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土器くん

 「カラオケ行きたい」
 「良いですね、僕も行きたいです」

専門時代の友人何人かとの飲みの席に召喚された3つ下の彼と私は、「明日もバイトがあるから」と宣う薄情な友人らを見送って初めて話すのに2人でカラオケへと向かった。この時土器くんがNAGISAにてを歌っていたのを覚えている。
閉店まで歌ってマックで小腹を満たしてヴィレッジヴァンガードなんて、この頃の若いバンドマンのテンプレをきれいにやったみたいだった。

土器くんは、私のこの時までの人生で初めてのどこにもカテゴライズできない人だった。宇宙人だった(寝言も宇宙語を喋る)どこがドライでどこがウェットなのかが難しかった。なんでここでそんなにドライなの、と思ったし、そこ意外と人情味あるんだ、、なんてこともあった。元々あまり偏見など薄い方だが、彼のお陰で私は更に人に対する見る目が変わったというか幅が広がった(悪い意味ではなく)し、趣味嗜好への影響力はすごかったと思う。あと当時、僕は楽で楽しいことが良いって言ってたのを聞いて、言ってもいいんだな、そうだよなって思えた。

私たちはバンドを組んでいた。私が上澄み程度に作った歌を提出するたび、ミルフィーユにして返してくる。これ以上の人を私は知らないし、この人でないと私はバンドをやりたくない。バンドをやりたくてもメンバーに土器大洋がいないならやりたくない。
1度バンドの練習中にめぐ(私の親友でありバンドでキーボードを担当していた)が土器くんのノートのメモ書きを見てしまったらしく、内容を私に教えてくれた。
「アヤさんは座っているだけで良い」
と書いてあったらしい。この短い文章で、コンセプトや私の性格や魅せ方、私がどうしたいか、全部わかっているし伝わっているように思えた。

今や彼は色々と忙しく活躍している。が、シャカブッダナムナムもしくはナムシャカブッダブッダみたいな、そういうところ、絶対に、死んでも忘れないでいて欲しい。あとたまにはゆっくり休んでね。

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