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オスロエスは「竜の御子」を砕いたのか


前記事『妖王の庭という古代図書館』

1.日英でテキストが違う

前置きをしないという誓約を結びました(という前置き)。
画像をご覧ください。

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早速ですが、注目すべきはこの一文。

王はロスリックの血の営みに発狂し 大書庫の異端と繋がったという

実は太字部分が英語テキストだと違っています。

王はロスリックの血を「ある大いなる目的」の為に利用せんと取り憑かれ 大書庫の異端と繋がったという

"Oceiros went mad trying to harness his royal blood for a greater purpose, leading him to the heretics of the Grand Archives"

だいぶ具体的な事が書かれています。ただ、言わんとする方向は同じ。

日本語からは「おぞましい血の営みに耐えかねて発狂した」と読み取れます。つまり動機
英語からは「その恐れを超克しようとした」彼の意志と方法が読み取れます。

オスロエスは、ただ狂っただけにあらず。何かどでかい事をしでかそうとしていたのです。

果たして彼にとって「ある大いなる目的(a greater purpose)」とは何だったのか


2.前人未踏のシース超え

さて、オスロエスが没頭した異端研究の集大成…それは竜の御子オセロットになるわけですが、どうやら「血の営み」を乗り超える鍵であるようです。

■オスロエスの台詞
ああ、愚者どもめ。ようやく気付いたのだろう?
愛しいオセロット、竜の御子の力に

この台詞を汲むと、「竜の御子の力」はオスロエス以外にはアンノウンです。

そして前述の英語テキストを合わせると、「ある大いなる目的」はこの赤子が解決してくれる、という。故に愛しくて愛おしくてしゃーない。

はて、その手段は…。

■妖王オスロエスのソウル(再掲)
それは白竜シースの歪んだ信仰だった

シースの事を考えなくてはなりません。
シースは「原始結晶」を手に入れた事で「本物の不死」となったのだと我が師ローガンは言います。

■ローガンの台詞
白竜シースの、不死の秘密だったな。貴公も、あれと戦い、囚われたのであれば 分かっていると思うが、あれは、我々とは違う、本物の不死だ傷はすぐに塞がり、致命傷を負わず、決して死ぬことがない。それは、シースが、古い竜たちを裏切って手に入れた秘宝 原始結晶の効果らしい。だから、まず原始結晶を壊さなければ シースを傷つけることはできない

このセリフにはちょっとした矛盾が生じています。

「決して死ぬことがない」と言いながら、「原始結晶を壊せば死ぬよ」と教えてくれています。まるで不死じゃないじゃん。

何故か。
原始結晶とは、あくまで他人様から奪って力の恩恵を間借りした物。いわゆる外付けデバイス(しかも盗品)であり、自身の中に組み込まれたシステムではないからです。

「デバイスの電源さえ引っこ抜いてしまえば二度とリカバリーできんぞ」
図らずも、我が師ローガンは身も蓋もなかったのです。。

そこでシースが見出した解決方法は、不死性を自身の中に組み込む。すなわち「自身にウロコを宿す」という方法でした。
その為にシースが研究対象としたのが人間、特に人間性を多く抱える聖女ら。ご存知の通り、グウィネヴィアがアノールロンドを去ったのをいいことに彼女お付きの聖女たちにあれやこれや実験したは良いものの、ついぞこれを実現できませんでした
無印の主人公に阻まれたからです。


ですが、遥かな時間を置いた後、これに成功した者が現れます。

竜の御子オセロット、その父オスロエスです。

実は、没データの中に「オセロットの姿」を見る事ができます。

1:35あたり~詳細な姿が映ります。その先は結構ショッキングなグロ注意

※ 没データを考察に組み込むことに私自身は抵抗があるのですが、「姿が見えない」というオセロットの唯一無二な特異性においてのみ、これを良しとする事にしました。これによっていろんな事が繋がってくる、と確信したからでもあります。

というわけで、オセロットが「結晶のウロコを持つ赤子」であることがわかります。

結晶のウロコを自身に組み込んだのですから、シースを超えたのです。

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認めてやる… オレはあれだけ特訓したが
オセ(カカ)ロットを越えられなかった…
あ…あのヤロウは 天才だ……

