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ヤギナオ6_芥の新曲「怪談」についての記憶

「バスドラムを使わずにハイハットだけで曲を作れないものか」
そんな会話からこの曲はスタートした記憶がある。

この「怪談」という曲は数年前にはすでにある程度形はできていた。

芥のギター、大八木です。

今月、ついに芥のニューシングル、初のカセットシングル「怪談/窓辺にたって」が発売となりました。
昨日、この曲の完成にいたるまでを思い出していたら、
いろいろあったなぁと思い、
書いてみたいと思います。

もう4年は前になるだろうか、
当時ボーカルの大田さんは落語にハマっており、
ある時「真景累ヶ淵」というめちゃくちゃ長い怪談話に興味を示していた。
自分はちゃんと聞いていないのでよくわからないが、
旗本が金貸しを斬り殺したことにより両者の子孫が次々に不幸にみまわれていくという怖い話だそうだ。

その話を居酒屋で飲みながら人間の憎悪というか、怨念というか、そういったものについて曲を作りたい、今はそれを作るべきなのだ
と大田氏は話していた。

そんな話をしたかと思えば、

「バスドラムってどうしてもリズムを刻まなきゃいけないのかな?」
「ジャズとかってそんなにバスドラムでリズム刻んでなくても成立してるでしょ?
ハイハットのリズムだけで一曲通してやれないものかな?」

なんて話もしていた。

バスドラムはバンドのアンサンブルをする上では土台も土台。
そのリズムがないとなると、なんだか空中分解しそうだなぁ…とか思いながら俺は聞いていた。

この時すでに大田さんにはこの2つのイメージが結びついていたのか、
いつしか不可解なコード進行でこの「怪談」という曲をもってきていた。

当時はメンバーもみんな違っていて、
ドラムの人にはこんな説明をしていた。

「とにかくこの主人公は逃げているんですよ。
草むらをかき分けながら、何か恐ろしいものから逃げている。
それをバスドラを使わず、ハイハットだけで表現したいんですよ。」

結果、後半の方ではバスドラは使うことにはなったが、
曲中ほとんどバスドラ厶を使わない曲が完成した。
これは後付けになるかもだが、バスドラムが一定のリズムを刻まないことで、
妙な浮遊感が出ている気がする。
今となっては逆にバスドラムが刻まれると、
しっかりしすぎて、なんか違う気がする。

それから約4年が経ち、
メンバーも俺と大田さん以外全員入れ替わった。

でも大田さんは「この曲はシングルで出さねばならない」と少しずつアレンジを加えていった。

バスドラムがないぶん、スーシェフ(ユータ)のベースがピックで16分で、直線的でゴリゴリなリズムを刻み、

あこさんのエレピが自由奔放にあっちこっちとメロディを駆け回る。

俺はというと、
4年前から変わらず淡々とリフを刻んでいる。
繰り返し繰り返し、同じリフを刻む。

思えばこのギターリフも、
当時SMAPの解散報道があり、大田さんと飲みながら「SMAPのアレンジがかっこいい」という話になり、
なんの曲だったか、ピアノで始まる曲のリフがかっこいい、こんなのをやってみたい、パッパーラッパーラパッパーラッみたいなっ!
と大田さんが口ずさんだものをそのままギターで弾いて、未だそのままで弾いている。

もう恐らく誰も覚えていないであろう、
この曲の過去の記憶である。

芥をやっているとつくづく思う。
大田さんにはこの楽器はこう弾かなきゃみたいな、概念みたいなものがない。
リードギターがあればバッキング、ドラムが刻めばバスドラに合わせてベースが…
とかそういうのがない。
全て「イメージ」、それと「メロディ」なのだ。
音が外れていたとしても、イメージにあっていればそれでいいのだ。そしてそれこそが「表現」であり、
自分は毎回、つまらないことに捕われていたと気づく。
原点に戻る。


思えば長い道のりでしたが、
面白い曲ができたと思います。
季節はもう冬ですが、「怪談」です。
是非聴いてください。
https://youtu.be/qlE9rUb4gc8

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