オンライン配信 with Sound Factory

ミホです。はりきゅう三方堂で鍼灸院をやりながら、パートナーのニックと一緒にSound Factoryという制作プロダクションを運営しています。鍼灸のセミナー配信について、ありがたいことにたくさんの方に気にしていただいているので、実際にどんなことをしているか書こうと思います。これからセミナーを企画している鍼灸の学会、勉強会の担当者さん、またオンラインセミナーを受講して物足りなかった、と思ったことのある鍼灸師さんに読んでいただきたいです。

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配信とはそもそも何なの?

テレビ、ラジオは東京タワーやスカイツリーなどのテレビ塔を使って公共電波を流しおうちのアンテナで受信しています。これを「放送」と言いますが、電波じゃなくてインターネットを使って音や映像を届けることを「配信」と言います。スマホとイヤホンがあれば、zoomやspoon、イチナナなど、配信アプリを使って誰でもすぐに配信できます。思い立ったらすぐに世界に自分を発信することができて、本当に良い時代になったと思います。

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配信を自分でやる難しさ

誰でも簡単に配信ができるようになった反面、参加費をとるイベントやセミナーなどでは、よく見えなかった、聞き取れなかったなど参加者さんからの残念に思う声も上がってきました。とにかくカメラが難しい。針が映らない、手元が見えない、動きがよくわからない。自分たちで全部やるのは大変なわりに満足度が上がらずもどかしい思いを抱えていらっしゃる方も多いと思います。参加費をしっかりとって企画をする実技セミナー、公開イベントなど規模が大きくなってくればくるほどクオリティが気になってきます。

実技がない学会やセミナーでも、発表者さんがよく見えない、雑音で中断されたり、画面に何も写っていない時間があって放って置かれた気分になる、などの声を聞くこともあります。

そんな時はSound Factory出番です!普段はハリウッド映画、CM、ネトフリやアマゾンプライムなどのオリジナル作品制作現場、格闘技、スポーツ、コンサートやTEDトークなどの生放送、配信現場などの仕事をしています。そこでで培った映像、音響の経験と、ちょっとずつお金をかけて集めた機材を持ち運べるようにラックケースに詰めて、全国どこでも行けるようにしました!配信に困っていたら、クオリティをあげたいイベントのサポートをしたいです。

先日サポートさせていただいた埼玉県鍼灸師会の実技セミナー、見たよという参加者さんがTwitterでコメントを書いてくれました。

昨日はお疲れ様でした。参加させていただいておりましたが、実技もとても見やすくて心地よく受講できました!
さすがだと感心してました。ありがとうございました!
はじめまして。
アーカイブで見させていただきました。
線香の煙もくっきり見えて画像が綺麗でした。あと講師の先生がスライドで話してる時に、ワイプみたいな感じで映っていたので、会場で講習受けてるみたいで感激しました。

生配信用のプロ機材とは?

生中継のテレビ番組に使う機械類をセミナー会場に持ち込んでインターネットで生放送するよ、というイメージです。大きくわけて3種類あります。音響機材、カメラ機材と照明、そしてスイッチャーです。

機材はざっくり大きく分けて業務用と家庭用に分かれます。プロ機材はなんでもいちいち高いです。カメラ一台にレンズをつけると軽く100万円〜映画用とかだと1千万円超えますし、マイクやミキサーも高いです。揃えるのは大変なのですが、業務用の機材のいいところは、細やかに操作できること、音質・画質が綺麗なことの二点です。

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私たちは最小で3人のチームで動いています。

音響機材:マイクで音を拾い、ミキサーで音質と音量を調節します。実技講師は両手が塞がるので、ワイヤレスのピンマイク(ラベリアマイク)を付けます。司会、会場の質問などには手持ちのマイクを使います。マイクの音を音響ミキサーに落としたら、参加者さんが手元でちょこちょこと音量を操作しなくてもいいように、全体を通して聞きづらいところやうるさいところがないように調整しています。

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カメラ機材:カメラは最低2台使います。うちでもっているカメラとカメラマンさんの持ち込みカメラを使います。カメラを操作する人はコンスタントにカメラを動かしながら、その時その時で一番良い位置にカメラを動かし長らピントを合わせています。現場での経験が長いプロほどその時のベストなアングルを素早く決めてくれます。

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スイッチャー:スイッチャーが配信の要になります。スイッチャーという機械に音声と映像を入力し、全部を同時に見ながら最終的に配信する映像を作って送信するのがスイッチャー操作です。数台のカメラの画面を見て、カメラ位置がピシッと決まったものを選びながら画面を切り替えて配信します。2台のカメラの画面を両方使って入れ込みにしたり、パワポ画面と講師の先生を出したり、静止画像も使ったり、見せる画面を編集しながら配信して番組を進行させています。

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鍼灸セミナーのカメラワークで大事にしていること

鍼灸のセミナーで一番みんなが残念に思っていることは、とにかく手元がよく見えないということだと思います。ハンディカムや携帯のカメラ1台だけだとどうしてもブレたり、ボケたり、ピント合わせに時間がかかって、やっとピントが合った時には手技が終わっていたりすることもあります。そんな悩みに手が届くようにしっかり見せられるようにサポートできるのがプロのカメラマンさんです。

