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イマサラなはずのアイドルアニメ「Re:ステージ! ドリームデイズ♪」がブレイクした理由

2019年の夏アニメもそろそろ佳境に差し掛かりつつあるが、ここに来て1本、気になって仕方がない作品があるので語っておきたい。そのタイトルは「Re:ステージ! ドリームデイズ♪」だ。

中学生の女の子たちがアイドルグループを結成し、全国大会出場に向け奮戦するという、きわめて王道的なアイドルアニメだ。簡単に言えば「ラブライブ!」の焼き直しといって差し支えないかもしれない。

劇場版も作られ紅白歌合戦出場まで成し遂げた「ラブライブ!」が最初にアニメ化されたのは2014年だ。もう5年も前に完成度の高い作品が作られているこのジャンルにおいて、今更似たような作品を持ってくるのは、悪く言えば無謀、よく言えば度胸があるといった言葉しか浮かばないのが道理。目のこえたアニメファンならボッコボコにけなされるか、目に求めてもらえない扱いになっても不思議ではない。

ところがこれが、全く正反対の高評価となっている。なぜか?

あのアイドルアニメとはここが違う

まず、「Re:ステージ」と「ラブライブ」の違いを見てみる。

メインキャラクターは「ラブライブ」が高校生なのに対して「Re:ステージ」は中学生。キャラクターデザインも「Re:ステージ」のほうが幼い印象が強い。主人公の式宮舞菜などは、中学生というよりも、小学生にさえ見えなくもない。

主人公たちが結成したアイドルグループ「KiRaRe(キラリ)」のメンバーは中1が3人、中2が1人、中3が2人の計6人。「ラブライブ!」のμ'sは1年、2年、3年がそれぞれ3人の計9人。「ラブライブ!サンシャイン!!」のAqoursも構成はμ'sと同じだ。前者は後輩と先輩という単語が普通に出てくるのに対し、「ラブライブ!」ではある時点から「先輩禁止」を敷いていたのも興味深い違いだ。

メインキャラのアイドルグループに対し、直接関わってくるライバルグループが複数、はっきり存在しているのが「Re:ステージ」の特色と言える。「ラブライブ!」ではμ'sのライバルにARISEがいたが、出番はそれほど多いとは言えなかった。しかも、「Re:ステージ」のライバルグループ「Stellamaris(ステラマリス)」には主人公・式宮舞菜の姉・式宮碧音がいる。彼女は本作の世界におけるカリスマ的存在で、その関係などがもとで舞菜は姐と袂を分かつことになった設定になっている。ここはどちらかというと「ガールズアンドパンツァー」の西住みほと西住まほの関係に近い。あるいは、「咲」の宮永咲と宮永照の関係とも重なるが、舞菜と碧音との間にはそれほど険悪なムードはない。

そしてもう一つは、「KiRaRe」のメンバー6人には、それぞれ一度アイドルをあきらめたという前歴がある。「Re:」とついているのはそのためだ。

こうしたメインキャラクターたちのバックグラウンド、メンバー同士の関係性の深さ、ちょっとした複雑さが、「Re:ステージ」の他のアイドルアニメとの大きな違いではないかと思う。細かなパーツを様々な過去の近いジャンルのアニメから拾いつつ、あまりギスギスした雰囲気を作らないようギャグ要素を多めに盛り込むなどの配慮が働いたのが、これまで多数のアイドルアニメを見てきた濃いファン層からの好感につながっていると言っていいのだろう。また、必要以上に奇をてらわない脚本の手堅さも本作の質の向上につながっていると言えそうだ。

あえて手書きで個性を放つ

もう一つ特記すべきは、ライブシーンだ。

今どきのアニメには珍しく、激しいパフォーマンスが売りの動きを一通り手書き作画で対応しているのには驚かされる。予算が限られているのかあえて狙ったのかはわからないが、あまりに見慣れすぎてしまっているCGライブと比べるとかえって新鮮に思えてしまう。それが本作の味として働いているのは間違いないだろう。

まだ作品は1ヶ月分残しており、この先どう締めくくるのかわからない。しかし、1クールだけで終わってしまってはいかにももったいない気がしてならない。第5話でやらかした「例のシーン」のようなスタッフの遊び心もまた見たい。


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