「タッチ決済(EMVコンタクトレス)」とは何か、そしてなぜ普及が遅れているのか
令和元年11月14日にGoogle Payで「Visaのタッチ決済」が利用できるようになったことで注目が集まっている「タッチ決済」ですが、そもそもこれはどんなものなのでしょうか?
そのことを説明するためにはまずEMVについて触れなければなりません。
タッチ決済というのは「タッチ決済」という独立したものがあるのではなく、上記のEMVの仕様の一つであるといえます。EMVとして接触決済と非接触決済があるというわけです。
EMVでは非接触決済について「EMV contactless」と呼んでいますが、日本ではそれを「タッチ決済」と呼んでいます。ただこれは本家(?)のEMVが設定したものではなく、日本のカード会社などが使っている独自のものです。
ただし、タッチ決済という言葉は「EMV contactless」を表すものとしてはあまり適切な表現ではありません。タッチ決済という言葉、それだけを見て判断すれば「非接触決済」のことと理解されるでしょう。それだとEMV contactless以外のFeliCaなども含むと思われてしまいます。しかしそれだと不正確です。だからといってほかの適切な言葉もないためなし崩し的に「クレジットカードに付与された機能としての非接触決済」を表すために使われてきているという経緯があります。
一方で「Visaのタッチ決済」はVISAが決めた正式な呼称です。それ以外のものとして、JCB Contactless、American Express Contactless、Mastercard Contactlessなどがあります。ですが中身は「EMV contactless」ですので決済システム側に制限がなければみな同じように使えます。
さて、Androidスマートフォンにはこれまでも「FeliCaの機能がないものの『EMV contactless』による決済は行えるNFC端末」が存在し販売されてきました。しかし日本のクレジットカード会社はそのスマートフォンにインストールされているGoogle Payに非接触決済用としてカードを登録することを許してきませんでした。それにより事実上NFCによる決済はできない状態が続いていましたが11月14日に一部のVISAデビットカードの使用を解禁し、ようやくNFC端末でのタッチ決済が可能になったのです。
ではどこでタッチ決済が利用できるのでしょうか?
原則的な話をすれば、上記のシンボルマークがついている読み取り端末があるお店ではタッチ決済が使えるはずです。
わかりづらいのですが読み取り端末についている液晶画面にこのマークが決済のときに表示されるだけというものもあります。ここで「はずです」といったのには理由があります。
payWave/PayPassなどのコンタクトレス決済サービスは、コンタクトレスICチップ付きのプラスチックカードや、スマートフォンに実装されたNFC機能を使いますが、その仕様は接触型ICチップの機能やセキュリティ機能を基本とします。そのためpayWave/PayPassはEMV仕様に準拠しています。しかし、ビザやマスターカードなどの国際決済ブランドの定義によれば、EMVはあくまで接触型が基本で、コンタクトレスは市場が求める場合に選択しうるオプション機能なのです。そのために、せっかくのIC(EMV)化の発表ですが、そのままでは「接触型だけ」ということになってしまいます。
EMV仕様の決済端末があったとしてもNFCによる非接触決済はオプションであって必須ではないわけです。
日本の場合、Apple Payの実装がFeliCaをベースとしたインフラに則っていたため、諸外国のようにNFC Payが普及する機会を逃してしまっている。
システムとしても、非接触決済はタッチ決済のそれではなくFeliCaであるのでいわば「ねじれ」のような状況になってしまい導入が遅れているのです。
とすると最大公約数的な意味でいえば、VISAがいう「VISAのタッチ決済」が使える場所に示しているサインを見れば大丈夫…… なはずです。きっと、たぶん。
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