シースがまさかのベジータポジション。

当然、ウロコを持つオセロットには傷がつきません。死を迎えません。それは「生と死がない」古竜の力と言えます。

狂った父オスロエスに叩きつけられても四つ足で地団太を踏まれても…赤子の泣き声が建物中に響き続ける、という演出。これはシース超えともいえる「永遠の不死性=古竜の力」を有しているという描写だったのではないでしょうか。

※ そういえばSEKIROの九郎様も、竜(胤)の御子であり、普通に切っても傷がふさがりますね。フロムゲーにおける竜の永遠性は一貫しています。


3.改めて結晶と呪死について

前記事では、妖王庭の石板にはシースの研究資料が刻まれていたのではと説きました。オスロエスはこの場所で二つの啓蒙を得ようとしたようです。

・結晶魔術
・月光

このうち月光については、

■月光の大剣(DS3)
妖王オスロエスは妄執の先に月光を追い
だが、それに見えることすらできなかった

何故見えなかったかというと、

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その月の力から、娘として育てられた

おそらくオスロエスが女性でないからだと推測できます。

※ この辺り、ACIDさんの考察が大変に詳しく、理力ぶっぱの我が師文章力で面白いのでURL掲載させていただきます。

個人的に思うのはもしも――女装(?)して月光に見える事ができたなら、彼の研究成果は違っていたのでしょうか。ワンチャン月光に照らせばオセロットは視えたんじゃないか、なんて妄想です。いえ、妄執です。
イフは見えない。見えないものは考察できない。


では結晶の方を追います。

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・結晶により鋭さを得た
・結晶を媒介としソウルと武器をより強く結ぶ

(DS無印/DS3とも同テキスト)

昔は、結晶強化といっても尖ってて痛いだけじゃん?って思ってました。チクチクするだけかと…
ですが「媒介」とはなるほど、ソウル ⇔ 武器(物体) は結晶を介して癒着する。通常の「魔力の武器」のようにソウルを纏わせるより物理的な強度が増すことで、武器と魔術が相乗効果でパワーアップする。結晶は、ソウルの固形化であると同時に、ソウル/物体の仲介役でもあるのですね。

とすると没データの見た目どおり、オセロットはその身に結晶魔力をかけられたのか?
比較対象として、普通の不死人がシースの結晶魔法に触れると何が起こるかを思い出しましょう。

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なぜか呪われます。なぜか呪いが溜まり切ると結晶になります。なぜか人だけが結晶化します。

この原理を非常にわかりやすく説明してくれるアイテムがDS3に登場していました。

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主なき人間性に生じるもの(貴石)

なんと核心を突いてくる。
人間性は主を失くすと貴石(結晶質の宝石)に変化するんですって!そしてそれは闇属性なんですって。

※ おそらく全部が全部、石に変わるわけではありません。木になったり、沼に沈んだり、あるいは虫になったり…いろんなパターンがある。

まとめると本質が見えてきそうです、、、結晶の呪死効果とは、内なる人間性を強制的に主(不死人)から引き剥がすものだったのではないでしょうか。髑髏ゲージ限界まで引き剥がされると、人間性は途端に主を失う事になり「闇の貴石」テキストどおりに石化(変態)する。だからこそ呪死すると、結晶が皮膚から生えるようなモーションで描かれる。

さきほどの「結晶魔力の武器」がソウルを物体に固定する働きだったのに対し、こちらは引き剥がす。ソウル/物体の仲介役、行き来させる装置という結晶の性質なればこそ、それが可能なのです。

無印では、人間性を多く宿すほど「呪死耐性」が高まります。引き剥がす、あるいは石化を促す体積が多くなれば、呪死までの時間は遅くできる=耐性が高まる。そんな説明もできます。

また、呪死の「生命力が半分になる」「生者に戻れなくなる」という制限は、生者になるとき篝火でボッと表示される"Humanity Restored(人間性の復元)"が成されない事とイコールです。つまりはソウルの器たる不死人の身心が人間性を受け付けられない状態が、呪いである。
結果的には亡者へ近づいている、、そんな演出なのではないでしょうか。

■結晶の錫杖(DS無印)
シースの妄執に飲まれたローガンの錫杖
凄まじい結晶の魔力を帯びた触媒
■古老の結晶杖(DS3)
結晶球は使用者の意志を喰らうといわれ
戦技の消費FPを大きく増す代わりに
魔術の威力をより強化する

