追悼 スキルヴィング

第90回日本ダービーが終わり、もう少しで二週間が経過する。
正直、記録として残すか否か悩んだが、
一出資者として個人的に記録に残す事とした。
もちろん、最終的な内容としては悲しくて辛い部分が大半を占めるので、
心に余裕がある方だけ見てほしい。

また一出資者目線でリアルに記載している分、
競馬初心者の方は一部分からない文言も出てくると思うのでご理解いただきたい。また個人的なお願いではあるが、スキルヴィングの良さが伝わる写真を持っている人はフォロワーでも非フォロワーでも構わないので当アカウントに送っていただけたら嬉しい(写真をあまり持っていないので…)

■募集時、育成時での個人的印象


キタサンブラック2世代目の産駒。木村厩舎
母はダートで3勝したソニンク牝系ロスヴァイセ
募集時の測尺は、馬体重506㎏、体高162cm、胸囲182cm、管囲21.9cm
最初の印象はデカいの一言。数値の傾向としてもダート馬の尺に近い
ただ募集動画を見てみると、踏み込みの強度、飛節のブレの少なさが秀逸で運動神経の良さを感じる歩様であり、これは良さのあるキタサンブラック産駒だなと思ったのが出資の決め手。
個人的に砂でもいけると思って申込をしたのを覚えている。
当時はさく癖持ち且つ飛節OCD除去手術歴があり、
キャロットクラブ×木村哲也厩舎の相性も考慮され、
最終的には×なし最優先抽選で出資が決定。
また別クラブではあるが、同厩イクイノックス先輩の募集動画を柔とすれば、スキルヴィングが剛のタイプだったのは一言付け足しておこう。
ちなみにキャロットクラブでは2歳時の近況更新が月一回程あるが、
育成先でのコメントは背中に疲れが…、大型馬故の…、良化の余地…と全てにおいて出資者目線からすれば決して褒められる内容ではなかったと思う。その中でも暖かくなるにつれて緩さが少しずつ取れ、NF天栄へ移動となり、空港担当者から「楽しみな馬」とフレーズが出たのは印象的だった。
2歳6月末に木村厩舎へ入厩し、7月ゲート試験合格するも、調教師は「前進気勢が出てきてほしい」「乗り込みが必要」と判断、牧場へ再放牧された。(※ここの一連の流れは個人的に厩舎を推した内容、そのままデビューしたら新馬戦4着以下だと思う)その後、9月に再入厩し、月末の更新で調教師から「端的に言えば前向きではないですね」と吐かれ、追い切りを手伝ってもらった北村宏騎手にも「難しさを感じた」と言われた経緯があったが、調教終了後の息はそこまで乱れていないのでいいエンジンを持っている事を考慮し、ゆったり立ち回れる東京芝2000mでの新馬戦デビュー(鞍上ルメール)が決まった。後にも先にも「端的に言えば前向きではないですね」という火の玉ストレートを放り込まれたようなフレーズはこれが最後だったと思う。

■新馬戦、そして未勝利戦優勝


新馬戦は後のNZT勝ち馬エエヤン、リュラの仔ヒシタイカン、マルセリーナの仔シュタールヴィントもいてレベルは高かった。レースは出負けして後方も道中外目を少しずつ進出し、先行押し切りを図るも2着。大型馬故の初戦を考慮すればスキルヴィングは仕方なしの敗戦でヒシタイカンの鞍上を褒めるべき内容。またこの時のパドックでもエエヤンの出来や強度が素晴らしかったので、そのエエヤンに一回差し切られそうになるも、差し返した辺り、勝負根性があるのは確認できた事はすごく良かったと思う。
そして未勝利戦、新馬戦に比べると言葉は悪いが、メンバーレベルが手薄であった。
自分のツイートでもたまに呟くけど、2歳戦や3歳クラシックで活躍するには経験値の回収がとても大切だが、ルメール騎手はこの1戦で全部回収してきた辺り、ポテンシャルの高さを感じられたし、鞍上の期待も相当なものだと実感した。馬込みに入れても大丈夫か、内から捌く脚があるか、現段階でどのくらい脚が使えるか等、並みの馬だと2戦目でここまで回収できないし、そもそもそういう競馬をさせない、できないのが実情である。
そして勝ち時計やラップ、上りを考慮してもこの時期の2歳としてかなり優秀の部類。
秋の東京芝2000m勝ち時計2:00.3 上がり33.2を繰り出し、後方から差し切る辺り、重賞級の器を示した内容だった。