毎回講師の先生にどこを見せたいですか?とお聞きしているのですが、

ー全体のスピード感

ーツボの位置

ーはりの刺入の深さ

ー針が刺さっている角度

この辺りが見せたいポイントのことが多いです。

スピード感を見せるためにはちょっと高めの位置からベッド全体が写るようにして、術者の動きを俯瞰しながらどのあたりを施術しているのか見えるように撮ります。

ツボの位置を見せるには、ベッドの頭上ややるべく高い位置にカメラを設置して、ツボに印をつけてもらって、それが体のどの部分なのかが分かるように撮ります。

刺さっている深さは、皮膚面と同じくらいの目線で撮ります。

刺す角度:どこからみた角度なのかが分かるように撮ります。例えば、背中のつぼを背骨に向けて45度に刺入のような実技だったら頭か背中の正中線にカメラを持ってきて、背骨に向かって針が斜めに入っていくのが見えるように撮ります。

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音響で大事にしていること

映像に気を取られがちですが、配信全体の「心地よさ」を担っているのが音響です。音の悪さは映像の悪さよりもはっきり意識に登ります。音響の切ないところは、音の良いのはそこまで意識に上らないのに、説明が聞き取れなかったり、雑音が入ったりすると、ものすごく不快に感じます。なので音響は文句は言われても、褒められることがほとんどありません(笑)本当かどうかわかりませんが、音は内耳の蝸牛の有毛細胞が感じとるので、耳障りの悪い音は毛の流れを逆撫するので不快になる、などと言われています。

ピンマイクや手持ちのマイクで一人一人声の大きさが違うのを聞きながらミキサーで調整して、どの出演者さんの声も滑らかで聞き取りやすいようちょうどいい音量に調整します。特に複数の人が同時に話すシンポジウムなどでは誰かの声が大きくなりすぎたり小さくて聞き取れないことがないように調整しています。また雑音やノイズが入ったり、声がキンキン響かない工夫もしています。ピンマイクをつける位置にもコツがあります。実技の時は俯きながら話すことが多いので、下をむいたときに声が割れないような場所にマイクをつけます。

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タイガーウッズとニック

サウンドファクトリークルー紹介

ニック 技術監督です。イベントの内容に沿って機材リストと配線デザイン計画をします。会場のサイズによって必要なケーブルの長さも変わってくるし、当日会場に部品が一つ足りないだけで配信不可能になります。そのため事前の計画を綿密にしています。イベント当日は機材をつないで、会場設営、音響デスクセッティングと音量など調整、カメラとスイッチャー操作などあちこち走り回っています。

ミホ 事前の打ち合わせ、当日はディレクター・スイッチャー操作をしています。イベントそのものが滞りなく進むように企画の責任者さんと連絡をしています。

カメラマンはニュース、コンサート、試合、映画など色々ないろんな現場で一緒に仕事をして、信頼できる方にお願いしています。

プロを雇うと高いの?

鍼灸師が国家資格を持った美容と健康のプロなのと同じように、Sound Factoryのニックやお願いしているカメラマンも映像と音響のプロとしてやっている人たちです。セミナーの内容や予算によって使う機材が増えたり減ったりするので合計金額がちょっとずつ変わりますが、ひとりにつき美容鍼灸の1営業日の売り上げくらいをイメージしています。

鍼灸院と制作系の値段で一番違うところは、鍼灸院の単価が1施術毎の値段設定なのに対して、エンジニアの単価は1日毎なところです。セミナーそのものが数時間だとしても、移動、設営、片付けとデータのバックアップを含めると1日かかります。合計金額を聞いて高い!と言われますが、鍼灸院の予約がいっぱいになったときの一日の売り上げを考えると、そんなもんかな、と納得できると思います。

動画を売りたい

最近のセミナーでは、配信中に録画したものを期限つきで限定公開したり、DVDを販売したりする流れになっています。zoom配信などのソフトでは配信する時にデータを圧縮するため、画質、音質ともに落ちてしまうので、配信中に動画を別立てで記録しておくと、後で販売する時に同じ内容で配信より高品質な作品を届けられます。また販売用の動画制作を配信しながら記録すれば、製作費の予算を配信の参加費で賄うこともできます。カメラ、マイクは1回線ずつ録画もできるので、後から編集することも可能です。Sound Factoryは基本バイリンガルで2カ国語でやっているので、編集の時に字幕を翻訳してつけることもできますよ!

最後に

鍼灸のセミナー、どんどんオンライン配信になってきて、すごくいいことですよね。世界中のどこからでもみれて、参加しやすいし、鍼灸院の一室からでも生中継でセミナーを送れるようになりました。鍼灸のセミナーで一番人気があるのは、やっぱり実技セミナーだと思うんです。自分の技を人に見せるって結構勇気があることだと思うんですが、そこをあえて公開するからにはみんなが見て理解して、好きになってほしい、そして今日から使って欲しいって思っていると思います。普段の自分を手軽に携帯で発信、配信しつつ、セミナーやイベントなど参加費を取るところでは配信サポートを入れて見てください。



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