間の積み重ねを経て既にミリオンスターズの曲として固まりに固まっているこの曲ですが、0からのはじまりを描くミリアニではこの曲を再度「新曲」として再構成しなくてはいけません。

そこで描かれたのが、5話の「原っぱライブ」そのものを「Thank You!」の歌詞をなぞるように展開し、そしてそのラストをアコースティックver「未完成のThank You!」で飾るという物語です。
これはすごく、すごーく、すごいです。

ミリオンに初めて触れる人に対しては、
1.「Thank you!」という曲自体の印象を強く残しつつ、
2.「みんなでやる」「手づくりする」というミリオンのコンセプトを自然に伝え、
3.「未完成」の曲を最後に持ってくることでこれから先の「完成」を予感させる

そして、ファンに対しては、
1.アコースティックverでの披露でマンネリな印象を抑えつつ、
2.37人全員が出るステージが物語的に用意できない段階で、きちんと37人全員の曲として成立させ(ついでに可憐の見せ場としてもひと役買い)、
3.AS→未来・静香・翼へ伝えたように、未来→紬・歌織さんへアイドルの楽しさを伝える

という2軸が綺麗に繋がれています。

とりわけ素晴らしいのが、紬・歌織さんに関連する部分です。
「Thank You!」は最初期からの楽曲であるため、ミリシタから登場した紬・歌織さんは当然リアルで最初に「Thank You!」が歌われた際には参加していませんでした。しかしながら、「Thank You!」はミリオンのコンセプトに強く結びついており、ミリオンスターズ全員の楽曲として位置付けられているため、10周年を迎えた今となってはこの2人なしの「Thank You!」は考えられません。
2人が加入する以前の37人でのミリオンの歩み、そして今現在の39人でのミリオン、両方を大事にした結果「37人で未完成のThank You!を歌う」という着地点になったのかなと思います。
つまり「未完成のThank You!」は、アニメ上の未来たちが「アイドルとして未完成」、デビュー前の成長中であるということと、「ミリオンスターズとして未完成」、あと2つピースが足りないということのダブルミーニングであったわけです。

『みんなでつくったの 遅くまで残って 手づくりの「ぶどーかん」 看板は虹色』

余談ですが、このパピヨン(ミリオンのシンボルマーク)の由来がはっきり描かれたのも今回が初めてのことでした。6年ほどなんだかよく分からないチョウチョをシンボルに掲げていましたが、ようやく謎が解けました。これからは金色のチョウチョも少しだけ愛せそうです。
この辺も「Thank You!」の物語を構成するいいスパイスになっていたと思います。

はじめて見せた静香の笑顔

アニメで魅力的な物語を構成しようとするならば、各登場キャラの掘り下げは必須です。しかし単に今までの物語をなぞるだけでは、既存ファンからは知ってる話のくり返しと捉えられてしまう恐れもあります。その点、ミリアニは非常にうまく作ってくれたと感じています。
(何となく上から目線な感じですが、特にそういう意図はなく、ただただ感謝に堪えません)

ミリアニはいちぽむ(未来・静香・翼)を中心として物語が進みますが、中でも静香の抱える「父親との軋轢」という悩みはアニメに限らずゲーム・コミカライズ等で広く描かれてきた設定です。

しかし自分の知る限り、状況の好転こそありますが、静香が父親と完全に和解を果たした作品は過去1つもありませんでした。

その意味で、ミリアニは非常に挑戦的でした。「父親に認めてもらう」ことは静香にとって1つの大きな目標であり、メタ的な視点ではアイデンティティでもありました。
最上静香という人物を描くうえでは、この点は絶対に避けて通れない部分です。しかし同時に、「静香が父親と和解する」というストーリーを描くならば、とにかくそれに足るだけの納得感が必要でした。それは言わば静香にとって未踏の境地であり、10年間届かなかった場所だからです。

