#思い出の夜

「#書いてつながろう」
外出自粛でなかなか外に出られず、たくさんの暗い情報で頭がいっぱいいっぱい。
こんな状況だけど、みんなで「書く」ことでつながったり、楽しい習慣になったらいいな。

そんな企画に賛同したメンバーで、毎週テーマに沿って投稿しています。
参加したい方がいましたらコメント欄にてご連絡ください。
今週のテーマは「#思い出の夜」です。


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彼女は私との仲を、こう呼んでいる。
「腐れ縁。」
そりゃあ確かに、小学校6年間同じクラスで中学校も1年飛んで2~3年一緒。それからも年に1~2回は会って話すけれど、べったり仲良しという訳でもなく、つかず離れず。お互いに札幌を離れた後も、帰省するたびに会ったり会わなかったり。それでもずっと続いている仲。


あの夜、江戸川区は小岩。社会人4年目の頃、私たちはお互い東京で働いていて、私が住んでいた京成小岩に集合した。1次会は、居心地の良い焼き鳥居酒屋。彼女はいつも、こんな風に始める。
「おねえさん、元気?最近どう?」
そうねえ。と言って、お互いの近況報告が始まる。仕事の話、男の話、家族の話、昔話と噂話。そしてお互いの長所や短所をあげつらって軽口を叩き合う。
お腹が満たされてほろ酔いの気持ちいいところで、彼女は切り出す。
「おねえさん、今日まだ大丈夫?実は行きたいお店があって。」
彼女に連れられ、二人歩いて小岩駅近くのスペイン料理店に向かう。彼女はスペインを、スペイン料理を、愛している。大学でイスパニア語を学び、卒業後はスペインバルで働いていた。彼女はいつもスペイン料理店へ私を誘う。

ラストオーダーに滑り込んでスペイン料理とワインを楽しんだ後、小岩駅の改札で彼女を見送った。私は一人、京成小岩までの下町情緒あふれる道を帰ったっけ。あの頃は、札幌で育った私たちが東京で飲んでいること自体が面白かった。それも都心のオフィスビルの谷間じゃなくて、ちょっと雰囲気のある街で会ったりするのが。


その後彼女はスペインに移り住み、今もスペインで外出自粛をしている。今度帰って来たらまた、たくさん聞かせてくれるだろう。私の好きな、彼女のみやげ話を。


これからもずっと、それぞれの人生を語り合おう。そしてゆっくりと、私たちの縁は熟成されていくのだよ。二人の好きな、ワインのように。
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来週のテーマは「#ちょっとおめでたい話」

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