■ゆりかもめ賞優勝


2歳時は新馬、未勝利の2戦で終え、次走は2月のゆりかもめ賞(東京芝2400m)へ。
馬体が幼く、大型で緩さが目立つ馬体、体質もしっかりしていない中で冬の中山ホープフルSを使わなかった判断は正しいが、3歳クラシック戦線のトライアル含めここら辺は天栄サイドの使い分けの部分が大きかったと思う。
ゆりかもめ賞を観戦した際にまず驚いたことがパドックの引き手がTEAMイクイノックスに変更されていた。ここ2戦の引き手は厩舎でも若手の子が担当していた辺り、厩舎の序列が上がった事が明確(ちなみにあの若手の子は元気なのか個人的に少し気になっている)ゆりかもめ賞時の馬体の印象は未勝利戦よりも良くなっているけど、大きな変化はそこまで感じなかったが、返し馬にいった際の動きがだいぶ綺麗に走れるようになっていたので、成長している所に良さを感じた。レースは「端的に言えば前向きじゃない馬」らしく出負け、後方からの競馬で差し切り、2着のサヴォ―ナを3馬身ちぎり、優勝。冬の東京芝2400mを2:24.8は優秀。前日に行われた早春S(3勝クラス)が2:25.4を計時しているのと比較しても文句のない内容だった。
ただ、牧場サイドの本音や意向としてはここで先行または中団で競馬してブラストワンピースのように毎日杯~ダービーの青写真を描いていたような感じがした。
レース終了後は、疲れが出たことで次走は青葉賞へ。

■青葉賞制覇


この日は友人と競馬観戦をしていたが、パドックで出てきた姿を見て、「まず負けない」と思った。ゆりかもめ賞から青葉賞までの成長過程が本当に素晴らしかった。たぶんゆりかもめ賞と青葉賞を現地で見た人は間違いなく馬が良くなっている事を感じる出来だと思う。
踏み込みや歩様の強度、全体的に緩かったパーツの節々が締まっていたので、レースも安心して見る事ができた。4角辺りから隣で一緒に見ていた友人が「(スキルヴィング)うわー強いわ」と言ってる最中、自分は「ティムール、ティムール」と叫んでいる辺り、もうどちらが出資者か分からない。青葉賞の内容として外を回して安全に勝てたが、唯一の誤算と言えば、ハーツコンチェルトが強かったという事実。鞍上はもう少し楽に勝てると踏んでいたに違いない。もしかしたらファントムシーフ関係者の事も脳裏にあったのかもしれないが、最後にもう一脚使った事であそこまで歯切れの悪い勝利騎手インタビューになったと思う。天皇賞春ジャスティンパレスで勝った時と比べてもはや別人のインタビューだった。尚、当アカウントは先を見据えた仕上げで2:23.9を計時した青葉賞の内容を見てダービーでも勝負になると思ったのは言うまでもない。