もう一度言いますが、上記のプロセスは結果的に亡者に向かう道。
結晶が意志を喰らう」という含みからも、結晶と呪死は繋がるのです。


【2020/06/01追記】
「呪死後の人間性の行き先」について、Ester様(@Ester_game)よりご教示いただきました。

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私、全然知らなかったのですが、最下層や侯爵の書庫にある石化した人間たちってオンラインで繋がった同じく呪死したプレイヤーたちだったのですね。次元が交わらない「半透明のプレイヤーたち」でも「(白赤青)霊」でもなく、「実体」として我々の世界に出現します。
人間性は主を失うと世界を超える(さまよう)。こんな性質があるのだとしたら、それを裏付けてくれるもう一つの「実体」がこちら。

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さまよう人間性の精霊

こんなダイレクトな奴!
英語名「Vagrant(ベイグラント)=放浪の、さまよう~」。小ネタですがラテン語"Vagus=迷う"に由来し、Vagabond(バガボンド)=放浪者、Vague(ベイグ)=曖昧な~、と同じ語源なのだとか。

精霊は倒すと黒い中身がなくなるので、この黒い中身が人間性の本体なのだと思われます。他世界をさまよう移動手段として、主を失うと変態し固形化する性質を利用して「歩く外殻」を形成しているのかもですね。
目的ですか?もちろん「新たな宿主」を探すためでしょう。

よく「カニ」と呼ばれますが、上記に沿うなら私は「次の貝殻(人間の器)探す剥き出しのヤドカリ(仮の宿を借りてる者)」だと思います。ダジャレだよ。

だって縦歩きだし(そういう種類のカニもいますけど)

呪死したプレイヤーたち、さまよう人間性の精霊——。
前述の「呪死が人間性を引き剥がす」という特徴を補強するヒントとしてこの上ないものでした。Ester様に感謝申し上げます。

(あ、人間性が次元を超えられるならオセロットの行き先ももしや考えられるのだろうか…余裕があればまた追記します)


長くなりましたが以上がシースの結晶でした。
この章で最後に触れておきたいのは、ビッグハットローガンの結晶についてです。

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恐ろしい呪死効果は既に失われたものの

我が師ローガンの結晶魔術は呪われません。我々が使用する際はもちろん、狂った師が放つ結晶にも呪死効果はありません。
どうやら師がシースから引き継いだものは結晶という形状のみで、前述したような「人間性に訴えかける」領域には至らなかったようです。惜しむらくはそれが普通の人間の限界だったと言えるし、師の関心がそこに辿り着く前に発狂してしまった、とも言えるでしょう。

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普通の人間の最終形態

ただですね、後のDS3ではこんな定義づけもあるわけです。

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探求者たるローガンの一端が見える魔術だが
生命に惹かれるその性質について
後の研究では、むしろ闇に近いとされている

実際のところ、師は結晶に出会う前からシースが欲するものの真髄に触れていたのではないか。
さすがは、図らず”身”も”蓋”もない師匠、、、

■結晶古老の刺剣
結晶の魔力により魔力攻撃力を持ち
また、装備者のアイテム発見力を高める
それは古老が、生涯探求者だった証であろう
■アンリの直剣
だがそれは「本当に貴い者の剣」であり
人の本質的な力、運(アイテム発見力を高める)により攻撃力が高まる

理力の「探求者」たるはただひたすらに人の「運」を究める事也。人じゃないシースにはそれが出来なかった。できないから人から得ようと実験した。

これもイフの与太話ですが、結晶の魔力が亡者への道に引きずり込む中で、もしもローガンが意志を保っていられたなら、彼は最終的に「亡者の王」になっていたのではなかろうか。

その可能性を示してくれる野心高きNPCが、DS3にいました…。

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■ユリアの台詞
…ヴィンハイムのオーベック、あの者は不穏だ
あの者は亡者、そして、自ら亡者の王たらんと考えている

