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NTR絶対許さないアサシンvs寝取らせ提督

暗殺者は見ていた。
モニタに映る、部屋の中でまぐわう二人の男女の姿を。
女が一際大きな嬌声を上げてから、その場に倒れ込む。体躯の良い男はその姿を眺め、満足そうに笑っている。
「これで……お前は俺の女だ。解ったな? オイ、返事しろよ……」
「はぁ……っ……はい……あなたの……女、です……っ♡」
女は息も絶え絶えになりながら、そう応えた。声色に一抹の幸福を滲ませながら。

ギリ、と暗殺者は歯を噛み締める。
リアルタイムで、一部始終を見ていた。そして己が仕事のために、モニタの前を離れた。

仕込みは長期、仕事は一瞬。
小型カメラを仕掛け、標的の生活を把握し、一人になった瞬間を見計らい、手にかける。
もっと言えば、依頼者の人間関係もできる限り調べておくのが理想だ。

中層マンション。ヤリ部屋となっている角部屋の扉を、強く叩く。一回、二回。同時に走り出す。
勢いのままに塀を飛び越え、壁の角を掴んだ左手を軸に、空中で身体を回転させる。隣のマンションの外壁と、上下に走る水道のパイプを伝って、角部屋のベランダへと着地した。
鉄板仕込みのブーツで、カーテンの締め切られたベランダのガラスを蹴り抜く。
「なん……ッ!?」
想定通り、男は一人で玄関の方へ向かう途中で、両の手は空のままこちらを振り返ろうとしている。
部屋の中へと踏み入り、混乱の渦中にいる男へと近づいて、無防備な股間を蹴り上げた。
「おご……ッ!!!!」
前屈みになった男の首に腕を回し、締め上げる。
「悔やめ、後悔しろ。自らの所業の総てを」
そう言って暗殺者は、一際強く力を込め──男の身体から完全に力が失われてからも、腕を離さなかった。

不意に、暗殺者の手首に明かりが灯る。それを契機に暗殺者は腕を離し、男の身体が音を立てて床へと転がる。
スマートウォッチに届いた通知、その英数字の羅列は、緊急の連絡であることを告げていた。

彼はNTRを絶対に許さない暗殺者アサシンだった。だが──


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