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氷を砕く旅(破冰之旅)

2022年7月8日、安倍晋三元首相が奈良市で演説中に襲撃され亡くなられた事件は、中国でも非常に注目されています。

中国にいて感じるのは、今回の事件について主に微博(ウェイボー)などのSNSではネット民が辛辣なコメントを書き込んでいる一方で、微信(ウィーチャット)のコメントやミニ動画では、元首相の政治家としての功績や人柄を讃える意見を書く人がいて、受け止め方が極端に分かれているということです。

中国人の知り合いも「微博ユーザーは低俗な人も多い」と言いますが、事件前日の7月7日が日中戦争の発端となった盧溝橋事件の日でナショナリズムが高まる時期ということもあり、総理在任中に靖国神社を参拝したことや台湾に関する発言をしたことなどを批判するコメントが多く見られました。

その一方で、これは意外というべきか、ここ数年冷え込んでいる日中関係において、相手国のリーダーであった安倍元首相の政治手腕や人柄を讃えるコメントが非常に多いのも事実です。

第1次安倍内閣発足時の2006年に、首相就任後初の外国訪問に選んだのが中国であり、日米同盟を重視して訪米を続けてきた歴代首相の慣例を破る異例の外交として、小泉政権で冷え込んだ日中関係を改善するいわゆる《氷を砕く旅》を行ったことや、インバウンド推進、観光立国をアピールして中国人を含む外国人観光客の訪日旅行が加速したことなどが影響しているようです。

中国外務省は8日の午後に「我々は事件に驚愕している。安倍元首相は中日関係の改善と発展に貢献した」とのコメントを発表し、夕刻に死亡が確認された後、東京の在日中国大使館は「哀悼の意を表し、ご遺族の方々にお悔やみを申し上げる」との声明を発表しました。

そして翌日の9日、中国の習近平国家主席は岸田文雄首相宛てに弔電を送り、「(安倍元首相は)中日関係改善の努力を進め、有益な貢献をした」と評し、「新しい時代の要求に合わせた中日関係について重要な共通認識があった」とも振り返り、安倍元首相の死去を悼みました。

ここ数日の私の周りの反応だけを見ても、今回の事件が世界中に与えた衝撃の大きさと、歴史上安倍元首相の残された大きな足跡を感じます。

心からご冥福をお祈りいたします


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