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好みの形は様々だけど


2018年夏、三菱一号館美術館でショーメのハイジュエリーをたくさん見る機会に恵まれた。ショーメは約260年の歴史があるブランド。260年前というとナポレオン皇帝時代まで遡る。

ショーメ(CHAUMET)は、1780年マリ=エティエンヌ・ニトが、パリのヴァンドーム広場にいち早く店を構えたハイジュエリーブランド。ナポレオンの御用達ジュエラーとしても有名。(中略)皇室御用達のジュエラーの噂はたちまちヨーロッパ全土に広まり、名声を手にする。伝統のスタイルを継承しながらも、パリの香り漂う現代的なセンスを採り入れ、常に創造的で最先端のデザインを追求。<https://www.vogue.co.jp/tag/brand/chaumet>


ショーメの自然主義的な優美な表現方法は他のジュエラーとは異なる。
植物の形を表現しているだけではない。野生動植物の美しさ、稲がもたらす豊かさ、人々の祈りを自然のモチーフに託して表現している。
展覧会で特に気に入った3点を紹介したい。

①エメラルドグリーンの花のティアラ

画像元: https://www.fashion-press.net/news/38525

この展示会で、最も力が入っていたのはティアラであった。特にこのエメラルドが散りばめられたロイヒテンベルクのティアラには驚いた。左右の下部を見て欲しいが、なんと固定されていない。装着者の動きに応じて、ジュエリーが揺れるようになっている。まるで風になびく花のよう!花が揺れて涙を流しているみたい…尊い…

②タコのネックレス

画像元: https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/17214

植物だけではなかった。1970年に作られたタコのネックレス。大胆な海藻、大きく踊りながらも優美なタコ、心臓のような赤い宝石。これはブルボンヌ王女のもので、婚約者にもらった愛の宝石シリーズ。(僕は君からもう離れられない、という意味なのか?茶目っ気ありすぎて分からない)思わず、一緒に見ていた相手にこれを貰って嬉しいかな?とやや苦笑しながら聞いてしまった。

③オルタンシア

植物の中でアジサイが一番好きなので、オルタンシアのブローチを見た時に、「こんなかわいいブローチ存在したのね…」と唸った。
オルタンシアは皇妃ジョゼフィーヌの娘のために作成されたもの。300カラットのダイヤモンドが使用されている。ダイヤモンドの輝きだけでなく、花弁の動きや葉のしなりまでとても美しい。

展示品は装飾品でありアートであり歴史であった。美しいものを愛でたいという気持ちが満たされた。自分はこういうゴージャスな宝石も好きなんだな〜意外!とフワフワした気持ちで帰宅した。

わたしの"好み"は形は様々だけれども、どこか繋がっているような気がする。そう思ったのは、展覧会を見終わって数日後、たまたま本屋さんで「日日是好日」というエッセイを買い読んだ時のことだ。

その中で、"花はまるでそこで咲いているかのように、自然と調和しているかのように生けるものであり、そこが腕の見せ所"と記されていた。

わたし自身、茶道をしていた節、「お茶を点てたあと、お茶碗に泡の三日月が浮かぶように、花で季節を表現し、掛け軸で温度を、袱紗捌きで場に空気を」と教えて頂いたことがある。
お茶というのは、茶碗の美しさや花の生け方のスキルも重要であるが本質ではない。空間や季節との調和を表現することに意味がある。

そういう意味で、わたしが感じる展示品の美と、茶道の美はとても似ている。ダイヤ一粒一粒の価値だけではなく、自然と調和し表現すること、その姿勢そのものが美しい。
意外!ではなくて自分なりに筋の通った好みなのかもしれない。こんなところで筋を通さなくても…とは思うのだけど。
#ジュエリー
#chomet
#三菱一号館美術館

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