薄暮の国、黄昏の国、常夜の国


こちらは『枷の椎骨、黄昏の国』のエピローグ的な考察です。


1.薄暮の国の謎


もともと大きな違和感がありました。
「薄暮の国のシーリス」は英語だと下記になります。

”Sirris, of the Sunless Realms”

"Sunless"とは、単純に言えば「太陽がない状態」の事を指します。
太陽さえなければ、なんでもSunlessと呼称できますので、「深夜」でも「深海」でも「太陽から遠く離れた宇宙」でもよいです。

※ ほんまに~?と思う方はSunlessで画像検索へGO!

ただし、「薄暮(Dusk)」はSunlessではありません。何ならそのように訳すには最も無理がある。太陽の光がないことには薄暮という時間帯は成立しないからです。
シーリスの防具も「薄暮シリーズ」と表記しながら英語では”Sunless Set”と銘されています。
正しくは――私のネーミングセンスが疑われない限りは――この装備を「常夜シリーズ(Sunless Set)」と置き換えるべきなのです。

何故このようなミスリードが生まれるのか…という疑問がまず一つ。

そして、もう一つ。フォドリックの防具は「黄昏シリーズ(Sunset Set)」であり、盾も「黄昏の盾(Sunset Shield)」です。
先に少し触れましたが、「黄昏」は「薄暮」より少し後の時間を指します。
細かく言えば、まんま「=薄暮」として良いわけではありません。ですが、「太陽の光がある時間帯」という意味では一致しています。

”Sunless”と”Sunset”

つまり、シーリスとフォドリック。太陽が見えない時間と太陽が僅かに残る時間。この二人は装備に冠した時間軸が異なるのです。更にそこから細分すればフォドリックの装備「黄昏」と、国の名「薄暮」の時間帯にも微妙にズレがある。


私の結論は、この国、時代(世代)とともに「信仰の象徴としての時間軸」が進行しているんじゃないかと。


どういうこっちゃ?は弁明の余地もありません。

仮説なので好き勝手定義してしまいますが、ダクソ3世界に描かれる中では少なくともこの国に関する記述は「3つの時間軸」が描かれているかもしれません。

※ 時間軸=太陽の光の届く力=太陽信仰のキャパシティ とお考え下さい

【1】「薄暮の国」が成立した時代。
※ 国の時間軸は「薄暮(Dusk)」だった。

【2】フォドリックの時代。
※ 少し下ったので、時間軸が少し進み「黄昏」を冠すようになった。「黄昏の防具・盾(Sunset Set/Shield)」が作られた。

【3】更に下って、シーリスの時代。
※ 火の時代の終わり。グウィンら神々の威光はもはやなく、この土地で太陽が見えることはなくなった。薄暮の国は「常夜の国(Sunless Realm)」となった。

なぜ時間軸を分けるのか。それはもちろん火の時代の進行具合に沿っているから。また、神の枷と暗月信仰に関わりがあります。

太陽が沈む、太陽の光が届かぬという事は、グウィンが継いだ火の時代が終わりに差し掛かっていることを暗示しており、フォドリックが特にその事実(神の枷が外れる事への恐れ)に焦っていたのは、薄暮の国の状況が背景にあった可能性があります。

それを示唆するのが、彼が持つ剣と盾。

無題02

■フランベルジェ
炎を模したという独特な刃は 皮膚を複雑に切り裂くための工夫であり 敵に出血を強いる
■黄昏の盾
薄暮の国の聖騎士に与えられる盾
薄暮の聖騎士の象徴色である黄昏の色の中に 燃え盛る炎の紋文様が描かれている
それは炎を宿し
、また対する者の証である

彼は紛れもなく、「火の信奉者」です。それは「黄昏」という時間帯にほんのわずかに【太陽の光=グウィンの神威=神の熾した火】が見出せるからに他なりません。

そうなると聖騎士であるにもかかわらず「呪術」を使う理由も繋がってきます。

それこそ、再びアシッドさんの考察記事になりますが、フォドリックの積む者とは、神の意向に寄り添う事を前提とした誓約だったのです。

フォドリックの装備が「火」で固められているのは、そのまま「積む者達」が「火」、つまり人に枷がはめられていた従来の時代へ固執する様を示していた訳です。


さて、ところが孫の代になると、シーリスは「暗月の信仰者」として登場します。太陽の光(グウィンの神威)は全く届かないが、月のみがかすかに照らす状態…つまり、夜=暗月を信仰しているというのは納得がいく話です。太陽の光がないこの国のこの時代には、もはや火の熾りようがないのです。

故に「常夜の国」。

「薄暮」という形骸化した名だけが残り、実質的な状態は月のみが見える常夜だった。だから"Sunless"であった。必然的に太陽(グウィン)→月(グウィンドリン、ヨルシカ)へと信仰対象が変わっていったのです。

これがこの項での結論です。


2.最後の最後・・・で、また謎

画像2

■薄暮のヴェール(Sunless Veil
魔力と、そして闇に対することで知られる
薄暮の国(Sunless Realm)の騎士装束
絹のヴェールと、銀の頭冠を組み合わせたもの
薄暮の騎士(Sunless Knights)は、名も無き月に仕えるものであり
故にその装束は女性的なシルエットを有する

魔術(理力)と対するのは奇跡の信仰者ゆえでしょう。闇(人)と対するは神に仕えるからでしょう。

はて、そんな彼女たちが仕える「名もなき月」とは何故名がないのか?

無題03

■薄暮のタリスマン(Sunless Talisman)
名も無き月に仕える
薄暮の騎士に与えられるタリスマン
奇跡触媒としては珍しい理力補正を持ち
故に闇に近い奇跡と相性がよい
薄暮では、まずそれが教えられ
最初の戒めになるという

ん、先ほどは「対する」と言ったはずの「魔術(理力補正)」にも「闇」にも近しいというのは、これいかに。ただし、それを「戒め」とするからには、やはり薄暮の騎士たちは最終的には二つに相対する姿勢を貫くのでしょう。

では、なぜそもそもこの国で作られたタリスマンが「魔術」と「闇」に近しいのか。

「薄暮の国」とは本当にいったいどこにあるのでしょう。謎はまだまだ深掘れそうです。


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