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アニメ「アズールレーン」の空母はなぜ空を飛べるのか。

10月も下旬に差し掛かり、秋スタートの深夜アニメも概ね把握できてきた。大豊作だった今夏に比べると再放送ものが目立つなどの弱さはあるが、それでも粒ぞろいな布陣といって良さそうだ。そんな中で筆者がまず注目したのは「アズールレーン」だ。

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ちょうど2年前から運用が始まった艦隊擬人化ゲームが原案で、先行していた「艦隊これくしょん〜艦これ」と何かと比較されることでも知名度が高いタイトルだ。ゲームは艦これのように第二次大戦時の軍艦が美少女キャラになって敵と戦うという内容だが、シューティングアクションがあったり、日本だけでなく英米独など海外艦が多く登場しているなど、巧みな差別化が図られている。開発元は中国のメーカーだが、日本のサブカル文化へのリスペクトはしっかり払われており、安定した人気を獲得している。


とはいえ、キャラの成り立ちは艦これとほぼ同じなわけで、アニメ化となると否応なく艦これと比較される運命からは逃れられないのもまた事実。アニメ版「艦これ」は劇場版まで公開され、現在TV版2期が余映される人気シリーズではあるが、変な重さを引きずってしまったこともあってか、必ずしも評判がいいとは言い切れなかった(2期ではぜひ挽回してほしい)。

それを受けてのアニメ「アズレン」。正直、この微妙な空気をどう突破するのかがずっと気がかりだった。

そして蓋を開けて見た第1話は、見事に第1関門を突破できたといって良い。

好意的に捉えるにはまず、この作品がアニメであることを強く認識する必要がある。アニメとはつまり、現実とつじつまを合わせなければならない理由は一つもないということだ。簡単に言うと“何でもあり”なのだが、そうは言ってもなんでもいいわけでもない。このへんのバランスがすべてのアニメにおける肝なわけだが、この作品に絞って言えば、「全長数百メートルはある軍艦が等身大の女の子になるなんておかしい」という理屈は一旦ゴミ箱に捨ててほしいのだ。軍艦の艤装を体に装着した美少女たちがある目的のためにバトルする、その世界を楽しむことが重要で、それ以外のことを考えるべきではないのである。

少し堅苦しい話になったかもだが、要は見栄えだ。本作では、例えば、エンタープライズという美少女が登場する。米主力空母の名だ。彼女の腕には航空甲板が装着され、艦橋部は弓になていて、これを引き放つと矢が艦載機となって相手の美少女(主に日本海軍の赤城とか加賀とかだ)に向かって飛んでいく。基本的に彼女は海の上を水上スキーのように滑走するが、状況によっては空だって飛ぶ。解き放った艦載機にまたがることさえ辞さない。つまりこのアニメでは空母が飛ぶのである。

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こう字だけで書くと滑稽この上ないが、映像で見るとこれが軽やかでカッコよく、全く自然なアクションになっているのだ。つまりこれがアニメなのだ。圧倒的な動きを見せつけることこそ、アニメにしかできない技だということを、アニメ「アズレン」は見事に示してくれたのである。細かい設定とか理屈付づけなどはあとで存分にやればいいのだ。

この割り切り方によって、アズレンのキャラ(大人の事情で艦娘とは呼ばずKANSENと呼ぶらしいが)はアニメの中で自由を与えられた。「艦船なのに?」などとつまらない疑問を挟まれることなく、女の子同士のキャッキャウフフもスイーツ食べ放題も水着で海水浴も温泉もやりたい放題になったのだ。そして、戦いに臨む彼女たちの緊張感もより深く描けるようになった。第3話でのエンタープライズとメイド姿の英軽巡ベルファストとの複雑な関係はそれが最も生かされていた一例だ。

毎回、無数に登場するKANSENの名前をフォローするのが慌ただしい「アズレン」だが、それもこれまでゲームを楽しんできたファンにとっては嬉しい。この先、重桜(日本勢)や鉄血(ドイツ勢)のからもじゃんじゃん出てくるなど楽しみがたくさん待っている。そこにどんなストーリーが絡んでくるのか、最後まで見守りたい。

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※画像はいずれもアニメ「アズールレーン」公式サイトから

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