ユリアが藪から棒にこの魔術師を警戒した由縁は、無印から続く結晶の概念ひいては魔術師のスタンスにヒントがあったのです。

いや、おっと。
これオスロエスとオセロットの記事なんです……。


4.故に父オスロエスは砕く

※ この章では多少グロ表現を使っています

オスロエス戦を観察してみましょう。

この戦いは下記のように分解できます。

①第1フェーズ: 杖(触媒)あり、致死の白霧(非結晶)、二足歩行
②オセロット叩きつけ
③第2フェーズ: 杖(触媒)なし、白竜の息(結晶)、四足歩行

ここで注目すべきは①→③の変わり方。
①では普通の魔術師みたいに触媒を使って唱えるんですね。
しかも何故かヴィンハイムの裏の高等魔術「致死の白霧」…。

ですが③にて杖を棄て、触媒なしに結晶攻撃をしかけてくる。触媒が必要ないという事はシースの結晶、飛竜の炎ブレス等と同じく超越的な力を持つに至ったという事。二足歩行→四足歩行という変化もわかりやすい示唆です。

①が人間(ローガンや結晶古老)の領域、③が竜(シース)の領域である事がおわかりいただけるでしょうか。

③-1 触媒なしに結晶を具現化している(ように見える)
③-2 結晶に呪死効果が付加されている

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上記2点は、DSの法則で言えば人間の所業では起こり得ません。

②オセロット叩きつけが、オスロエスの「人間→竜の領域への進化」を促したトリガーであったと推測できます。

だとすると改めて、「オセロットを叩きつける」とは一体どういう表現だったのか。

〈持ち上げ〉

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〈叩きつけ〉

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〈ソウルの小爆発?〉

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↑画像が粗めで恐縮ですが、叩きつけ時の不思議な光のエフェクト。
ソウルの白と、闇の黒 or 深みの黝(あおぐろ)が混在したような…

今回の記事を書くにあたって、オスロエス戦の動画を何回も拝見しました(自分でプレーしてると観察する余裕がないのでw

叩きつけのエフェクトについて、ふと「これに似てるなぁ」と思いました。

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モーション資料:https://www.youtube.com/watch?v=leshIZ-wO7s

人間性を砕くエフェクト。(ソウルを砕く、に置き換えても同様)

これらエフェクトが同じ類の表現だったと仮定すると繋がる事があります。その仮定とは、オセロットを一個の消費アイテムになぞらえる事です。

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無印では人間性を砕くとアイテム発見力が高まったり、HPが全回復したり、防御力が上がったり、人間として相応の恩恵を受けられます。

オスロエスがオセロットを地面に叩きつけ、人間性を砕くのと同じ効果を期待したのだとすると、それはいわば「竜の御子の力」を己の身体に宿そうとしたという事。

話は遡りますが、オセロットは「結晶のウロコを持つ赤子」です。シースはこのウロコを持てなかったが為に人間に起因する「何か」を実験から抽出しようとした。この「何か」とは有限の生命を持つ白竜シースと、生命を超越した他の古竜との差異を裏付けるもので、ダークソウル世界において根源的な要素の一つです。そして、私は未だそれが何かわかっていません。

※ 実験材料が「聖女」だった事を考えると、おそらくもっと女性性にフォーカスすべきで、最終的には「火防女」に繋がる気がしますが…それは別の機会に。

わからないなりに抜き出すと。

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古竜に祈り、それに近づこうとする超越者たちの業
生とは弱さであり、火の者である神々も例外ではない
超越者の目標は、生命とは別のあり様なのだ

冒頭に述べた、「ある大いなる目的(a greater purpose)」とは意外でも何でもないですが、ここに帰結するのだろうと思っています。

オスロエスは、ロスリックの血統=火継ぎの呪いから逃れる為に火継ぎに囚われない世界の住人、古竜になりたかった。「竜の御子の力」はそれを叶えるツール、完全無欠の不死性。

ですが、結末は我々がよく知っています。
オセロットの不死性を取り込んだはずだったのに、主人公にあえなく倒されてしまった。末路までシースをなぞったわけです。これって、叩きつけが間違っていたのか、もしくはそもそも「オセロット研究」そのものが失敗だったのか。見解は後述します。


5.Ignorant Slavesとは誰か

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日本語:
ああ、愚者どもめ。ようやく気付いたのだろう?
愛しいオセロット、竜の御子の力に

英訳:
ああ、無知の奴隷どもめ。ようやく気付いたのだろう?
愛しいオセロット、竜の御子の力に
"Ahh, you ignorant slaves. Finally taken notice, have you?
Of the power of my beloved Ocelotte, child of dragons"