ミリアニはこの繊細な問題に正面から向き合い、その上で、2人の親子関係をしっかりと描き切ってくれました。

静香の物語において、この和解は「切り札」だったと思います。
どの世界線においても未だにたどり着けていない最大の山場を、アニメ終盤の物語軸として強固に据えた判断、そして今まで描かれてこなかった父親側の心情を描くことで納得のいく物語を作り上げた構成、とても鮮やかでした。

ありがとうミリアニ。

ミリシタでは未だに父親とは不仲気味
なお、信じがたいことに、うどんの栄養の話をしている

39人を「捌ききる」バランス

先に確認しておきますが、ミリアニで39人のキャラクターが十分に描かれたとは全く思っていません。
それは12話という制約上仕方のないことであり、だから問題ないということではありませんが、2期以外にこれを解決する方法はないと思っています。

しかしその時間的制約の中で、ミリアニは39人をよく「捌いて」くれたと感じています。
正直、出番の差はかなりあります。いちぽむ3名は別としても、例えばTeam2nd,3rd,4thあたりは丸一話かけて描かれた一方で、5th,6th,7thあたりはその裏として処理されてしまった感もあります。
全編通して数言しか話していない人もいます。

↑のような差を許容できない、という意見は最もだと思います。誰しも自分の好きなキャラクターが活躍しているところが見たいのは当然で、それが叶わなかった時に不満に思うことも当然です。
ましてこれだけ待ちに待ったアニメ化なのですから。

ですが本放送も終わり、今全体を振り返ってみて思うのは、やはり39人全員の掘り下げは無理ということです。
そもそもチーム回のあったTeam2nd,3rdですら満足に掘り下げられた感じはありません。むしろまだまだ良い所あるのに!と思う部分が多いです。6人で1話使った4thはなんとか個性が描けてたかな、と思う程度です。
実際、いちぽむ以外で名前覚えてもらえるぐらい活躍したのは5,6人くらいじゃないでしょうか(百合子、茜、ロコ、桃子、紬、歌織さんあたり)

でも、全く出番がなかったという人はいませんでした。例えばエミリーは数少ないカットではお茶会の話をしていましたし、麗花さんは自慢の肺活量でシャボン玉を大量噴射していました。
彼女らの出番は、顔と名前を覚えてもらうだけのインパクトを残しているとは到底言えません。自分はあくまで想像するしかできませんが、初めてミリオンに触れてくれた人で、視聴後39人のうち半分以上顔と名前が一致していた人、いないんじゃないでしょうか。

ですが、例え短くても、セリフがなくても、物語の本筋に関係がなくても、彼女らのカットは決して不要ではありませんでした。39人全員がミリアニの物語の中で等しく生きていることが描かれる必要がありました。
エミリーがいなければ原っぱライブにお茶会ブースはないし、麗花さんがいなければあんなにシャボン玉は飛んでいませんでした。

その意味で、ミリアニは39人を綺麗に「捌き切って」くれたと思っています。

39人全員「1人も手放さない」というのはミリオンライブの根底にある方向性ですが、12話という制約の中で新規獲得を至上命題にする以上、そこを完全な平等にするのは不可能だったかと思います。
理由は単純で、時間が全くもって圧倒的に足りないからです。

そんな中で、ミリアニの配分は見事だったと思います。本筋を逸脱しないよう可能な限り話の軸を守りつつ、ファン目線で「あの子出てきてなくね?」というレベルの人が出ないよう意図して制作されていたと思います。
この辺りが、最大限の落としどころではないでしょうか。

もちろん、個人的にもっと見たかった人は沢山います。
OVA、そして2期に期待するしかありませんね。

総評

2期祈願!!!!!!!!
はじめにミリオンは「○○のやつ」というのがないと言いましたが、これから「アニメが評判いいやつ」になればいいなと思います。
以上です。お読みいただきありがとうございました。

おまけ ただ好きなところ

2話オーディション後の両腕ピン伸ばし拍手矢吹可奈
(なるべくステージ上に届くように近くで拍手しようとするとこうなる アホかわいい)

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