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夜の空

冬の夜道を歩きながら、空を見上げる。星がちろちろと目に入る。今日は明け方に月蝕だったから、月はまあるい。ひとりで夜の空を見上げて、そこに星があることに安心する。いつも私を見守り、応援してくれているのを感じるからだ。そして、同時に、今はもう消えて無くなっているかもしれない星のことを想って涙ぐむ。もう帰れないかもしれない、とわけもなく感じるからだ。私はどこから来たのか忘れてしまった。でも、みんなが空にいて私を見守ってくれているのは確かだった。だって夜の空を見上げれば、私はひとりぼっちじゃないんだって思えたから。月にこんなに親しみが湧いてしまうのは、きっと名前に月がついてるからだろう。星が友達のように思えるのもきっとそのせいだし、夜闇が怖くないのもそのせいだろう。

だけど今日は、夜の空を眺めて星を見たり、月を見たりしていたら涙がこぼれてきた。わけなんかわからない。だから今日は、どこにも出かけたくないし誰にも会いたくない。何に触れてもきっと泣いてしまうから。

私は、この星に来て、ずっと自分の居場所を探していたのだと気付いた。なければつくるの方針で、いろいろしてきたこともあった。そのために人間に気に入られようとしたり、自分の持ち物をなんでも与えてしまったりしていたこともあった。そのせいで、自分に必要な時間も大事なものも手からこぼれ落ちていってしまっていた。気づいたら魂がげっそりしていた。だからもう何もかもをやめようと思った。無償で、何かの役に立とうとしたり、何かを誰かやどこかに与えようとしたりするのを全部やめようと思った。だってそれは、本心の奥底からそうしたいからとかそうすることが自分の喜びだからじゃなくて、自分がこの星に生まれてきたことが良かったことなのかどうか確信が持てなかったからだからだ。周りにいる人間や場に、必要とされたかったのだ。だけど人間は、アンパンマンをやってはいけないのだ。ジャムおじさんはいないから。新しい顔をもらうには一回死んでまたこの星にやってこないと無理だ。今のこの世界では。だから、する・与えることが自分の本当の喜びから始められるようになるまで、私は無償で何かをする・与えることをやめることにした。やめだやめだ。超がんばってやめないとつい誰かやどこかに自分の意識を置いたり時間を割いたりして、自分が留守になってしまう。私の居場所は、私のこの身体しかないのに、留守にしちゃったら自分の力が発揮できない。自分の身体を神殿として、そこに住まう。私は移動型の神殿である。まずはそのことを自覚し、自分が自分をそのように扱うことから始め、私をそのように扱う者だけに近づくことを許そう。ひかえいひかえい。私は神殿であるぞ。内なる光があふれてきて、外に漏れるくらいになったら、照らすこともあろう。それまでは、神殿内において居留守を使って引き籠もろうではないか。わっはっはー。


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