私がずっと疑問に思っていたことが一つ解決しそうです。

オスロエスは主人公の事を"Ignorant Slave"と呼び棄てます。

日本語の「愚者」は意訳としてイコールなのですが、英語ではそれ以上に「無知」「奴隷」という具体的なニュアンスが付加されている。
一体この言葉のチョイスは何なのだろうと。

オセロットの力は火継ぎの因果を超え、ロスリック王家の呪いから解放しうる。その事に気づかず、神の意のままに火にしがみつこうとする人間全体の事を「無知の奴隷ども」と呼んだのではないでしょうか。

何も知ろうとせず「神の奴隷」に自ら成り下がる愚かなお前ら、ちょっと待てよ、と。

特にロスリック三柱「賢者・騎士・祭儀長」はいずれも建国の由来に従い、国の火継ぎシステムが円滑に回るよう取り計らう役目がありました(エンマの台詞がわかりやすい)。

※ しまった。「最初の賢者」の一派は密かな懐疑者。ここでは除きます。

オスロエスは晩年、多くの刺客を差し向けられましたが、おそらく差し向けたのは三柱でしょう。

■主人公が倒された時のセリフ
日本語:愚者めが、思い知るが良い…
英訳:無知の奴隷どもめが、なんと忘れやすい事か…
(Ignorant Slaves, how quickly you forget

Ignorant Slave"s"——。
妖王庭に侵入してきたのは主人公一人のはずなのに、オスロエスはずいぶんと全体的というか包括的に投げかけますよね。

彼は過去に三柱に対して、竜の力を使った血の営み=火継ぎの因果から脱する方法を提案したのではないでしょうか。
だが、拒絶されるだけならまだしも思想が危険視され、刺客まで送られるようになった。

■アン・ディールの台詞
人は安寧の中で、生かされている
そして偽りの檻を信じ、愛おしむ
例え全てが嘘であろうと

偽りの檻を信じ、光の神の嘘を愛おしむ者ども(三柱とその刺客たち)に対しての"Ignorant Slaves"。

「因果を超えし我が子オセロットの力、ここに在り」

その叫びこそ、ロスリック王家のおぞましい血の営みから逃れる唯一の手立て、「大いなる目的(a greater purpose)」の成就であったのだと。


※ この章においては、シードさんの考察を参考しております。興味深いのでぜひ


6.オセロットの散逸(Dissipation)

これまでを見るにオセロットは「本物の不死者」だった
それなのに、待ちに待ったその御姿は父オスロエスにすら見えなかった。

愛しいオセロット...
どこだい? どこにいったんだい?

「姿が見えないのに赤子の声は聞こえる」事に着目します。
ここでヒントとなるのは、古の魔術「見えない体」

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消失回避のため薄らと見えているが

えっ、加減によっては消失しちゃうの?!

オセロットは――この魔術の向こう側——視覚的に「消失」したのではないでしょうか?

「見えない体」そのものの原理についてはアマ公さんの考察が詳しいので、ご本人に許可をいただいて掲載させていただきます。

※ プレイヤーと主人公キャラとの関係性において「視える」という事は一種の誓約だと定義する考え方が面白いです。「我々の見えてるダークソウルの世界から主人公が消える。それが(キャラそのものの)消失なんじゃないでしょうか?」…なるほど!


ところで。「消失」というワード…。
英語テキストでは"Dissipation(散逸)"と訳されています。"Invisibility(不可視化)"でも"Transparency(透明化)"でもなく、「散逸」なんです。
これは熱力学の用語で、摩擦などの運動エネルギーが熱エネルギーに変化する過程を指します。不案内なりにざっくり言ってしまうと、「手を擦ったら熱くなるよね」って現象を説明づけるものです。
やがて、手に帯びた熱エネルギーは空気中に雲散霧消します。

これは不可逆的な現象であり、たとえば熱エネルギーが運動エネルギーに遡って戻ったりはしません。

つまり「散逸」に晒されたオセロットも一度消失したが為に元には戻らない。「見えない体」の術者は、そんな恐ろしい事態を「回避」する為に薄っすら見えるよう調整する。視覚世界に繋ぎ止められるように。

そして、この不可逆性について。取り返しがつかないというルール。
…何か思い出しませんか…?