■ダービー週までの過程


スキルヴィングorファントムシーフの鞍上問題も片付き、正式にルメール騎手騎乗が決まった。中長距離戦線において、このジョッキーほど安心して観戦できる騎手はいない。それぞれの出資者が殺伐していく雰囲気になるのも少し分かる。改めて福永騎手が今年のクラシック世代から調教師に転向したのは痛いと思った。
更にダービー週になるとルメールの自信があります記事が界隈で盛り上がる辺り、本番が近づいていくのを感じた。関テレの放送でも意識された辺り、5馬身ぐらい突き抜けてた話題である。ちなみにあの記事はシンプルに面白かったがギャンブル旦那をGETする方法はもっと面白かった。うちの妻もきっとあの記事を見たに違いない。少し言葉を借りるなら当アカウントが限りなく消極的中毒者寄りの中間的中毒者だと思った。夢中になれるものが競馬しかないのである。競馬を見させておけば悪さをしない(はず)。子供にアンパンマンを見せる親御さんの気持ちが少し分かった気がする。
さてスキルヴィングの話に戻そう。個人的に青葉賞段階である程度フレームは出来ていたので、あとは調整程度で負荷を上げられればと考えていたけど、調教映像を見る限り、この馬なりに結構負荷をかけていた印象がある。2週前、1週前の映像を見て動きがあまり良くみえないのはこの馬っぽさでもあるので判断に迷うが、ダービーが終われば休養へ入れる所もあり、負荷のかけ方が表裏一体で難しさも感じた。
そしてダービーの日が刻々と近づいてくる中で周囲の期待値が上がってくる。
自分の一口に興味がある家族や親戚、友達、競馬仲間、職場等
そもそも競馬を少しでもかじったことがある人に関しては有馬記念程ではないかもしれないが、ダービーの存在を知っている人はいる。その世代の競馬の祭典だからだ。

■5/28(日)ダービー発走に至るまで…


この日は別レースで口取りが当たっていたので、スーツにネクタイという服装で競馬場へ。
休日の電車に乗っていると実に異質な存在である事が分かる
(ちなみに府中方面へ向かうとその人数は少しずつ増えていくから面白い)
今年の天候は過ごしやすく、実に快適だったと思う。昨年のダービーが酷暑だったのに比べればスーツ民としては天国に近かった。
東京競馬場についたら各フォロワーさんとご挨拶をして、お酒を酌み交わし、各レースで一喜一憂しながら本番を待つ。第90回日本ダービーはクラブ馬が上位人気を占めたので、各出資者の方々と健闘を称えあう姿も印象的だった。
知り合いに確保いただいた席でパドックや返し馬をチェックする。
そもそも昔はパドック最前列で見ていたアカウントがターフビジョンでパドック診断している辺り、馬券勝負する気がさらさらない。出資馬が出るレースはどうしても感情が乗ってしまう為、ブレが発生するので期待値をできるだけ0にするように心掛けているとここでは記載しておく。

■ダービー発走


カールスモーキー石井さんの国歌斉唱(すごく良かった)が聞き終わり、会場のボルテージは少しずつ上がっていく。先週のオークスで川田騎手がゲート入りまでの「2秒待ってくれ」と話した効果で競馬ファンが忠実に守っている姿は本当に偉い。そもそもこの会場の大半は、関係者及び1000円以上払ってきた優良競馬ファンしかいない辺り、実にいい光景だった。自分も動画を撮影しながらダービーへ挑む。
各馬ゲートイン、ガッコン。
ドゥラエレーデが躓き、坂井騎手が落馬する。
真っ先に見たくない光景だった。20年生まれのサラブレッド7708頭の頂点を狙う18頭の内、1頭が馬券外に消えるわけである。
自分が撮影した動画には「後味が悪いなぁ」と何回も音声が入っていた。
出資馬スキルヴィングはゲートの出は遅いが、今まで教えてきた事もあり、中団のインで競馬。ハーツコンチェルトが残り1250m付近で先に仕掛けると少し待ってからルメール騎手が仕掛けた辺り、流石である。4角手前から進出を始めた段階で個人的に勝ったと思ったが…末脚は鳴りを潜めた。スキルヴィングの末脚の特徴は、持続力があり、最後に速い脚も使える点がストロングポイント。それが伸びてこない辺り、何も言葉が出なかった。
結果は17着。勝ち馬は同馬主のタスティエーラ。明と暗がくっきり分かれた気がした。

■ゴール入線後、まさかの…

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