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田村

 「はあ?お前、」
笑いながら田村が言う。出会った時はメタラーだった。ランディー・ローズをこよなく愛していてアレキシ・ライホの声が好きだった。
ある夜中に田村と私ともう1人友人と唐津バーガー食べに行こうと思い立ち、友人が始発で車を取りに実家に戻り、うちにいればいいものを、「いや俺ギター弾きたいから一回帰る」とか言ってしまうようなストイックばか野郎だ。ばか真面目でばか普通の繊細な優しい男であり、私がめちゃくちゃに好きだった人だ。
今はアホのいい奴だと思っている。

仕事辞めて暇だから飯でも行こう奢るよと連絡がきた。頑張ってたしゆっくりしなよと言うと、優しいと言われたので、お前がSwitch買ったマウントした時以外は基本的に優しいだろ、と返す。その後またぼくのなつやすみSwitchマウントを取られたのでお前は米作るゲームでもしてろと返した。
暇すぎて池袋で眼鏡を買ってサンシャインってところいってみようかな♪などと言うのでそこ元処刑場やからお化け出るよ、と教えてあげた。こういう頭を使わないやりとりが出来る友人は貴重だ。来月、ラーメン食べに行く約束をした。

ばか真面目でこうすべきだと信じすぎている人間が折れると気持ちを元に戻すことは容易ではない。これまでの自分の否定にも繋がりかねない。そこを脱そうと大きく行動した彼がこれから先柔らかく生きてくれたらと思う。武士たるものそれらしい形をととのえようとしすぎるな田村。今きっと良い時だ。このままで。
でも次Switchマウントされたら彼の行く先に撒菱を撒くことも辞さない構えではある。

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