The Beautiful Game ~ 日生劇場
IRA紛争が激しい時代の北アイルランドを舞台にした青春ミュージカル。
オリジナルは『オペラ座の怪人』のロイド・ウェバーがスコアを書いた2000年に発表された作品だそうだ。
(All The Love I Have は世界的なオペラ歌手が録音してる!)
音楽は賞賛されたけれども脚本への評価は真っ二つだったらしい。宗教対立による紛争、は今でも生々しさを伴うからだろうか?
自分の生活を選ぶか、正義に身を投じるか、若者はみな悩む。
愛や友情が溢れる歌とはちがう、それぞれの意思を主張する楽曲がいくつもある。
故郷に見切りをつけ渡米する者、犠牲になる者、残される者、それぞれが心のうちを歌に乗せてまっすぐに届けてくる。
中でも、恋人のメアリーの木下晴香、と 友人トーマスの東啓介 の歌唱は説得力があり圧巻。
ふたりの間で主役を張る小瀧望、体格に恵まれ華のある容姿のみならず、アイドルのときとは違う歌唱で、まだ青さが残りたくさん迷いもする誠実な青年像をしっかり見せてくれました。
以下、あらすじネタバレ。
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IRA紛争とは…… ええと….. ケネス・ブラナーの映画『ベルファスト』が参考になると思う。アイルランドはカソリック教徒が多いのだが、イングランドがプロテスタントということもありプロテスタント勢が政治的実権を握り、カソリックとの対立が激化した。
問題のベースは 仕事がない、経済基盤が弱いことなんだろうけれど。それで主人公のジョンはプロサッカー選手になって身を立てようとしている。とにかく、現代日本に生きてると すんなり理解し辛い社会事情。
そんな町の青年サッカーチームが優勝し、素晴らしい時間を分かち合う。その瞬間が1枚の写真になって皆の手に配られる。彼らは女の子に出会い、恋をする。つまり、ごく普通の時間を過ごしてもいる。
けれども仲間がリンチにあって殺されちゃったりする。そこは普通じゃない。カソリック教徒ばかりのチームから、プロテスタントの子ははじき出される。怒りに身を任せたメンバーは過激な活動へと走る。
ジョンは政治にはピンとこない。
ひたすら練習し、プロサッカー選手を目指す。
そして彼女のメアリーと結婚するんだ。
(結婚初夜のくだりは こそばゆい。カソリックの教えに忠実に純潔を守ってきた2人に初夜は重たいのだ。客席どうします?笑います?笑うべき?)
そんな特別な夜に、過激派に走った友人が助けを求めて電話してくる。
逃亡を手伝ってくれ、と。
気のいいジョンは、重苦しい初夜を抜け出して助けに行っちゃうんだよね。
その行動が、後の、まさにプロサッカー選手になろう!というタイミングで、大きく足を引っ張る。
過激派を助けた廉で投獄されちゃうんだ。
獄中でジョンは洗脳される。だって投獄されているのはみんな、カソリックのIRAの活動家だから。テキをやっつけなきゃオレたちは殺されるってね。
出所の日、ジョンは ある(良くない)任務を帯びてメアリーの前に顔を見せ、家には戻らないと言う。
メアリーだって、自由と独立を重んじ、かつては熱心に抗議行動を行っていた、けれども暴力には絶対に反対なんだ。ジョンを取り戻したい……..
メアリーは 1969年の 町の優勝チームのあの写真をジョンに差し出す。
青春の日の温かい素晴らしい思い出は、人を正気に保たせるのかもしれないですね。かつて自分が助けた友人にオトシマエをつけたジョンは メアリーの元に戻るのです。
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資料がないので、細かいところはいろいろ違ってるかもしれない。
アイルランド人、アイリッシュ系というと NY州 NY市にも多く移住していて、正義感が強いことから警察消防の職に就いている人が多い、というイメージ。
わざわざアイリッシュ系と呼ばれるくらいだから、メインストリームではないんだよね。 2002年の日韓W杯で 幕張にベースを張ったアイルランドチームの応援に来ていた人々は、たぶん NYアイリッシュだったんだろうな。
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