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夫の死【5日目】

告別式
会社が職員の香典を芳名帳にまとめ持ってきて
下さった。短期間に集計・作成。
感謝と身が引き締まる思い。


弔電を複数いただく。係の方から全員を読み上げることは出来ないので選んでほしいと頼まれた。

え!
社長さん以外どなたを読み上げれば良いのか?
立場・役職の絡みがある。間違うと失礼。

まもなく式が始まる。時間がない。
会社関係者を探す。いた!
「ちょっと ご相談が 。。。」
司会者の元に連れて行き、選出と読み仮名を
みてもらう。

途中、私は席に着くよう呼ばれて戻った。
彼は頭を悩ませているようだった。
挨拶できぬまま戻ってきたので、申し訳なく
気になって仕方がなかった。

本番では司会者がサラリと読まれたので
胸を撫でおろした。

昨日同様、喪主の挨拶前は
プレッシャーで吐きそうになる。


県内外から来て下さった方々、身内の友人知人
同僚、子供の学校関係など参列下さった皆さまに
夫にかわり生前のお礼などを伝えた。

お棺にお花を捧げる。最後のとき。
父が野太い声で数回、ぶつけるように名前を呼んだ。その声が今も耳に残る。

見送りに全員が外に移動。今はスタッフと2人。
お願いすると、棺の扉を開けてくれた。
これが見納め。頬に手を当てじっと見つめる。

エレベーターに入ると愛しさと悲しみが込み
上げる。お棺に顔をつけて泣いた。

玄関前。
霊柩車に棺を運ぶ親族。
あ!参列者の1人が「力になりたい」と言われていたのを思い出す。係の方に伝えるも時遅し。
ごめんなさい。

霊柩車に乗るのは初めて。
火葬場まで運転手さんとの会話はない。
優しい運転。音もなく振動も少ない。


さっき迄の緊張が溶けて穏やかで不思議な感じ。
ゼロポイントや仏教用語の「空」というような。

心の中で夫に話しかける
数年の別居生活
最初こそ不仲だったけど今は好き
結婚生活を再会するのもいいなと思ってたんだよ


自分から出ていったから言いにくく
子供も転校になるから実際に今の同居は無理。
だから言わなかったけれど
今更とか、言うのが遅いと怒るかもしれないけど
思ってた。

迷わず、すぐに天国へ行ってね。
けど呼びかけた時は戻って来てね、愛してる。


午後2時。火葬場に到着
火葬許可証は葬儀屋が手配してくれた。


お坊様の読経の中、身内11人が焼香。
すぐに終えて炉に入る迄あっという間だった。
さようなら。

火葬が済むまでの間に精進落としを行う。
食事中息子は不機嫌。外に出たので一緒に出る。
周りは初対面の大人ばかり。
迷惑をかけぬように沈黙と遺族代表として
粛々と取り組んでいる。あと少しだ頑張れ!


2時間後。火葬場に戻り遺骨を拾う。
鼻をつく焼けた匂い。
父の時と違い、骨は太くしっかりしている。
おでこの骨は面影が残っていた。

足元の骨から順番に骨壷に入れる。
入れては係の方がバリバリと壺に押し込む。

少し気分が悪い。気持ち的にもやりたく無くて
途中から他の方に任せる。

火葬場を出たら暗くなっていた。
母が遺骨を持っていたいと言われ
嫁ぎ先に四十九日法要までの祭壇を設け安置した

明日も忙しい。急いで帰路につく。

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