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■結晶直剣/結晶の盾
結晶の力により攻撃力は高いが
壊れやすく、また修理もできないため
長く使い続けることはできない

無印における結晶派生は、「鍛冶の力でも魔術の力でも修理できない」という特徴があります。実は、オセロットが消失回避を免れなかった理屈は、ここに繋がってくるのではないかと睨んでいます。

例によって昔は「結晶武器って修理できないほど脆いのかな」「ギザギザが複雑すぎて難しいんじゃ」とか思ってましたが、これはおそらく違います。何故なら、ダクソ世界にはウーラシールの時間を戻す魔術「修復」や、その魔力を粉状にした「修理の光粉」があるからです。いくら構造が複雑だとしても、これをかければ元に戻るはずなのです。

ですが実際は、時間を戻す魔力すら受け付けない。結晶派生は時間という次元の方向性にロックをかけている状態である。

そんな特性を持つ結晶のウロコを宿してしまったが為に、オセロットは一度消失してから元には戻れなかった。結果、父オスロエスは愛しい竜の御子に見える事ができなかった。

ちなみに。
さっきから自然と繋げて言ってますが「ウーラシールとオセロットは何か関係があるの?」という感じですね。もちろん「見えない体」が原理のヒントを教えてくれているだけなので、繋がりそのものは見出せていません。

ですが、同じ「見えない体」になる事ができるこの方と繋がりがあると思っています。

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”ワンチャン月光に照らせばオセロットは視えたんじゃないか、”

いずれにせよ、、、その身をすり潰されてもなお死なず、だが見えもせず。ただただ泣き声だけがこだまする…。シースの理論は証明できたが、竜の御子の力を実用できる状態ではありませんでした。

主人公との戦いの途中でそれを理解してしまったオスロエスは、人間性を砕くかごとく愛する我が子を叩きつけ、己が力に組み込もうとした。だが、狙ったように不死性に見えることなく主人公に倒されてしまった。

オセロットは研究成果として本当に成功だったと言えるのか。父親は信じて疑っていないようです。

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出ておいで 何も怖いことはないんだよ
だってお前は竜の御子 そう生まれついたのだから

そんな皮肉の投げかけも込みで、哀れなオスロエスの物語なのかもしれません。


7.まとめ

・オセロットは「結晶のウロコ」を持つ事でシースを超えたし、ベジータも超えた。

・結晶は、ソウル/物体を媒介する装置。故にシースの結晶攻撃の呪死=結晶化とは、人間性を身体から引き剥がす効果を指していた。

・オスロエスは、オセロットを砕き「竜の御子の力」を取り込もうとした。それは人間性を砕く行為になぞらえる。

・「竜の御子の力」とは完全無欠の不死性

・"Ignorant Slaves"という台詞は、ロスリック三柱との敵対情勢、さらに王家の血の呪い=火継ぎの因果への絶望から発せられたものだった。

・オセロットが見えない理由は、「見えない体」にいう消失(英語では散逸)にあった。それは結晶派生と同様に「元に戻らない」、時間的に不可逆的な現象。


終わりに。今回文量がかさんでしまった為に、
■「妖王庭」と「古竜の頂」の建築は同じ様式。意匠やシンボルとかも共通している。
■この一連には、もしかしたら「侯爵の娘、シラ」と「緑衣の巡礼シャナロット」が関わっているかも。(シードさん考察参考)
この2点を泣く泣くカットしました。いつかおまけ記事を書くかもです。気が向いたらですが…。


【参考参照】
白竜シース - https://dic.pixiv.net/a/%E7%99%BD%E7%AB%9C%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%82%B9

Moonlight - https://dic.nicovideo.jp/a/moonlight

ソウルの種:竜の御子 - https://souls-seed.blogspot.com/2017/05/blog-post.html

【考察】ダークソウル全体を貫く根本原理について - https://ch.nicovideo.jp/sein_geist/blomaga/ar1819060

ACID BAKERY | 天使にふれたよ! #1 月光!- http://acid-bakery.com/text/archive/love_souls/darksouls12-1.html

オスロエス戦Youtube動画 - https://www.youtube.com/watch?v=CRquR8roXoI

散逸 - https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%A3%E9%80%B8

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